第88話 ディン王国のナーポレノン国王
ナーポレノン国王は手で握りしめているフィギュアを不思議そうに見つめていた。
このフィギュアなるものはガチャガチャと呼ばれる道具でカプセルに入って出てくる。
それも一回の値段が安いのだが。
最近高騰し始めている。
それも連鎖的に。
国王はなぜこのような経済的危機になっているのか理解できないでいた。
誰かの陰謀でもないとこういう経済パニックは引き起こらない。
買占めや食べ物不足による経済パニックならよく分かるのだが、今回の経済パニックはそれではない、この人形なのだ。
そんな国王もこのフィギュアの虜になっていた。
沢山のフィギュアを飾る爽快感、達成感はとてつもなく支配欲を刺激してくれるものだった。
国王は人形を見ながらにやにやしている。
伝令兵がやって着た。
そいつは近くの村から徴兵した兵士だった。
この国は30以上の村や街を支配している。
目標はエクスバン国家とセルフィール国家を支配して、最後にはバラドリ混在王国、さらにその山を越えたトロール族を支配する事。
それが国王の夢そのものであった。
「なんじゃ」
「御意、リンゴーンなるものが面会に来ております。滅びの村から来たそうです」
「なぜ、俺はそいつの話を聞かねばなるまい?」
「その村では異世界からやってきた人が、色々な物を提供しているからです。その中にフィギュアもあったそうです」
「ほう、会ってみようではないか」
するとそこにやってきたのは、見るからにこずるそうな老人であった。
老人はにやにやしている。
いい情報でも持ってきてるのだろうと国王は認識すると。
「して、そなたはどのような情報を持ってきておるのじゃ?」
「御意、元滅びの村では、1人の異世界から来た人物が異世界から持ってくる色々な道具を活用して村を復興しております。恐らく今では要塞が出来上がっているでしょう、それとフィギュアを大量に異世界から持ってきているようで、一度異世界の扉まで行きましたが何も見えず。恐らくですが異世界人でないと扉は見えないようで、国王様、あそこの村をいやあいつを支配すれば無限の富を得られますぞ」
国王の頬がにやつき始める。それはどこまでも続くであろう膨大な飢えであった。
その飢えは次なる獲物を見つけた。
「してその者の名前は?」
「ヒロスケという男性です」
「よくやったリンゴーン今日からお主は5柱の1人の部下になる事を許そう」
「御意、ありがたき幸せ」
国王はさらににやつく、こいつが本当の事を言っている保証はない、それでもこいつにはオリストが適任かと思った。
5柱の1人【グレイトゴブリン】のオリスト。
ディン王国にはカフート【魔力の一種】が遺跡から排出され続けている。
その遺跡を掘る仕事をするのが奴隷タチの仕事でもあった。
カフートは遥か南の世界から魔族達を引き入れる時に使うもので、または他にも使い方があるのかもしれないが。
沢山の魔族の代表者達が5名いることから5柱と名付けられている。
グレイトゴブリンは岩のようなごつごつとしたゴブリン達で、とてつもなく残忍でありながら、冷静さを兼ね備えたのが、オリストあった。
あのリンゴーンなるものはオリストの配下になる方が向いているだろう、きっと自分が魔族の配下になるなんて信じていないだろうが。
「オリストを呼べ」
「御意」
伝令が走って消えると、そこに猛スピードでやってきたのが。
「てやんでぃ、なんでいきなり呼んだナーポレノン。いい加減王様気分はやめねーか? 俺様とナーポレノンは同族だ。なぜなら、グレイトゴブリンの王だぞ、カフートがなければ、お前など滅ぼしてくれようて」
「すまぬ、今お主を呼んだのはそいつを配下にしてやれ」
初めて見る魔族に縮あがっているのはリンゴーンだった。
リンゴーンは体をぶるぶると震わせている。
「使い捨てごめんてやつ?」
「いやそいつはきっとちゃんと働くぞ、そんな気がする」
「話が違います。国王様」
「どこに話の違いがあるのかなぁ? リンゴーン君」
「せっかく情報を」
「その情報ならありがたく頂戴した、だからこうやってお礼をしているではないか」
「それはお礼ではございません」
「なに? おぬしは国王である俺のお礼が受け入れられないと?」
ついにリンゴーンは悟ったみたいだ。
今、目の前にいるのは道理に反する人間の屑だと。
国王は確かに人間の屑だと自分で思っている。
だがこうも思っている。
「なにせ俺は全ての世界から選ばれた王様だから何でも許されるのだよ、ぎゃはははっはあ」
国王は爆笑しながら。
「ささ色々と仕込んでやるよ、戦争の仕方からな」
「ウ、嘘だああああ」
リンゴーンの断末摩が響く中、
グレイトゴブリンのオリストに引きずられていくリンゴーンを見ながら、国王は背中をこりこりとい掻き、にやりと笑って見せる。
「さてと、誰を差し向けようかなぁ、やっぱり蛇魔族の女王のナガルディアって所かねぇ」
国王は鈴を鳴らした。
それが戦争の始まりのゴングだった。
そこにゆったりとやってくるものの気配を感じつつ、国王は寒気を覚える。
「だからナガルディアは苦手なんだけど、彼女ほど忠実なるしもべはいないのだよなぁ」
扉がゆっくりと開くと、伝令の人がびくりと反応する。
そして石像のように固まってしまう。
「やめぬかナガルディアよそいつは餌ではなく伝令兵だ」
「これはそれは、失礼あそばせ」
「蛇の睨みという魔法はいつ見ても恐ろしいなぁ」
「それがわたくしの存在意義ですわ」
全身が鱗のような物に覆われながら、両足が蛇のようになっているため人魚だと間違われてもおかしくない。
彼女は魔の森出身であり、
南の果てに存在している。
南の果てに向かって生き延びた人はあまりいないとされているが、実は数名いるのだ。
それと接触したのが国王であった。
「さてお主に命令を与えよう」
国王はにやりとほくそ笑んでいた。
それはまさしく悪人のそれであった。
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