R 巨人の右腕

 巨人。神話などで語られるでかい人を指す言葉だ。

 巨人と言われると現代の我々はつい10メートルを超える巨体を思い浮かべてしまうが、実際神話で語られる巨人は3メートルぐらいの大きさらしい。

 その特徴は……基本的に大きい以外では媒体や神話によってバラバラで、共通したイメージはあまりないと言ってもいい。

 ただ信仰される存在ではなかったようだ。


 今回はその巨人の一部が出てきた話だ。



























 兄が治癒魔法だけを抜き出して印刷した紙を売り出した。

 この兄、商才があるかどうかはわからないが需要のあるものを売るという商売の基本を知っているらしい。


 魔法陣の魔法だけならば印刷機でいくらでも量産が効く。

 使い捨てになるが、それを上回る需要が存在するため飛ぶように売れることだろう。


 そしてそれを用意するために……御札サイズに加工するのに、数十体のサメ機巧天使シャークマシンエンジェルがハサミで紙を切っている光景が出来上がっている。

 でかい図体をしているサメ機巧天使シャークマシンエンジェルが机に縮こまって作業している姿はなんというかシュールな光景だ。


 数がいるからこういう作業にも駆り出されるのだろうが……、適材適所という考えとは程遠い光景である。

 まあおいおい効率のいい方法を見つけていくことだろう。


 なぜか兄が混ざってハサミ使ってる光景を見ると流石にそう思わざるを得ないというか……。


 まあそんなアホなことをしている兄は置いておいて。

 私は今日の分のガチャを終わらせてしまおう。


 R・巨人の右腕


 出現したのは……でかい右腕だった。

 岩盤のごとき硬い甲殻に覆われた、2メートルほどの腕である。


 巨人というよりもゴーレムといったほうが近いような気がするその造型はとても生き物の腕だとは思えない。

 岩を強引に削り出したと言われたほうがまだ納得がいく。


 その腕の中央に球体のコアのようなものがあり、それは心臓のように光を瞬かせている。

 そして、その光がヒビにそって腕全体に流れ出しているのだ。

 光る液体のようなそれは腕からは溢れ出さないようで、うまいこと還流しているようである。


 で……これはどうやって使うのか。

 そもそも腕は道具ではない。

 腕だけ出されてもなんの役に立つのかという話だ。


 そう思って……腕の周りをぐるりと回って調べてみると。

 肩口あたりに腕を入れられるほどの大きさの穴が空いているのだ。

 これは……腕を突っ込めってことか?


 そう解釈した私は……腕を入れてみた。

 その途端、右腕に広がる熱い感覚。

 高温を感じているが、それは自分の腕を焼く感覚ではなく、ただただ熱を持ったために熱く感じている。

 不思議な感覚だ。

 灼熱に耐える生き物が火の中にいるのならこういう感覚になるのだろうか。


 私は指を動かしてみる。

 指を動かすのに従って、巨人の右腕の指が動くのだ。

 つまり。

 これは人の腕を巨人サイズに拡張する強化外骨格だと言える。


 ……このサイズで、腕だけで?

 でかいを通り越して邪魔である。

 人間の体ではこの腕を支えることすら出来ない。

 肘を地面につけたまま、前腕を持ち上げることぐらいしか出来ないのだ。


 あっ、違う。

 なにか、腕の力をぐっと押し出すように動かすと、なにか中に力がたまるのを感じる。

 そしてそれを吐き出すように腕を動かすと。


 手のひらから溶岩の塊が飛び出した。

 赤々を熱を帯びた溶岩である。

 

 ええー……。

 動かせない腕に半端に強力だけど射程のない武器がついている。

 それがなんの役に立つんだよ!



























 後日。鬼の角を使って鬼化した兄が右腕を装備。

 右腕が大型化した鬼へと変貌していた。


 しかもその右腕から炎を吐き出すわ、溶岩をぶん投げるわでテストと称して大暴れしていた。

 パンチ一発でサメ機巧天使シャークマシンエンジェルを行動不能に追い込むのだから恐ろしい。


 面白がってるのはわかったから溶岩撒き散らすのやめろ!

 テラスが燃える!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る