R 特殊造型カメラ
特殊造型。ドラマなどで使われる模型のことだ。
特撮などで破壊される柱、本来は持ち上げられない大きさのコンクリートの破片、舞台に利用されるセットなど、様々なところで使用されている。
現実に存在しない物を用意出来るという点で優れているが、近年は3DCGの台頭によりその技術はやや失われつつある。
今回はその特殊造型をしてしまうカメラが出てきた話だ。
いつのまにやら兄が冒険者たちと仲良くなっていた。
まあ粗暴な冒険者と、テンションの高い兄とは、まあ相性もよかろう。
闘技場でのトーナメントでその実力が認められたことから、冒険者たちには一目置かれていたのだ。
そこにつけこんで……というと流石に人聞きが悪いので、ガチャガチャダンジョンの話を聞くために声をかけたそうだ。
ダンジョンのモンスターの話、罠の話、戦い方の話と聞き出していき、だんだんと親近感を覚えていったのだろう。
もちろんそんなこと認められるわけはなく。
二人で色々考えて直接乗り込まないことを決めたのだ。
やばい病原菌を持ち込む可能性も、持ち帰る可能性もある。
それをやらかしたら、確実にやばいことになる。
なので全身義体を操作して絞め技を掛けておいた。
いろいろあってレベルが上がっている兄にはダメージにもならないが冷静にはなるだろう。
ついでに氷を頭に乗せておく。
兄の頭を物理的に冷やしている間に、予め回しておいたこのガチャカプセルを開封してしまおう。
R・特殊造型カメラ
出現したのはポラロイドカメラのようなものだった。
弁当箱のような平たい作りのカメラで、前面の部分が開いてフラッシュライトとレンズが出てくるようになっている。
そして下部に写真を吐き出すためのスリッドが走っている。
ポラロイドカメラ……、いや特殊造型カメラってなんだ。
私の知識にない代物なだけに、何を言っているのかわからない。
まあ、まともな代物ではないと思う。
というわけで、兄を撮影してみる。
組技を掛けられて身動きが取れない兄の姿が写真として吐き出され……その写真が地面に落ちた瞬間。
兄とそれを抑え込む義体が写真から出現したのだ。
写真と……というか、その出現した兄と義体の向こう側にいる兄と全く同じ形をしている。
強いていうと、写真から出現した兄は呼吸をしていない。
え、こわ……。
このカメラは何を出力したのか。
思わず出現したほうの兄に触れてみる……うん?
手応えから違和感を覚え、腕を引っ張った。
根本からボキン、と折れて外れる腕。
それを見て爆笑する兄。
もげた腕の断面は発泡スチロールだった。
つまり……このカメラは、発泡スチロール製の複製を作り出すカメラ……!
いやなんだよそれ。
便利そうではあるけれども!
後日。案の定、特殊造型カメラは兄のおもちゃになった。
なんなら変身能力を持つモンスターでも作り出して、それを撮影することで売却の効くものでも作ろうかとか考えているっぽい。
よくよく考えると。
特殊造型って現実に存在しないものを作る仕事だから、現実に在るものを複製するこのカメラは特殊造型とは違わなくない……?
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