UR 秘密結社 その2

 異能。それは人智や道理というものを超えた、物理法則に基づかない能力の総称である。

 いわゆる能力バトルものでの看板となる要素であり作品によってその起源とルールは異なるが……基本的に一人一種の異能は共通する。

 これは能力がそのまま個性につながるために、複数持たせるとキャラクターが立たなくなるからである。

 複雑になりすぎるために、能力バトルのキモである攻略が読者についていけなくなるという理由も存在するが……。


 今回は、その組織に接触する話だ。






 さて。

 思わず逃げてしまった。

 テレポートまでして逃げ帰ってしまった。


 ついうっかりというか、面倒事の予感がしてその場を離れる選択をしてしまったのだ。

 あの少女、しつこそうだったしなぁ。


 だから今日出会った出来事について、機神に調べさせることにした。

 国連の加入と調査団の要望の兼ね合いでネット回線をすでに基部に導入しているため、機神はそこから世界中のインターネットにアクセスできる。

 機神にとってあらゆるセキュリティは障子紙のようなものでしか無いため、調べれば必ず情報を拾い上げられるだろう。


 そう思っていたのだが……。

 真っ先に上がってきた情報にドン引きする。


 一昨日と今日を比較した結果、時空間に歪みが生じていること。

 それによって、93%しか算出される歴史が一致しないこと。

 ……なんらかの歴史改変が生じているということ。


 ……は?

 歴史が7%も狂ってんの?

 どう考えてもあの秘密結社のせいじゃん!


 出現しただけで歴史改変を起こして、あのような出来事を引き起こしたということなのか?

 出現した秘密結社は改変された出来事の裏に関わっているのは間違いない。

 あのような怪物が歴史の影に跋扈していればそりゃぁ7%も狂うというかなんというか……。


 いや、少女は戦っていたから秘密結社は対処する側ではあるのか?

 そう思ったあたりで機神から、秘密結社のホームページが出てきたと報告された。


 ホームページ。

 え、そんな公開できるような情報がある組織なの……。


 そこには七界術者募集と書かれた広告が貼られていたり、なにかのランキングが表示されていたりと微妙に緊張感がない。

 あと、組織代表として名前が出ている人がいるのだが、なぜか代表代理になっている。

 組織のトップは何処に……?


 まあ、組織の目的は分かった。

 なんか怪人がいて、人々を欲望のままに暴れる化け物に変えてるんだってよ。

 そいつをしばくことが最大の目的、と。


 こ、こえー……。

 やっぱろくでもないものを出してしまったのではないか……。





 翌日。昨晩の少女と学校でばったりと出会ってしまった。

 私が図書館で本を探している時に、本棚の向こうから突然現れたのだ。

 いや、私が意識を回してなかっただけではじめから向こうにいたんだろうけれども。


 先日とは違う学生服に身を包んでいるが、その輝かんばかりの金髪は流石に見間違えることはない。

 というか、そんな生徒がいるなんてことを聞いたことがないので多分ここにいるのは歴史改変で経歴とともにしたということだろう。

 いきなり転校してきたとかそういうやつかもしれんが。


 少女は私を見るなり指を指して、その声を荒げる……と同時、司書に当身されて意識を刈り取られていた。

 ここの司書は騒ぐ学生が嫌いで、意識を刈り取ってくることで有名だというのに……。


 ……いやこの司書何者だ。

 仮にもその少女は異能者で……戦闘を行える戦士だ。

 それを一撃で……。


 いや、掘るのはやめておこう。

 ろくでもないのを引きそうである。

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