第75話 設計図と教育問題

 場所は巨大倉庫の中にある研究室。

 2人はめちゃくちゃ旨いコーヒーを入れてくれたミカンはにかにかしながら、そこら辺を歩いている。


 悪魔のような笑みを浮かべる弟は、大きく頷いた。


「沢山の人間が死ぬ未来があるなら、沢山の人間を殺さない未来にする為に頑張る。そうさ、俺は力を得る覚悟がある」


「ならこれを渡すよ、なるべく強奪されないように厳重にな」

「一体何を?」


 林助はその2枚の設計図を見たその瞬間、

 表情1つ1つがまるで生き生きしているかのように、

 にやりとほくそ笑み、1人で大爆笑しながら。


 頭が来るってしまったのではないかと言うくらい、頭を手でくしゃくしゃにしている。


「これなら、作れる。巨大人形兵器を戦争のパワーバランスが崩れるぞ」

「だろ、だからなるべく渡すべきか渡さないべきかで悩んでいた」


「それは俺だって悩むさ、さっそく技術のメンバーに頼んでみる。乗るのは兄貴だからな」

「ちょ、どゆことおおおおお」



 僕は唖然としていた。

 そんな話は聞いていないのだから。

 現実世界でロボットになって戦うって、どこの世界のヒーローだよ。


「名前はグリーンロボットで」


「弟よぶち殺していいか?」


「それはご勘弁で」


「僕にロボットに乗ってどうすれと?」


「とりあえず外国にいってテロリストを駆逐して拉致された人とか捕まっている人とかを助ける? 的な?」


「的なじゃねー僕には異世界での仕事が」


「その為になるんじゃね?」


「どういうこと?」


「外国と交易する為さ、異世界の物をな」


「確かにそれはいいかもしれないけどさ、異世界で沢山の物を集めて、外国に売り飛ばす? さらに外国から何かを持ってきて、異世界を潤わせる? さらに戦争で沢山の人々を助ける。どれだけ僕を働かせたいんだよ」


「それが兄貴の宿命さ、俺だって色々と忙しいのだからなぁ」

「そうは見えないのですけどね」


「ミカン黙れ」

「すっかすかはすっかすかなのです」


「ミカンされ」

「そう簡単にミカンは去る事をしないのです」


 僕と林介はとりあえず笑い、設計図を渡したのであった。


 その外国の話は1つの出来たらいいねという感じなのだろう、

 僕はそれが叶わぬ夢である事を何となくだけど理解していた。



「では次の問題だ」

「はいです」


「って林介どこいったああああ。一瞬の隙間だぞおおお、なぜミカンに代わってるんだああ」


「あ、すっかすかならもう我慢できないと言ってどっかあ行きましたです」


「は、はは」


「どうせならうちがおじちゃんの相談を受けますぜ、子供の気持は子供にってね」


 その発言で僕の脳裏にはある事が展開された。

 いくら母親の気持になろうと、結局は子供の気持ではない、子供はどういう所でリラックスしたいのか、または遊びたいのか。


 そして母親は仕事がしたい、だけど子供が邪魔だ。


 だからといって子供が大嫌いと言う訳ではなく、

 子供を成長させるにはお金が必要だという事だ。


 だがその親のエゴにより子供たちは苦しむ場合がある。


 一番の良い例が目の前にいるミカンちゃんと言う事だろう。


「今異世界では沢山の女性たちが子供の問題で悩んでいる。子供を預ける場所が必要なんだ。女性達は仕事をしないと生活を養っていけないんだ。それもあるんだろうけど、母親たちのストレス解消という意味もあるだろう、人によるけど、ずっと部屋の中でじっとしているのが苦手な人がいるんだよ」


「ふむふむ、なるほどです、なら学校を作ればいいのではないでしょうか? 学校をつくる、その中に幼稚園とかの設備を整える。あと外で遊べるように遊具を設置したり、その異世界では子供はどのくらい居るのですか?」


「ざっと30人くらいだと思う、これは断言できないけど」


「なら学校でいいと思います。幼稚園とか小学校とか中学校とか高校とか人数が少ないうちは単なる【学校】という名前でいいのだと思います」


「学校という事はちらっと考えた事はあるんだ、でも頭の中では小・中・高が別々だったし、幼稚園も別々だった。まさか1つに統合するという考え方があるとは、抜け穴だったよ」


「えっへん、うちはすごいのだ」


「やっぱ中学生って感じだな」


「よく小学生と間違われるのだ」


「それは仕方ないさ、君は可愛いのだから」


「ありがとうです。おじちゃん」


「そうだな、学校を作るという事は教科書が必要だよな、この世界の文字はあちらで勝手に変換されるみたいだし、リサイクルショップになかったかな、ちょっとお店の方にいくけど、ミカンも来るか?」


「もっちろんです。おじちゃんと短いデートです」

「はは、それは照れるなぁ」



 僕とミカンは手を繋いで、歩き出した。

 巨大倉庫から出ると、近くに建造されているリサイクルショップ(でんでん)に向かった。


 昼くらいのリサイクルショップでは、沢山のお客さんが来客と言うわけではなく。

 

インターネットですごいぼろ儲けしているらしい。


 薬草とか、薬草団子と、エリクサは効果が強すぎるので、特別枠で林介が把握している。

 

 きっと今も色々な患者の失った手足を回復させているだろう、


 エリクサとかがなくならないうちに、交易品としてこちらに持ってくる必要はあるのだが。


 現在僕の頭の中では僕以外の配達人を手配することを検討している。


 さすがに1人だけでエクスバン国家とセルフィール国家とバラドリ混在王国の交易をする訳にはいかない、僕の体がもたない体。


 とはいえ候補者はなかなか見つかっていない。


 1人だけ可能性としては、最弱のウィルソンが浮かんだ。彼は逃げ足が速いので、問題が起きてもなとかしそうだ。まずは要塞を作ってから交易するという方法もあるが。


 色々な案が僕の中で駆け巡っていた。


 リサイクルショップの中にはお袋が新聞を見ながら、ナッツを食べていた。


 てめーは自由人かと突っ込みたくなったが。


「あら、おかえり、ミカンちゃんもナッツ食べる?」


「ママ、食べますです」


「お袋、ちょっといいか」


「ナッツ食べてるんですけど?」


 僕は苦笑いしつつも、お袋とミカンちゃんがナッツタイムを終了するまで待つ事とした。

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