R ドリル

 ドリル。孔を開けるために使われる工具を指す言葉である。

 回転しながら対象を削ることで少しずつ穴を掘り進める構造になっている。

 アニメ……特にロボットアニメでは円錐形で螺旋状のものがドリルと呼ばれて武器として利用されることがあるが、あの形状は一体どこから来たのだろうか。

 アレを突きこんで回転しても穴は開けられないと思うのだが……。


 今回はそのドリルが出てきた話だ。








 あのVRゲーム、しれっと完全翻訳機能が存在している。

 この完全翻訳機能、完全に言語の壁を破壊し、あらゆるプレイヤーが共通の言葉を話す事ができるのだ。

 発言を一度特殊な内的言語に翻訳してから、相手の使用している言語に翻訳し直すというなんというか迂遠な方法を取っているが。


 動かす体もアバターであり……究極的に、一切の人種や民族の差を意識させないことが出来る。

 ある意味で平等な世界が広がっている、といえよう。


 まあ、そんなゲームでも、プレイヤー毎に持っている文化と、アバターの傾向、あとクラスでまとまって行動している事が多いのは面白いところだが。

 人は共通点を見出して集まる生き物だということがよく分かる。


 特に……生産職は作るものでまとまっている。

 素材の融通やらで集まっていると便利であるし、より大きな物を作ろうとすると人が必要だ。

 それに、同じ物を作ろうと考えてプレイしている仲間である。

 必然、より集まる。


 まあ中には宇宙エレベーター調査団の人員が参加している魔法解析集団があったりするんだけどな!

 もうすでにゲームが現実と同じ挙動をしてるって気がついてるよあいつら!


 まあいいか。

 うまく使う分には文句も無かろう。

 どうせ才能の卵の影響もあって現実にはうまくもちこめまい。

 ガチャ回そ。


 R・ドリル


 出現したのはドリルだった。

 その大きさ、1メートルと少し。

 棒型で螺旋状のドリルビットが、ミニガンの本体から生えているような形状。


 うわああ、武器だこれ!?

 ドリルとは本来穴をあけるための工具だ。

 だからこんなデカいものは……武器だとしかありえない。


 ドリルもかろうじて工具のドリルビットの形状をしているが、こんなに長い物を実際に使ったら簡単に折れてしまうだろう。

 つまり、まあ……ものとしてメチャクチャである。

 ロボットアニメの武器かなにかか?


 しかし。

 でかく、総金属製で見るからに重そうなのだが、握って持ち上げてみるとこれがまた軽い。

 手軽に取り回しが出来る。

 異様に手に馴染むというか。


 見様見真似、というか軽く思いつくような動きをしてみても滑らかに動かせる。

 持ち手が特殊な形状になった槍のようにも感じるのだ。


 なので、そのままドリルの原動機を動かしてみた。

 きっと、手に馴染むように動くだろう、と。


 回転を始めるドリルビット。

 それに対して、明らかにモーターが激しい動作をしているはずなのにブレることのない本体。


 普通、ドリルが回転すれば振動し、それを抑えるためにては振るえる。

 だが、これは全く振動しない。

 まったく、ぶれない。


 こいつ……こんな、こんなくだらないことのために。

 ベクトル制御してやがるな!?


 そのままドリルを試し切り用の木材に振り下ろす。

 それは回転によってえぐり取られるように切断された。







 後日。ドリルがベクトル制御されていることを逆手に取ったのか、兄がドリルで曲芸をしていた。

 ドリルを棒のようにぐるぐる回しながら、体の表面を滑らせているのだ。

 それがまるで魔法のように手元に戻ってくる。


 動作をベクトル制御している以上、ドリルのどこかしからに振れていればそれはドリルを手に持っているものと同じと扱われ、振れている位置で固定される。

 そういう仕様だと見抜いての奇行なのだが。


 よくそんな回転する危険物を振り回そうと思えるな!

 ちょっとは警戒してくれ!

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