R お土産セット

 お土産。一般的に旅行先で見つけた名物などを知り合いに渡す行為である。

 そのため、渡す相手の好みに合うとは限らず、微妙なすれ違いによる不幸が発生しやすい習慣でもある。

 食べ物が口に合わない、はよくある話で、これはもらった人間以外が食べればいいが、海外旅行だと化粧品や香水など、合わないがために全く使われず死蔵するなど悲しい現象が起こったりもする。

 あと現地のその場所らしい置物なども結局箱にしまわれがちだ。

 私は叔父に月餅をお土産にもらった事があるのだが、そのあまりの粉っぽさに一口しか食べられなかった。


 ええ、何が言いたいかというと……今回そういうタイプの景品が出た話だ。










 発掘ダンジョン一層の制圧が進んでいる。

 どうにも、一層ごとに仕掛けがあるらしくそれを解体することで湧きスポットからのスケルトンの出現が止められるようだ。

 そのことが判明したのはいいが、今度は仕掛けの解体に手こずっているのだ。

 というのも、どうもその仕掛けが壁に埋められているらしく、場所がわかってもそこにたどり着く手段がないのだ。

 現状は粗製のツルハシで掘り進めているとのこと。


 ……どうやってそれを把握したんだ兄。時々、兄は異常なカンの良さと理解力を発揮する。

 そしてだいたいろくでもないことになるのだ。

 勘弁してほしい。


 さて、今日のガチャだ。

 異音さえなければ回さないのだが、回さないと騒音を立てるのだから仕方ない。

 対策せずに旅行とか出たらヤバいことになるような気がする。


 排出されたカプセルは妙などどめ色をしていた。

 開封と同時に複数の物品が吐き出される。


 R・お土産セット


 出現したのはなんかでかい剣、木刀、箱の3つ。あと得体のしれない置物だ。

 というか、何のお土産だ? お前、ガチャだろ?

 どこに行ってきたというんだ。


 木刀には持ち手の部分に得体のしれないタイプグラフィーが施されている。というか何の文字だこれ。

 そして振ってみても特になにもない。というか、柱にしたたかにぶつけてへし折れてしまった。安物だ。


 で、この邪魔になりそうなでかい剣だが、そう、あれだ。

 お土産屋に置いてある、竜が絡まっている剣のアレが、そのまま実際の剣のサイズまでスケールアップされた物だ。

 そのおかげでめちゃくちゃ重い上に邪魔である。

 しかもしかも、ひと目で剣として使えなさそうというのが分かる。

 なぜならバリがすごいのだ。刃となる部分に余分な金属がついている以上これは切れない。絶対に切れない。

 あと魔剣の3倍ぐらい重くて振り回しすら出来なかった。持ち上がらん。

 幅広の剣だからそりゃそうもなるな。

 邪魔なのでテラスの前に投げ出しておいた。兄がいい感じにしてくれるだろう。


 で、最後。

 箱だ。包装紙に包まれた薄い箱だが、そこに書かれているのは「銘菓アトランティス饅頭」。

 饅頭。

 はい。

 アトランティス。

 はい。

 はいじゃないが。アトランティス? いやいやいや、どこからお土産買ってきてるんだよ。

 本当にどこだよ!

 じゃああの木刀も、竜の巻き付いた剣もアトランティス土産ってか!


 中身の饅頭は兄に食わせて確かめたが、普通の饅頭だった。

 なお味の評価はかなり微妙。あんこがたわしみたいな食感になっていたため。








 後日。完全に記憶から消えていた得体のしれない置物だが、兄が発掘したダンジョンに持ち込んで、スケルトンに投げつけていた。

 どうも見た目と持ち上げた際の重さと実際の重量が全く釣り合っていないらしく、投げることスケルトンの頭部を一撃で粉砕できるお手頃な投擲武器になるそうだ。


 邪神像みたいな見た目の置物だったが、一体何を象った置物だったんだろう。

 多少気になるくらいで別に私はいらないから、兄の投擲武器として頑張ってくれ。

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