R ヒートシンク

 ヒートシンク。金属のひだのような構造を複数持つ部品で、主に貼り付けられた機械の熱を逃がすために利用される。

 このヒートシンク、金属の塊を斜めに削るように剥がし、それを縦に起こすことで作られている。

 また熱を逃がすために熱伝導率の高い金属が利用される。

 PCのCPUを冷やすために利用されることも多いが、構造上、ホコリが溜まりやすく古いパソコンだとホコリまみれになっていたりする。


 今回はそのヒートシンクが出てきた話だ。



























 ダンジョンから回収した宝石を使って、兄は魔法封入の実験を繰り返している。

 宝石の質が封入できる魔法の質に影響を及ぼすのでその選択に困っているようである。


 だから兄はどうしたかというと。

 宝石を材料にモンスターを生み出した。


 いわゆるミミック系のモンスターであり、通常は宝だと思って持ち上げた冒険者に襲いかかるものだ。

 だが兄はそこから限界までモンスターの持つ機能を削ることで、魔法を封入するための能力を作り出したのだ。


 そこまでして作り出したモンスターになんの魔法を封入しようとしていたのかというと、簡単に言うと翻訳魔法である。

 ただ、魔法的な翻訳というより、単語ごとの一対一翻訳である。


 これによって、一般的な言語でも言葉の魔法を発動にしようとしたのだ。

 一単語ごとに魔法で置き換えて、その置き換えた単語で言葉の魔法を発動させて、その魔法で魔法陣を呼び出して……とまどろっこしい動作をさせようとしていて。


 めんどくさくなったのか、モンスターに言葉を聞かせて、それに反応して魔法を使わせる形式に変更していた。


 それはそのぉ……、魔導書にモンスターを実装する、ということですか兄よ。

 そうですか兄よ。

 実質モンスターを売っているようなものですね兄よ。


 まあいいか。

 ガッチガチに機能制限した結果、反応して魔法を使う以外の能力がないから問題にならないだろう、多分。


 さて、ガチャを回そう。


 R・ヒートシンク


 出現したのはA4ノートサイズの大きさのヒートシンクだった。

 厚さはヒートシンクとしては薄いほうで、5センチメートルもない。

 それにひだも少なくスカスカである。


 そして、なにより。

 持っている手が熱いのだ。

 それも徐々に熱量を増しているような気がする。


 ホカホカである。

 炊きたてのご飯と同じぐらいホカホカになっている。

 やっぱりである。


 このヒートシンク、周囲の熱を集めてどんどん加熱している。

 しかも逃さないせいで周りのものが冷えることがない。


 いや、違うな。

 ある程度の高温で変化しなくなった。

 まるでカイロのように熱を維持している。


 ……これ、ヒートシンクじゃなくね?

 カイロじゃね?


 再利用出来る点に置いてはカイロよりも優れているが……。

 これはヒートシンクだ。

 他のものの熱を冷やすのが目的の道具だ。


 高熱で温めてしまっては意味がない。


 なんのための道具だよ!

 それにカイロにするにはでかすぎる!



























 後日。兄がヒートシンクを分割してカイロに加工した。

 ヒートシンクの特徴であるあのひだを分割しても熱を持つ特性が失われなかったのである。

 なのでただの暖かくて平たい金属板に加工できてしまったのだ。


 便利な大きさになるまで分割をし続けられたヒートシンク。

 元よりその役割を果たせなかったものは、その要素すら奪われる結末になった。


 加工で便利使い出来るだけマシというべきか。


 加工しないと使いみちがないものをガチャの景品にしないで欲しい……。

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