R 箱

 箱根の伝統工芸品に秘密箱と呼ばれる、仕掛けの施された寄木細工がある。

 これはいわゆるパズルのように木が組み合わせてあり、これをずらしたり組み替えたりすることによって開封する事ができる箱なのだ。

 その性質上、宝石や硬貨などを隠す目的で作られたとされる。

 一見してただの箱に見えるためその効果は絶大であったであろう。

 最も、やたら作りの凝った箱であるため目立つような気がしてならない。


 今回は箱が出た話だ。













 そういえば、どうしてあんな得体のしれないサメモンスターが出てきたのか話していなかった気がする。

 兄の作り上げたダンジョンのモンスターの出現は基本的に地脈のエネルギーを使って行われていたのだが、その際にダンジョンの主の要素と、その主の部下の要素を使って基本となるモンスターの系統を作り出すそうだ。普通の人間ならゴブリンのような亜人が出現する。

 そう、サメ妖精のシャチくんだ。彼がいたからあのサメモンスターが誕生したのだ。


 そうなってくると疑問も湧く。

 サメ妖精のシャチくんはこんなにも可愛い(初見は面食らうが)のに、どうしてあんな感じになってしまったのか。

 手触りは似ている? マジで?

 触ってないからわからない。


 あとサメ鬼人はサメ機人作成時にそのままハイサメ鬼人に進化して、しゃべるようになった。


 さてガチャを回す。

 ろくでもない物が出ないといいな……。最近私の平穏乱され過ぎているからな。


 R・箱


 出現したのは陶器で出来た正六面体だ。

 おおよそ見た限りでは一切の継ぎ目なく、完全な正六面体のように思える。

 一辺11センチほどの小さな箱であり、陶器製の白が美しい。


 しかしだ。

 継ぎ目も色むらもない完全な立方体というだけでもうおかしい。

 というかこれは何に使う道具なんだ。

 さっぱりわからん。


 日の光にかざしながらくるくると影を観察してみるが、完全な立方体であるせいか、影がCGのように思える。

 それを持つ手だけが現実だと教えてくれるが、明らかに現実から浮いている物だと言わざるを得ない。


 しかしこれはなんなんだ。

 本当にただの箱か?

 そうやってくるくる回しながら触っていたところ、わずかに親指が沈み込んだ。

 そこにはなかったはずの切れ目が生じて、わずかに隙間が生じていた。


 慎重に親指を滑らせると、ある角度でその切れ目が生じたパーツがずれた。

 本当に僅かな動きだ。

 だがそれによって、長方形の板が生じて動いたのだ。

 完全な立方体だと思っていたのは、完全な工芸品だった。


 これは、秘密箱だ。

 純色の白と陶器製であることから気がつくのが遅れたのだ。

 完全な精度で作られたからくりの箱。

 目で見てわからない、それに触っても分かりづらいパズル仕掛け。

 面白くなってきた。




 苦闘3時間。

 全く切れ目がないのに、箱の角を30度回す操作が出てきたり、突然ルービックキューブの如く箱全体が回転したりと触っていて異常としかいいようがなかったがまあまあ楽しかった。

 脳の普段使わないところが刺激されまくって頭痛がするほどだ。

 異常なほど緻密な工芸品としか言いようがない。


 なお、開封して中から出てきたのは全く同じサイズの箱。

 入らないんですが……これ……。








 後日。兄がサメ機人シャークボーグにやらせていた。

 結果。1時間で開封していた。


 マジかよ。

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