R 潜水艇

 潜水艇。読んで字の如く、水に潜る船のことである。

 主に海中の遊覧や海底の調査などに使われ、人を不可知の領域へと運ぶ事ができる乗り物だ。

 ただ、海中という極めて特殊な環境に適応するため、どうしても搭乗者よりも耐水圧や空気の確保など、環境の維持にその構造のほとんどを持っていかれがちである。


 今回はその潜水艇が出てきた話だ。






 浮遊大陸の貸し出しの件だが、なんだか思ったよりも順調に進んでいる。

 あんまりにもあんまりな超技術を見せつけたものだから、国際社会は争うよりもより多くを獲得するためによりスムーズに交渉を進めようという方向に舵を切ったようだ。


 いちいち一つ一つで粘るよりも、次から次へと出してくる超技術をいかに拾うかの方が重要だと考えられているのだ。

 そのためにはそれを有効に使えるだけの学術的な組織が必要となる。


 宇宙エレベーターから降りてきた超技術を読解し、それを人類に扱える形にする……。

 こういうと巫女みたいだな。

 その超技術降ろしてるの機神だからまんざら間違いでもないが。


 まあなんだって良い。

 景品から出てきたやべえ技術を一人で抱えているのが辛いから全部投げちまおうぜ! から始まっている交流である。

 なので面倒事は少なければ少ないほどよい。


 世界を良くしようとかあまり考えていないからこんな馬鹿げた手法も取れるわけで……。

 だがカモられるのだけは勘弁な!

 そういう事されると侵攻しないといけなくなるから!


 さて。

 ガチャを回そう。


 R・潜水艇


 それは出現と同時に、地面に沈んでいった。

 入り口のハッチだけが地面の床に浮かんでおり……あまりにも現実がバグった光景にたじろいでしまう。

 ハッチに白色の塗装が施されている分、余計にシュールにみえるというか……。


 出現した一瞬に見えたその全体像は潜水艇のものだった。

 一人乗りであろう、小さくて丸い機体で、全体を白色で塗られていた、ように見えた。


 どうのこうの考えていても仕方ない。

 どうせこいつは乗り込めばわかるタイプだ。

 そう思い、思い切ってハッチを開ける。


 開けると同時、こもった空気の匂いがあふれ出す。

 淀んだ独特のあの空気感だ。

 わずかに帯びた熱が、中の気温を伺わせる。


 中を覗き込むと、狭いスペースに強引に配置したように見える座席と操縦桿が所狭しと並んでいた。

 様々な計器が正面の窓……ではなくモニターの周囲に取り付けられその情報を表示している。


 狭い。

 とにかく狭い。

 兄では体を入れることすら出来ないと思えるほどに狭い。


 本当にいろいろなものがギッチギチに詰まっているのだ。

 本当に人を乗せる気があるのかと思わなくもない。


 私はなんとか体を滑り込ませるようにして座席につく。

 さーてテスト……。


 ……。

 これ、どうやって動かすんだ?








 後日。サメ妖精のシャチくんにテストとして操縦してもらった。

 触っただけで操縦方法がわかる、というかだいたい似たような乗り物は操作系が一緒だ。

 シャチくんは確認こそしていないがあらゆる乗り物を操縦できる。

 そのため、この潜水艇も完璧とは言えないが操縦できるというわけだ。


 その結果はというと。

 ズブズブと厚さのない壁やらに沈み込んだり、地面をすり抜けて下の階に落ちたり。

 なんというか、床面を面と捉えて、それに対して潜航しているようである。


 二次元平面に対する潜航とはなんぞやという感じだが、まあ紙の表が床面だとすると紙の裏に入り込む感じだろうか。

 表側である床面からは決して見ることは出来ない。


 まあそんな……無駄にすごい感じのことをやっているが。

 これでやれることって何……。

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