R 悪魔の帽子
帽子。主に頭部の装飾や熱中症の防止など様々な用途で利用される衣服の1つだ。
その用途に合わせて様々な形状や素材が利用されている。
熱中症を避けるために利用されるのはつばが大きく作られた日陰になる帽子であるし、装飾に利用されるのは材質に拘られ伝統的なデザインを踏襲した帽子である。
他の衣類と比べてもその用途や形状は多様だと言えよう。
今回は帽子が出てきた話である。
兄が帽子を作っていた。
掲載する魔法の種類を絞っても売れるのなら、本の形に纏めておく必要がなくないか、という結論から帽子に魔法陣を仕込んで売ることにしたのだ。
その試作品を
帽子というからには当然布製であるが、それに文字を刻む方法といえば刺繍だ。
兄もとりあえずそれで刻んでいるのだが、元よりこの魔方陣、QRコード並みに複雑なのである。
まあそんなもん手縫いでやってられるか……と言いたいところだが
それでも効率が悪いのだ。
ミシンのような正確さと速度で針を入れては抜く作業をしているが、このペースでは1つ作るのにどれだけかかるかわかったものではない。
そこで兄は……はじめから魔法陣の書かれた布を作り出した。
錬金術士のアトリエで作られた布で、布そのものの色が魔法陣の模様になっているのだ。
作るのにやたらと精密な作業が必要だったようだが、機神の能力にかかれば完全に誤差の範囲である。
なんかもっと簡単な手段で達成できることを超技術で回避したような気がするがまあ良いだろう。
なお、作った布は帽子の型紙に合わせてみたら魔法陣がはみ出て作り直しになった。
南無。
さて、ガチャを回すか。
R・悪魔の帽子
出現したのは帽子だった。
白いテンガロンハットである。
そして飾り布がついているのだ。
それは帽子の後部にへと伸び、たなびいている。
そう、重力に反してたなびいているのだ。
それに飾り布全体にひび割れのような光が走っていて、それは時々脈動している。
飾り布がついているだけなのに羽根でもつけているかのような伊達の効いた帽子である。
洒脱っぷりで言えばおしゃれマフラーにも似ていているような気がする。
で、このおしゃれ上級者向けの帽子は、どんな効果があるんですか、と。
そう考えながら私はこの帽子をかぶる。
しかし、名前が悪魔の帽子。
一体なにがその名を冠するのに影響を与えたのか。
……すぐわかった。
帽子をかぶったら、背中に黒い羽根が生えた。
それも見るからに黒い、コウモリ型の羽根である。
いわゆる悪魔キャラが背中にしょっているやつで、触っても感触がなかったために非実体として浮かび上がっているようだ。
根本は宙に浮いていて、節目に鋭い爪が三本ついている。
私はこの羽根は飛べるのかと思って少しジャンプしてみた。
羽根は空中で開き、その滞空時間をわずかに引き伸ばす。
そしてややゆっくりと地面に着地する。
……。
えっ、これだけ?
羽根を動かせるのかと思って意識してみても多少バサバサするぐらいでどうにも動かしづらい。
というか羽根に感覚が通っていないために動いているのか動いていないのかもイマイチ知覚できていないのだ。
一応根本だけはかなり自由に動かせるっぽいが。
正直こういう分かりづらいのはかなり困る。
一目で即危険物だとわかるのなら即封印できて楽なのだが。
後日。兄が悪魔の帽子をかぶって、羽根でマッスルポーズを取っていた。
コウモリの羽根の形をしているため、それに沿って動かせば羽根はかなり柔軟に動くことがわかったのだ。
ただ、感覚が通っていないためにその動きはすぐ引っかかる。
そして、コウモリはフルーツを器用に掴んで食べる事ができる。
兄は器用に羽根をたたみ、その先についた鋭い爪を指代わりにして物を掴む。
感覚が通っていないというのに、どうしてそこまで器用に使えるのか私にはわからない。
そして、そう動くことを確認した兄は。
爪を揃えて槍のように真っすぐ伸ばし。
羽根を根本から射出した。
10メートルほど先にあった木材に突き刺さり、そこで伸び切ったゴムのように羽は兄にへと戻ってくる。
木材を爪の先に突き刺したまま。
えっ、なにその使い方。
いややけにゲームっぽいなとは思っていたが。
本当にその動作を再現するやつがあるか!
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