R ピザ窯

 ピザ窯。レンガを積み上げ、内側を薪で熱することで同じ層に存在する料理に火を通す作りの窯のことである。

 一般的にピザを焼くのに使われる。

 料理が薪と隣り合った状態で熱されるため、熱放射が閉じ込められ、内部までじっくりと焼く事ができるので弱火で長時間焼きたいものにぴったりである。


 今回はそのピザ窯が出てきた話だ。









 VRゲームのアクティブユーザーが10万人を突破した。

 マジで?

 こんな超がつくほど胡散臭くて、しかも全く予想がつかない代物に10万人もプレイヤーが居ることにびっくりだ。


 確かに現実と全く遜色ないリアリティと、それを全身で感じられる異世界の感覚、ゲーム故に何でも出来る全能感はそれが一般販売のゲームだと言うのなら他社を一方的に突き放すほどの売りになるだろう。

 だが実際は宇宙エレベーターを撮影したら勝手に配信される超怪しいアプリである。

 そんなの普通やるか!?


 超常慣れしすぎではなかろうか。

 兄ほどではないだろうが、アニメみたいなことが起こってもおかしくない世界になっていると感じている人間が少なからずいる、と10万人のアクティブユーザーから感じさせられる。


 物理学的・魔法学的に可能なことはすべて実現可能だからそりゃ何でも出来るゲームだけどさぁ。

 一体何を目的にプレイしているんだという気にもなるが。


 ネットで反響を調べると、ことごとく上がってくる「飯がうまい」……。

 なに!?

 飯食うためにやってるの君ら!?

 食っても現実の腹は膨れないぞ!?


 はあ。

 あのゲームの話は置いといて。

 ガチャを回そう。


 R・ピザ窯


 出現したのは、無駄に立派な作りの石窯だった。

 レンガを積み重ね、しっかりと隙間を埋めた代物。

 決して分厚いものではないが、かなりがっちりと作られている。


 飯の話した後に出現する窯よ……。

 まあそれは良いんだが、調理器具とか調理設備ってだいたいろくでもない……まあ景品でろくでもなくないものが無いんだが。


 んー、どうすっかなー。

 試すにしても調理をするには大げさすぎるし……。

 簡単にパンでも焼くか。


 そういうことでパンを手早く作ることにする。

 ピザ窯に薪と火を入れ、50分ほど予熱しておく。

 その時間の間に、パン生地を作っておくのだ。


 いい感じにパン生地が出来上がったら、ピザ窯に入れるために小さく切り分けて。

 それをトレーに乗せてピザ窯の前へ。

 パン生地たちを焼くためにピザ窯を開けると……。


 そこには、火が消えて、代わりにピザが入っていた。

 ピザ。

 たっぷりのサラミと、チーズが乗せられたシンプルなピザだ。


 ああ、うん……。


 このパン生地どうしてくれるの!?







 後日。兄がサメ機巧天使シャークマシンエンジェルを使って、ピザ窯の内部に火炎魔法をブチ込んでいた。

 あのピザ窯、内側に満たされた炎をピザに変換するとかいう、いつもの明後日にぶっ飛んだ効果を持っていたのだ。

 窯だからって火をそのまま食料に変換するのはどうかと思う。


 しかも。

 その味や種類は、火の質に依存する。

 火力が強ければ強いほど、より美味しい物になるのだ。


 なので兄は……現状の最大火力をブチ込んだのだ。

 いや、最大火力は嘘だった。

 現状の最大火力は杖+魔王装備+機神バフを乗せた私の魔法だった。

 まあ私が使えるのは基本闇属性なので結局ピザ窯には入れても意味がないんだが。


 サメ機巧天使シャークマシンエンジェルの火炎魔法を使って作ったピザはというと。

 なんか見たこともない得体のしれない食材が大量に乗っていた。

 食べられるヘドロみたいなやつとか、スライスされているのにうめき声を上げるきのことか、あと火が通っているのに赤々としたサイコロ肉とか。


 まあ、兄は食べたが。

 この男、躊躇がなさすぎる……!


 なお味の方は、「理解を拒む味」とのこと。

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