UR 秘密結社 その3

 異能。それはどのような世界観を土台にするかによってその特質を変える。

 例えば魔法。おそらく現代ベースでやるとなると、その系統や得意な方向性によってその異能の性質を方向づけるだろう。

 例えば技術。なんらかの技術によって人の頭脳を拡張し、その延長線上に異能を発現させる。

 例えば天啓。何らかの目的によって上位存在や異界の存在がその能力をばらまいた結果。

 あり方が異なるからやれることは変わってくる。


 今回はその異能を探る話だ。







 私は校舎の裏に連れ込まれ、剣を向けられていた。

 無論、あの金髪の少女に、である。

 日本人離れした容姿……というか日本人ではないようで、彼女の名はリナ・バナディールという。

 その飛び抜けてきれいな容姿のため、ずっと噂の対象になっていたのだ。


 というか、今日1日ずっと私を付け回していたので余計噂になっていた、というか。

 話を聞くにしても学校という場所では流石に不適当でどうするかなとずっと考えていたのもあって、結果放課後までズルズルと引き伸ばす羽目になってしまった。

 あっちはすぐにでも話をしようとしていたので無駄に時間を使わせてしまったような気もする。


 ……で、だ。

 あちらは痺れを切らしたのか、不自然に避け続けたせいで警戒度を上げたのか。

 校舎裏につくと同時に、人避けの結界を展開し、私に剣を突きつけたのだ。

 どこから取り出したのか、突如としてその剣は彼女の手の内に現れた。

 あの夜には暗く、そして燃えていたためによく見えていなかったその剣は黄金で作り上げたかのような金色をしている。


「昨日のアレはなに? 貴方は何者? 話してもらうわよ」


 うーむ。

 どう説明したものか。

 うっかり手の内を明かすとこういう面倒が舞い込むから困る。


 魔法は……まあ現状、国家の秘匿技術だから覚えている事自体が厄ネタだし。

 正体は……わしにもわからん(2回目)。

 説明できる身分がただの学生しか無い。


 よってただの学生だと名乗ることにする。

 魔法は……例のゲームで覚えたと言っておこう。


 だが彼女は納得しない。

 そんな説明されたらまあ、私だって納得しないわ。

 でもそうとしか言いようがない。


 っと、納得しない彼女を尻目に突きつけられている剣を解析完了。

 魔法で作られた物品であるなら、いくつかの解析魔法を使えばあっという間である。

 ガチャの景品には一ミリも役に立たないがな!


 で、結果はというと全然わからん。

 魔法で出来ていることだけはわかるが、走っている情報がぜんぜん読めなかった。

 魔法でありながら魔法でない、そういう物体だと言える。

 才能の卵から出てきた杖にも似ているが……決定的に何かが違う。

 杖はそもそも解析通らないからな。


 うーむ。

 とりあえず、私はこう……。

 巻き込まれただけの主人公キャラを装う方向で行くことにする。

 そんな事言われても知らんもんは知らん、としか言いようがないアレだ。


 その言い分で彼女は……まあ納得しなかった。


「剣を突きつけられてそんな堂々としている時点で……怪しいのよッ!」








 彼女は脅しのつもりだったのだろう。

 その剣は炎を吹き出しながら振るわれ……私の胴を真っ二つに切り裂いた。

 その傷口から、を吹き出しながら。


 あの夜に見た私の技量からすれば、本来防げて当然の攻撃だろう。

 実際サメ機巧天使シャークマシンエンジェルの太刀筋と比べれば殺気も鋭さも皆無だ。

 戦闘が行われる速度で言えば、遅いとすら言っても良い。


 彼女もまさか真っ二つになるとは思っていなかったのだろう、驚きのあまりに愕然とした表情となっている。

 切り裂かれた上半身がドサリと地面に落ち……上着が土埃で汚れてしまうじゃないか。

 困るな。


 まあ、生きてるんだが。

 兄が凶悪な攻撃能力を得た、ないし得る可能性から、何があっても死なない方法を考えていたのだ。

 その答えがこれだ。

 影魔法特化型クラス【絶なる影ディープシャドウ】のスキル、《完全化》。

 全身を影魔法による影に変化させる能力だ。

 これがあると……、実質魔力MPが無くならない限り死なない。

 どんなダメージを受けても、影は不定形であるために傷にならない。


 なーんで、あっちの少女より異能バトルっぽい能力を獲得するハメになってるんだろうなぁ。

 兄のせいであるが。


 下半身が影に解け、茨のように変化して驚いている少女を縛り上げる。

 私は何事もなかったようにその体を再生させ、彼女の前に相対。


 さぁて、主導権を奪い取ったぞ。

 楽しい楽しい尋問タイムである。

 兄の影に隠れているだけで、私も大概いい性格しているから、ね!

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