第73話 覚悟会話

「まぁ座りたまえ」


 それが時の王の二言目であった。

 時の王は指パッチンすると、目の前に椅子が出現した。

 

 僕は白い椅子に座ると、時の王と少しだけの距離開けつつも。


「この時のダンジョンとは何なのか? という顔をしているのう」

「はい、巨大なモンスターばかりでしたので」


「それが修行になるからじゃ」

「ですがダンジョンに来た人が倒せない敵では」


「現にお主は全部を倒したぞ?」

「あれは僕がエアガンを使ったので」

「その遠距離攻撃武器か、現実世界から持ち込んだようじゃのう」

「はい」


「この世界はそういう仕組みなのじゃ、現実世界の物は異世界では最強に、異世界の物を現実世界では最強になるように仕組んだ。それが世界と世界の仕組みでじゃな」

「それは何となく理解しています」


「よろしい、このダンジョンは何度でも死んでも蘇る。それで巨大なモンスターを1体でも倒したらすごく強くなれる、という事じゃ、おぬしはもうありえない数を殺した。気づいてはおらぬだろうが、お主の肉体レベルは化け物じゃぞ、巨大ミノタウロスのハルバートを受け止めるくらいにな」

「た、たしかに」



 僕の脳裏に色々なものが過る。

 それはマシンガンで1発ずつ当てた時だ。

 すべてがスローに見えて、ゆっくりと感じることが出来た。


 バズーカだって、何度でも高速でBB弾を入れ替えた。


 僕は気づかぬうちに強くなっていたようなのだ。


 それがレベルとかステータスで見分ける事ができないのは少し残念な気はするが。


「では昔話をしよう、この時のダンジョンがあった国では沢山の種族が混雑して暮らしていた。時のダンジョンではよりつよい兵士を生み出す為にあった。じゃが、遥か昔のディン王国がこの王国を滅ぼした。その結果時のダンジョンは土砂で埋められ、沢山の人々が殺された。そしてこの王国、つまりタイム王国は滅びをたどった。1つになりてね」

「なるほど、そう言う事ですか」


「だからお前には王になってもらいたい」

「それは引き受けるつもりです」


「いやに即決じゃのう」

「僕は一刻も早く奴隷達を解放したいのです。一々たたらを踏んでいる場合ではないのです」


「うむ、その心意気はすばらしいのう、じゃがお主の本音はディン王国と交易したいということじゃろう?」

「はい」


「残念じゃがそれは諦めろ」

「なぜですか、そもそもあなたは何者なのですか」


「わしはタイム王国の国王であるダイブン国王と言うものじゃ」

「ですがタイム王国は相当昔に滅んでいるのではないでしょうか、その国王がまさか、まさか、あなたは」


「その通りじゃ、わしは時のダンジョンで自らの時を生贄にする事で、永遠の命を手に入れた。そしてわしはこの時のダンジョンから出ることが出来ない、遥か昔、最強の剣士、幻の魔法使いと呼ばれたわしは何でも出来ない、予言者の話を信じて、ずっとここで待っていた。お主をな! お主に力を授ける。わしのすべてを受け取って欲しい」


「そ、そんな事、出来る訳がないではないですか、あなたが死んでまで僕に力を授けるなんて」


「わしは、もう疲れたのじゃ、永遠とも思える無限地獄に」


 僕は口を大きく開けながら、唖然の呟きをもらしていた。


「もう、疲れた。我妻、我娘、我息子、して配下たち、もうわしはそこに行きたいのじゃ」

「わかりました。あなたのすべてを引き継ぎます」


「最後に、2つ言うことがある。ディン国王は不老不死じゃ、そしておぬしも今から最強になる。ありがとう」


「結局3つじゃないですか」


 だがすでに遅しで。


 時の王ダイブン国王の体はまるで時の砂のようにぼろぼろと崩れ去る。

 彼の事を何も知らない、でも彼は僕がここに来ることを遥か昔から待っていた。

 まつ間のむなしさは、とても感じる事が出来る。

 永遠と思われるほどの時間を地下の中のダンジョンで過ごし続ける事の苦痛、僕は知っている。



 小学生の時に間違って穴に落ちてしまい、1日中出れなかった。あの恐怖を、救助隊の人が来てくれて助かった。


 でもダイブン国王は1日どころではない、

 ほぼ永遠と思えるほどの時間を。


 彼はここで暮らしていたのだから。


 ダイブン国王の知識は入ってくるが、記憶は入ってこない、


 ダイブン国王のプライバシーは守られているようだ。


【最強の剣士】【幻の魔法使い】という力がまるで電撃のように体と言う体の細胞を直撃する。僕の体は魔力と融合しているのだが、そのおかげでグリーンヒーローに変身する事もできる。それ以上にさらなる力が流れる。


 この空間は草原がある。

 そして椅子の隣には2本の指揮棒がある。

 まるで合奏団の指揮者になるような、


 魔法の使い方が分かってくる。

 それが幻の魔法使いの戦い方。


 指揮棒を2本構える。


 音楽を鳴らすかのように、

 指揮棒を振る。まず僕は合奏団の指揮者なんてしたことがない、

 それでも知恵がそれを補ってくれる。


 指揮棒を振りまくる。


 花畑たちが音楽をかなでるように。


 1人の王様を亡骸を見送るように。


 砂となった時の王ダイブンの死骸が自然に戻りますように。


 僕は涙を流しながら、なぜ涙が流れるか理解できない。


 ダイブン国王の事は今知ったばかりだというのに。


 指揮棒をふりみだす。

 沢山の音楽が流れる。


 そして音楽が終わるのと同時。


 この花畑は消滅し。

 

 僕は入り口に立っていた。


 時のダンジョンの時間では数時間、という事はこちらでは数10分と言う事だろう。


 まずネンネが抱き着いてきた。

 その暖かい温もりを感じながら、ぽんぽんとネンネの背中をたたいてあげた。


 隣では泣きじゃくるトンボ団長、


「てか爺なぜそこまで泣くんだよ」


 僕はネンネから手を離し、泣きじゃくるトンボ団長を見ている。


「わしはあなたを主君と決めました。主君が1人で暴走した時は止めると誓っておりました。それが出来なかったのです。なんたる最悪な気持ちだろうかと」


「わかったよ、今度からはトンボ団長の話を聞くから」


「絶対にですぞい、というよりかは、ヒロスケ殿、そなた化け物級に強くなりましたな」

「ああ、あっちでダイブン国王と出会った」


 するとトンボ団長とネンネは真っ青になる。


「だ、だ、ダ、ダイブン国王とは【最強の剣士】【幻の魔法使い】のあの伝説の人ですか?」

「そうだよ、その人の力を僕にくれた。僕は預言された人らしいよ」

「す、す、すごいわ、やっぱりわたしの目に狂いはなかったのよ」

「あと中には何度でも死んでも蘇る復活ポイントというものがあってな、兵士たちを鍛えるのに使われていそうだ」


「それは真ですか」

「そうらしいよ」


「でも1体の巨大モンスターを倒すのに苦労するけどね」

「なるほどですじゃ、ということは時のダンジョンの入場料を取って、冒険者とか傭兵とかを行かせればいいのではないだろうか、冒険者ならこちらの害にはならないだろうし、傭兵も微妙なラインですが」


「そこのところはトンボ団長に任せるよ」

「御意に」


「ちょっと僕は疲れたから宿屋で寝るからさ、ネンネ、寝る前の美味しい飯を食わせてやるよ」

「はい、楽しみにしております」

「わしもじゃ」


「トンボ団長もくるんかい」

「悪いですかな?」


「ヒロスケ殿おおおお、ようやく見つけましたぞ、自分はヒロスケ殿の従者であります。勝手にいなくならないでください」

「ごめんごめん、テクスチャ、うまい飯食わせてやるから見逃してくれ」

「まったく」


 僕たちは移動を始めたが、

 機械騎士団員の少年ドワーフたちは一生懸命ドラロボで地下を掘り続けていた。


――――――――――――――

時のダンジョン→宿屋

――――――――――――――


 僕たちは宿屋に到着すると、武装車両から食料をもってくる。

 確か鍋があったので、それでカレーライスを温めることにした。


 ある程度温まると、


 テクスチャとトンボ団長はフォークとスプーンを持ってワクワクしている。


 そして彼らは驚愕するのだ。

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