R デザイナーズ四畳半
四畳半。それは狭いアパートの一室のことである。
畳が4枚半おける程度の広さのことであり、単身で生活する最小単位だといえよう。
かつての学生の下宿などではこの大きさの部屋が提供されていたことがあるらしい。
ただ、現代で生活するには狭いような気もする。
今回はその四畳半が出てきた話だ。
神器、想定外なほどに効きすぎた。
いや、設計通りの出力で、設計通りの性能を発揮しているが、問題はその効果を受けている人々の方だったのだ。
現在、基部の街に来ている人間はそのほとんどが学者と軍人だ。
商店の類も、各国が認可のもとに
民間にはまだ開放していないためである。
どこもかしこも国家機密だらけで、民間に開示出来ねえ。
で、効きすぎたのは学者の方……だけでなく、軍人の方もだ。
ここに来ているのは全員エリート中のエリートなのだ。
そりゃみんな頭がいい。
そんな連中に学習効率増加の割合バフを与えるとどうなるか。
元の能力が高いので、バフによる上昇量がすごいことになる。
特に頭脳労働で食ってる学者連中はやばい。
一日体調不良になると、一日仕事がダメになるレベルで最前線を走っている人間ばかりだったのを完全に失念していた。
もうスポンジが水を吸うように魔法の理論を吸収している。
その学習速度、私と同程度かわずかに劣る程度である。
魔法技術の学習が早いことはいいことなのだが。
効きすぎて神器バフバレる可能性ががががが……。
まあいいか。
どうせ直接神託制国家だ。
その影響下にある人間に恩寵とかあっても……いいだろ、多分。
誤魔化しは効く。
今日の分のガチャを開けてしまおう。
R・デザイナーズ四畳半
出現したのは……箱? 箱だった。
木材となにやら断熱材のような素材で組み立てられたその箱はどことなく超でかいユニットバスのような感じがする。
窓もつけられていて……これは部屋の内装部品が、なぜか組み立てられた状態で出現した物のようだ。
外観は不格好だが、それも致し方ない。
本来壁や天井にくっついているはずのパーツがガワになってしまっているんだからな。
まあ、それは置いておいて。
内装である。
ぶっちゃけ、紙に書いてある内容の時点であんまり期待していない。
適当抜かしやがって、という気持ちにもなる。
そう思いながら、据え付けられた扉を開ける。
うわあ、シャレオツ……。
箱の中身は、ずいぶんと生活感のない、やたら洗練されたデザインの部屋があった。
デザイナーズ四畳半の名前の通り、四畳半の空間に詰め込めるだけデザインを詰め込んだ部屋である。
畳が4枚半しか置けない部屋をおしゃれに仕上げているのは感嘆するが。
そのせいで……余計狭く感じるというか……。
圧迫感がある……。
おしゃれなせいでかえって住みづらそうな部屋になってしまっている。
デザインの見本に使われていたものとかそういうやつだろうか。
余計不便に見えて売れなさそうだな……。
後日。兄が片手でその箱を引きずっていき。
抱えるサイズの瓶にねじ込んでいた。
どういうわけか、スライムやゼリーのように形を変えながら瓶にデザイナーズ四畳半が押し込まれていき、入りきってしまったのだ。
瓶の口に扉が向いた形で。
しかも扉を開けて覗いてみるとそこにはあの四畳半。
兄は瓶の中へと平気で出入りしていた。
ええー……。
なに?
あの箱、もしかして。
四畳半という空間そのもの、なの?
閉所ならなんにでも入っちゃうの?
無意識にガチャの景品が普通の“変”であることを期待してしまったのが失敗だったのか……。
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