R かゆみ止め

 かゆみ止め。主に蚊や虫に噛まれ、かゆみを発生させる毒を打ち込まれたときに塗る薬である。

 薬にもよるが、クラゲの毒にも効くものもの存在する。

 よく見かけるのはヘッドとなるスポンジ状のパーツに液体を染み込ませたものと、チューブに入った軟膏型の物だ。

 患部に塗るとなるとこの形状に落ち着くのだろう。


 今回はそのかゆみ止めが出てきた話だ。







 兄が何を思ったか、プランターに世界樹の枝を接ぎ木した。

 即問い詰めることになったが、回答は「思いついちゃったから、つい」である。

 いつもならこの段階で止めるのだが、今回はもうそれは出来なかった。


 なぜなら、接ぎ木した時点でものすごい勢いで成長し始めていたからである。

 このことを予想していたのか、極彩色の星側の宇宙エレベーター基部でやっていたが、なぜそれが予想できていたのに実行に移してしまったのかそれがわからない。


 メキメキと勢いよく成長しながら宇宙エレベーターと同化していく世界樹の姿は、まあガチャから出てきた時と全く変わらない様子なので割愛するが。


 様子が違うところがあるとすれば、前回よりも明らかに太い樹に育ってることかな!

 あまりに太くなりすぎたせいで、巨大な根がいくつもむき出しになっている。

 まるでマングローブのようだが、中央に幹と同じぐらい太い根もあるので微妙に形が違う。

 その根の生え方も足を出すかのように枝を伸ばして岩盤に突き刺すという植物のそれとは思えない動きだった。


 やはりこの星は栄養が豊富なのだろうか。

 世界樹の侵食速度が別物のようだ。


 うーん、あの野郎これが狙いだったな?

 攻略できないからって世界樹で蹂躙しようとしてんじゃねえよ!

 それなりに上手く行っていることが余計ムカつく。


 はー。

 まあいいか。

 ガチャ回そ。


 R・かゆみ止め


 出現したのはかゆみ止めだった。

 プラスチック製の頭部がスポンジ状になっているものだ。

 どことも知れないメーカーの、中国のパチもんっぽいデザインをしている。


 うーん。

 薬かぁ……。

 こういうの、試すのどうなんだろうなぁ……。


 まあいいか。

 ヘッドを軽く小指で触る。


 すると……。

 じわじわと指先が痒くなってくる。

 それも、蚊に噛まれたときに感じるタイプのかゆみだ。


 こうなってくるともう無性に掻きたくなってくる。

 指先をさすってしまう。


 いやいやいやいや……。

 罠かよ。

 ジョークグッズタイプの、嫌がらせ系の罠かよ。

 かゆいから薬塗ってるっていうのに、塗るとかゆくなる薬って。


 手元に置いてると絶対やらかすから困る……。









 後日。兄が薬を混ぜた。

 薬を絞り出して、自販機で買えるポーションと混ぜやがったのだ。

 混ぜると同時に変色し、なんというか……こう……ゲーミング! な感じの色合いになっている。

 というか、色水っていうよりこれ光ってますよね?


 そして、それを塗ったサメ機巧天使シャークマシンエンジェル曰く、味がする。

 味がする。


 え?

 それに疑問を持った兄が小指に薬をつける。

 兄は一言、甘い、と。


 指先で甘さを感じる、変な薬に変化していたのだ。

 えっ、じゃああのかゆみも、実はかゆみじゃなくて幻覚的ななにかなわけ!?


 たしかに洗い流したら痒くなくなったけども!

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