R ゲームパッド

 ゲームパッド。ゲーム用のコントローラーであり、人の手に馴染むように二股に分かれた足の存在する装置だ。

 機種によってそのボタンの配置や種類は異なるが、キャラクターの移動やメニューの操作のために十字キーが必ずと行っていいほどついている。

 人の手の形に合わせて様々な位置にボタンやジョイスティックが配置され、またスピーカーやバイブレーターなど色々な機能が盛り込まれる傾向にある。


 今回はそのゲームパッドが出てきた話だ。



























 兄は結局、別付けのパーツとして詠唱を代行する装置を完成させた。

 一度魔物化した宝石は魔法を記録するのに最適な素材になることがわかってからは、宝石型のミミックを量産してからそれを倒して宝石に変える作業を行っていた。


 そこまでして作る詠唱代行器は、人の言葉と魔法陣の形とを仲介するプログラムのようなものである。

 この仲介処理を挟むことでより安全で、より簡単に魔導書を扱えるようにしようとしているのだ。


 言葉の魔法を覚えるのは非常に手間である。

 兄は疎通の指輪のチートで一足飛びに理解したが、サメ機巧天使シャークマシンエンジェルが説明して冒険者達に覚えさせるのに1単語に数時間もかかっている。

 そんなペースでは魔導書が売れない。


 詠唱代行器はいくつかのコマンドワードの組み合わせを発音すると、そのコマンドワードに沿った内容の言葉の魔法を発話し、それによって魔導書の魔法陣を読み出す仕組みである。

 まどろっこしい動作をしているようだが、これが一番効率的で精度の高く柔軟性の高い魔法が使えるんだから仕方ない。


 直接魔力が扱えるなら別だが。

 いやー、そりゃ魔法使いは偉いわけだわ。

 魔力を練り練りしていろんな魔法を作れるし、その使い方は魔力を持つ者に継承可能。

 知識を独占するのもむべなるかな。


 ……この魔導書、魔法ギルドとかそういうのが殴り込みに来たりしないよな?

 後ろ盾は……後ろ盾は得てるから……。

 きっと大丈夫のはず……。


 思考を切り替えるためにガチャでも回そう。

 いやこんなもんを思考を切り替えるのに使うのはどうかしているが、思考が強引に切り替わるのは事実だ。


 R・ゲームパッド


 出現したのはゲームのコントローラーだった。

 それも初期も初期の茶色で四角い形状のもの。

 箱型のコントローラーからケーブルが伸び、その先に吸盤のような接続端子が繋がっているのだ。


 なんだこのゲームパッド……。

 見たこともない接続端子に、見覚えのあるデザインのコントローラー。

 何に繋いで、何を操作しようというのかわかったものではない。


 先端が吸盤になっていて何に繋がるのかと弄んでいる。

 具体的にはテーブルに押し付けたのだ。

 すると、チュポン、という音とともに接続端子がテーブルに刺さる。


 ええー……。

 接続端子はしっかりと刺さっているのか、軽い力ではびくともしない。


 しかたなく、コントローラーの十字キーを押してみた。

 それに反応したのか、ゴッゴッゴッ、と音を立てながら地面を擦りつつ移動するテーブル。


 ああ……やっぱり。

 接続したものを操るゲームパッドだったかぁ。


 うん、物は面白いと言っていいと思う。

 ぬいぐるみなんかを動かせば相当楽しいんじゃないだろうか。

 まあ問題があるとすれば……。


 この接続ケーブルが1メートルもないことかな!



























 後日。兄はゲームパッドを複製し、ケーブルを延長した。

 機神の解析能力と生産能力によって複製されたそれは関節にあたるものを持つものしか動かせない劣化品だったが、普通に考えてそれで十分である。


 兄は複製したゲームパッドに人形をつなぎ、人形にCCDカメラ(盗撮なんかに使うやつだ)を持たせることでドローンもどきを作っていた。

 そう、ドローンもどきである。

 ぶっちゃけドローンで事足りるため、人形を操作して遊ぶ用途にしか使えない。


 そう思っていたら、2メートルぐらいありそうな巨大な金属フレームの人形に取り付けて操作しだす。

 やばい人だ……。

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