SSR 神話の鍛冶屋

 神話には様々な名工が存在する。北欧神話のドワーフのダーインや、ギリシャ神話の神ヘパイストスなど、その能力は絶大だ。

 そしてそれらは優れた職人であるために、よく軽んじられて復讐として恐ろしいまでの呪いを込めた武器を作り上げることがある。

 道具を作るもの達を怒らせてはならない。

 その道具を扱うのは、自分自身なのだから。

 信用ならないものに自分の命を預けるようなものだ。

 相手を怒らせるということは、自分から相手を信用ならないものへと変えてしまう行為でしか無い。


 今回は神話の鍛冶屋が出た話だ。

 訳わかんねえ……。


















 兄が壁にめり込んで見つけた正体不明の階段の先にあったのは、ショートカット出来る階段だった。

 それは10層区切りで移動が可能になっているようで、兄は10層までおよそ30分で移動出来るようになった。

 最も、現状だと10層までしか開放されていないらしく、それ以外の層に移動するには結局徒歩で歩いていくしかない。

 それでも毎回えっちらほっちら10層まで歩いていく必要がなくなった分だいぶ時間に余裕が出来たと言える。


 それに徒歩移動になったとしても【旅歩き】の効果で行軍速度が上がっている。

 異界化している発掘ダンジョンを歩くのに疲労は少ないほうがいい。

 そして時間が短ければ疲労は少なくなる。


 兄もそれはわかっているようで……早速階段の環境を整備し始めた。

 なに?

 頑張ればWi-Fiも繋げられるって?

 また無茶なことしようとしてる……。


 さてガチャを回そう。

 これ自動で排出するように出来ないかな……。

 いやそうなったらそうなったで嫌な思いしかしないからダメだな。


 SSR 神話の鍛冶屋


 出現したのは……、脈打つ肉塊だった。

 それはモノリスに張り付いた状態で出現し、その全身を心臓かなにかのように脈打たせている。

 そしてその中央には、巨大なまぶたがある。

 そこに瞳があるのか。


 しかし……これが、神話の鍛冶屋?

 鍛冶屋でもないし、どういった神話の存在なのかもわからない。

 見た目が脈打つ肉塊でしかないのだ。

 心当たりはクトゥルフ神話ぐらいしかないが、クトゥルフ神話に鍛冶屋みたいな存在が出てくる話はなかったような気がするぞ。


 その肉塊はまどろんでいるのか、時折まぶたをぴくぴくと動かす。

 今は危険性はないように見える、が。

 不用意に接触して怒らせたらやべえものを出してきそうな気もするぞ。


 一体何処の神なのでしょうか?

 とりあえずヒヒイロカネのインゴットを複数個、お供えしてみた。

 その肉塊はその身体の下部から触手のようなものを伸ばし、インゴットを取り込む。

 お、これで良さそうだぞ。


 突如かっとその目を見開いた。

 身体と同等ほどの大きさのある目は、ぐるりと動き私を見つめ出したのだ。

 何かを計るように、じっくりと。

 その眼力に私は一歩も動けなくなる。


 やがて、肉塊が瞳を閉じると、まぶたの隙間からぺっと何かを吐き出した。

 ヒヒイロカネ製の小手……?


 これを、私に?

 サイズはピッタリみたいだけど、え?

 そういう?














 後日。兄が肉塊に注文をつけていた。

 大量のヒヒイロカネを与えながら、必要な装備の注文をしていたのだ。

 こいつマジか。

 恐怖心とか、信心深さとかそういうものも無いのかよ。


 肉塊も聞いているのか聞いていないのか、せわしなくその瞳を動かし身体を脈動させている。

 それにインゴットはちゃっかり取り込んでいた。

 それと同時に装備を吐き出し続ける。


 それでサメ機人シャークボーグを武装させて発掘ダンジョンに向かっていくのだから躊躇というものがない。

 肉塊製の装備は実際これまでの装備よりも優秀ではあった。


 だからってよくあんなわけわかんないのに注文つけられるな!?

 それも日本語でゴリ押しって!

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