R 幸運のミサンガ

 ミサンガ。様々な色からなる刺繍糸を組み合わせて編み上げることで模様を作り出した組み紐のことである。

 日本では手や足に巻きつけて、紐が自然に切れると願いが叶うというジンクスが存在しており、一時期流行していた。


 今回はそのミサンガが出てきた話だ。


























 また兄が冒険者ギルドで、冒険者ガチャを始めた。

 錬金術士のアトリエを利用できる錬金術士を探し出すため、冒険者を作成しては消し、冒険者を作成しては消している。


 錬金術が可能な冒険者ごろつきとかいう矛盾した存在が本当に存在するのかわからないところがあるが、まあこの冒険者ギルドはゲームのギルドだ。

 いないとは言い切れない。

 それに便利そうな冒険者をストックしておく目的もある。


 強力な回復魔法が使えるかもしれない冒険者、旅に便利な能力を持つ冒険者、転移能力を持つ冒険者。

 今まで出てきたわけではないが、それに近い能力を持つ冒険者が何度かすでに出現してきているそうだ。


 ただな……兄は人型の生物のように見えるものの扱いが非常に悪いからな……。

 あんまりそういうのを許容していいのか微妙である。


 まあいいか。

 ガチャでも回しておこう。


 R・幸運のミサンガ


 出現したのは、鮮やかな青と赤の紐を組み合わせたミサンガだった。

 長さは腕に巻き付けて少し余る程度。

 普通の長さと言ってもいい。

 また若干幅が広く、その内側に凝った模様が施されている。


 特に目立つのはその中央に編み込まれた、透明な糸だろう。

 その部分だけまるで宝石が嵌っているかのように輝いて見えるのだ。


 美しいミサンガである。

 しかし、それだけなのだ。

 それ以上に変わった点もなく紐自体も別に太いとか異常に硬いとかそういうこともない。


 ましてや接頭詞が「幸運」。

 幸運とはなんぞや。

 実際にそれの効果が発揮されたとして、それを私が認識出来るのか?


 一応、腕に巻いてみてコイントスをしてみたのだが、特にコインの表裏が変わることはなかった。

 サイコロも同様である。

 気になるほどサイコロの出目が偏ることもなかった。

 幸運だというのなら1か6に偏っても不思議はないのだが。


 あるいはまあ……増加する幸運の量が微妙すぎて全くわからない、というやつかもしれない。

 前に出た素早さの指輪も増加値が微妙すぎてなんとも言い難い効果だった。


 ええ……どうやってこれ検証しよ……。

 幸運ってどうやって測れば……?




























 後日。兄が腕に巻いた状態で発掘ダンジョンに向かった。

 曰く、発掘ダンジョンに出現する宝箱は10個に1個は罠があり、爆発を起こすそうなのだ。

 厳密には半分には罠があり、うち4つはサメ機人シャークボーグでなら問題なく引きちぎれ、残りの1つは目立つ爆発を起こす。


 幸運ならば爆発しないのではないか? と兄は考えたのだろう。

 結果はというと。

 爆発こそ起こさなかったものの、罠のある宝箱が6個。

 び、微妙……。

 効果があるのかどうか全然分からねえ!

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