SR 運命ノート
運命。それは未来において起こることが決定しているという考え方だ。
その解釈は様々だが、その未来を変えるには往々にして大変な労力がかかるもの。
そして大体ろくでもない出来事である。
多くは予言によってもたらされ、それをくつがえすために多くの英雄が四苦八苦して、そして死んでいく。
今回はその運命を定めるノートが出てきた話だ。
結局倉庫の代物は機神にアイテムボックス的な魔法道具を開発させて強引に運ぶことにした。
ガチャの景品を解析して断片的に分かっている知識を組み合わせれば、複数の入り口を持つアイテムボックスを製作可能だ。
そのアイテムボックスにより、倉庫にあったアイテムをどんどん送り込める体勢が整った。
つまり……
全部回収したあとで順番に機神と私とリチャードさんで鑑定作業を行う予定である。
アイテムボックスはインデックス化できるようになっているため潜りながら調べるようなことをしなくて済む。
あそうそう。
いわゆる鑑定系の魔法も完成した。
アイテムボックスのような箱の中身も調べることができるのでとても便利……のように見えて。
情報処理にめちゃくちゃ時間がかかるのが欠点だ。
ケーキみたいなモノを鑑定するのに私でも半日魔法を掛け続ける必要があってなかなか、ガチャの景品に使えるものではない。
というかR以上だと鑑定に数日、SR以上だと数週間かかる予想が出てるから現実的じゃねえ。
機神が並列化して数百個単位で鑑定できるから倉庫の代物を調べるにはちょうどいいけども。
まあ倉庫事情は置いておいて。
今日の分のガチャを開封しよう。
SR・運命ノート
出現したのは黒い表紙に白地で文字が書かれたA4ノートだった。
どこの言語かわからない、というかおそらく魔法的な意味が込められた文字が表題としてつけられたそのノートは、だいぶ厄い気配を放っている。
というかあれだ。
名前を書くとその人物が死ぬノートと同じデザインだ。
文字の装飾が無骨なせいで他のノートとして再利用もできなさそうである。
で、中身は……と。
裏表紙に白い文字でなにか書かれている。
これは……表紙の文字と違って英語だな。
なになに?
1.このノートに書かれた出来事は記述通りに実現される。
……。
はい。
まあ、景品名からわかってはいた。
私はさらさらと白紙のページに「私のペンが床に落ちる」と書く。
しっかりと持っていたにも関わらず、ペンが指をすり抜けてテーブルに落ち、そのまま転がっていて机の反対側で落ちた。
あー……。
2.書かれた記述は運命となって現実となる。例外はない。
多分これ相当強制力があるタイプだ。
例えば「兄がケーキを持ってくる」と書けば、即座にドアを開けて兄が入ってくるだろう。
書き込む内容まで運命に干渉しているのならば。
あーやだやだ。
未来を知ることはその未来に縛られることだとか創作ではよく見かけるが。
こういう縛り方も存在するんだなぁ。
じゃ、面倒事は片付けてしまうに限る。
「このノートは消滅する」
後日。思い返して見ると。
なんでガチャの消滅を書いておかなかったんだろう。
あの時は欠片も思い浮かばなかったのだ。
いや、理由は大体わかっている。
あのノートよりも、ガチャの持つ運命のほうが強かったのだ。
あのノートは書かれたことが運命となり、必ず実現する。
逆説的に言えば、書かれないことは実現しない。
そしてこの手の能力には更に逆説的な概念があるのだ。
実現しないことは書かれない。
運命とはつまり、そういうことだ。
本当にろくでもない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます