第99話 殺人ピエロとゴブリン
サーカス団とは色々と難しい世界でもある。
人間関係が苦手なピエロはいつも独りぼっちで仮面をつけていた。
その仮面はピエロの仮面だった。
彼にとってピエロとは隣にいる相棒だった。
ピエロを演じていると沢山の子供達が笑ってくれる、ピエロを演じていると団長が喜んでくれる。
そしてピエロは暴走した。
ピエロは人を殺し始めた。
それはなぜか?
子供を大切にしない大人達だった。
子供を虐待するもの、子供に性的行為を働くもの、子供を売り買いするもの、子供の臓器を売買するもの、
ピエロは血の涙を流した。
自分の力では何も救う事が出来ないという事、全ては被害にあってから助けている。
被害にあう前に助ける方法がない。
ピエロことマリアルドことマリーは女性であった。
女性でありながらピエロになった。
ピエロは男性がなるものだというある国の風習を壊したのがマリーだった。
マリーはどこの国籍かもわからない捨て子だった。
マリーは団長が親だった。
時には厳しい、でも虐待はしない、時には優しい、美味しい料理を作ってくれる。
沢山の仲間達。
マリーは子供を見ると、彼等の心の声が聞こえてきそうだった。
子供達の絶望の表情を笑顔で塗り替えても、家に帰ればまた絶望になる。
なら、
マリーは暴走した。
ピエロは暴走した。
そしてマリーは、
全てを救うため、盾と剣の組織に入った。
この異世界にやってきたマリー彼女は子供を助けたい、この戦争のせいで子供が死ぬのなら、この戦争を失くしてあげたい。
その為にリンスケ団長を助けるのだから。
マリーはまだ13歳の少女であった。
マリーを救い出したのは、まぎれもなくリンスケなのだから。
ゆっくりと歩く。
この森の先に、グレイトゴブリンと呼ばれる化け物がいる。
呼吸を整えて、そこに到達すると、報告とは違った事、それはグレイトゴブリンただ1人。
闇の眷属で5柱が1人のオリストだった。
オリストはこちらを見ていぶかしげな視線を向けてくる。
オリストは辺りを見渡す。
何かを心配している表情だ。
マリーはそれを分析しながら。
「道化か、見たところ子供だ、どっかいけ」
「あたしが子供でも沢山の人を殺した」
「どうりで血の臭いがする」
「お前は何を企んでいる? リンスケ団長が聞きたそうにしている」
「それは言えないさ、だからあっちへいけ」
オリストはこちらをしっしと追っ払おうとする。
だがごつごつとした肌のグレイトゴブリンであるオリストはこちらを見ざるえない。
空中に沢山のナイフが浮かび上がっている。
その数100本くらい。
「なら殺すのみ、お前が生きていると子供たちが嘆く」
「ただの、ガキじゃないってわけか」
オリストは右手と左手に棍棒を握りしめる。
ゴブリンにとって棍棒とは相棒のようなもの。
それを2つ使用する事は例外に近い。
ナイフが飛来する。
ナイフには無数の糸がついている。
その糸がそれぞれ繋がっており、一本のナイフを投げれば、それを追いかけるようにナイフが飛来する。
まるで風のように1本の巨大蛇が如く、ナイフが鳥のように飛び上がる。
マリーが得た魔力とは、意識付与という力であった。
意識を付与する事、つまり武器に意識を付与する事が出来る。
まるで自分の手足のように動かす事が出来る。
その為に糸も操作しながらナイフ自体も操作できる。
ナイフは投げられる事により力の作用が起きる。
飛んでいく力の作用をうまく利用して、操作する。
オリストは普通に避けるも、ナイフは本当に魚のように方向転換する。
オリストはぎょっとして、右腕を両断される。
地面に落ちる右腕、
オリストははぁとため息をついて、
腕を拾って結合する。
魔法を唱えているわけでもない。
「この力があるからこそ闇の眷属なんて呼ばれている。俺様は体のどこでも切断されようがつなげる事が出来る。ただし脳味噌を串刺しにされたら終わりだ」
「わざわざありがとう、弱点を言ってくれて」
「それがお前の弱点となる」
ナイフが旋回する。
もはや空気中を浮遊するナイフたち。
オリストは走り出す。
それも無我夢中ではなく、作業をするように、まっすぐにこちらに向かってくるのだ。
そしてマリーのすぐそばで、頭をしゃがませる。
ピエロの仮面に、自分自身が操作しているナイフが突き刺さった。
操作に集中するあまり、自分の攻撃で自分を攻撃してしまう事を完全に失念していた。
仮面がぼろぼろと落ちてくる。
オリストはそれを見て頷いた。
「お前女の子だったのか、てっきり戦うからには男の子だと思っていたよ」
「ふ、ふふふふ、これはリンスケ団長からもらった、ふ、ふふ、あっはっはっははっは」
ピエロは壊れた。
マリーは壊れた。
全ての神経がショートした。
そしてそこにいたのは、モンスターしかいなかった。
マリーはモンスターとなった。
そしてマリーは殺すだけのロボットとなった。
ごきごきと動かしながら、子供達の悲鳴が聞こえる。
もうやめてという音が聞こえる。
ばきぼきと骨を折る音が聞こえる。
マリーは走り出した。
「嘘だろ」
マリーは空を走っていた。
自分自身の体を操作していた。
空を走りながら。
オリストの真上に到着すると、真下に向かって落下を始める。
今までナイフは魚の集団のように1つの塊としてしか操作できていなかった。
現在は1本1本と操作する事ができる。
意識を付与しているとはそういう事なのだ。
頭の中が壊れていれば、沢山経路が生まれてしまう。
それが、どういう原理なのか、マリーにも理解できなかった。
「さぁ、いらっしゃい」
「ピエロショーの」
「はぁじまりだぁああああ」
マリーは笑っている。
ピエロのショーを始めている。
無数のナイフがオリストを縦横無尽に両断しまくる。
だが両断するとすぐに接続する。
頭を狙う必要がある。
しかし頭には巨大なヘルメットのようなものをつけている。
そのヘルメットは特殊な金属でできているようだ。
「これはオリハルコン、普通では壊す事はできない」
倒すことは不可能だった。
だが別に倒す事が全てではない。
ピエロは笑った。
すごくえげつない事を思いついた。
それは首だけにする事と。
まずは両手を両断。
両手と両腕が転がっていく。
次は両足を切断、次は首を切断。
まるで全身がミミズのように蠢いているのに、マリーはにかりと笑っている。
一本一本のナイフの操作を止めると。
マリーはオリストの首だけをつかみ。
「さぁて、リンスケ団長に見せるぞ」
「ちょ、まじかよ、首だけかよ、最悪だぜ、リンゴーンは無事でやれてればいいが」
「リンゴーンって誰?」
「爺さんだよ、どっかいっちまった」
「そうなんだ。るんるんるん」
ピエロは修復される。
マリーは正気になったのであった。
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