R 換金の壺
壺。日製のローグライク系ではおなじみのアイテムで、入れることによって効果を発揮するアイテム群だ。
その用途は様々で、装備品を合成したり、荷物を多く持ち運ぶためだったり、あとは正体の分からないアイテムを鑑定したり。
ただ必ずしも便利なアイテムであるとは限らない。
今回はその壺が出てきた話だ。
信仰が溜まったので神器を作ろうと思う。
いきなり何を言い出すのかと言えば、実はリソースの話である。
魔法は魔力を消費して現象を引き起こす技術で、魔力が無ければ始まらないものだ。
そして神の力においてこの魔力に当たるのが信仰。
これが実は危険な量溜まってるんだよね……!
魔力はあくまで使用者自身が使う力なのに対し、信仰は使われる力なのが問題だ。
神とか信仰とか銘打って本末転倒な話だが、信仰は言ってしまえば「こうしてほしい・こうなってほしい」という願いが元となっている。
過剰に溜まりすぎるとそれに引きずられて人格とか姿とか能力だとか色々なものに歪みが生じたりするのだ。
かと言って消費するにしても、その信仰に沿った形でないと大体バグって暴走するという。
これではどっちが力を使っているのかわかったもんじゃない。
畏れの類なら制御可能な範囲でぶっ放して発散してやればいいだけなのだが。
しかもうかつに人間に信仰が溜まったりするとそれだけでカリスマ性を発揮したりしはじめてまずかったりする。
私もちょっと危うい状態なんだよねこれ……!
ちょうどいい材料も組織の倉庫から手に入ったし、製造系の能力は機神がガッツリ握っている。
多少、クオリティが低くても信仰を消費して信仰リソースが貯まらないようにしてくれればいい。
なのてパパパっとそれ用の魔術式を書いて機神に案出しさせることにして。
今日の分のガチャを開けよう。
R・換金の壺
出現したのは壺だった。
やや悪趣味よりのデザインと金の色合いをした壺で、なにやら円環状の文様が刻まれている。
で、換金の壺。
見る限りでは入れたものを換金する壺だと考えられるが、それで素直に通るとは思えないが……。
とりあえず金属でも入れてみようか。
そう思ってヒヒイロカネのインゴットを持ってこさせて入れさせた。
壺の口に入らない大きさのはずのインゴットがちゅるんと壺の中に取り込まれ……チャリン、と音を立てる。
中を覗いてみると……そこには何枚かの金属硬貨。
入れた金属の値段に見合っているのかわからないが、枚数は少ない。
ひっくり返して硬貨を落とすと。
でてきたのは、銀貨のようだった。
見たことのない造形の丸い硬貨。
そんなに小判やらなんやらに詳しい訳では無いが。
どこの小銭だこれ。
どこかの教会を模した彫り込みと人の横顔の彫り込み。
横顔にはどことなく人間っぽくない意匠が施されている。
宗教の神様をモチーフにした硬貨だろうか?
換金されたとはいえ、結局使えない小銭とあれば意味がない。
何に使えるのか、なぜ換金されたのか、どれぐらいの価値があるのか。
何もわからない。
数字も書いてないし……。
後日。兄が小銭を消費して魔法を使った。
どういうわけだか、兄が小銭を握りしめながら魔法を行使することで銀貨を魔力代わりにしたのだ。
他にも銀貨を使えば機神の能力によるモノの生産のコストの代わりにできたり、なんなら
調査を続ければなんにでも使えそうだと、兄は言っていた。
雑にプランターに埋めれば植物の栄養の代わりにもなりそうだとも。
つまりあの壺は入れたものを換金し……万能リソースにへと変換するものだったのだ。
ほとんど完全物質、なんでにでも変化する石のようなもの。
というか大量にインゴット投入したら賢者の石を素材にしたと思しき赤い硬貨が出てきた。
しかも神器のコア部品に最良って。
信仰ベースの人造神作れるって。
そこまでの代物はいらねえ!
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