第69話 村が国で、国の地下にはダンジョンかよ!

 ネンネ村長はこちらをじっくりと見渡している。


「わたしはこの村の村長であり王女であります。なのであなたを婿に向かえます」

「話の展開はえーぞ、まってくれ、突然結婚て」


「あなたはわたしの事が好きではありませんか?」

「いえどちらかというとタイプですが」


 するとネンネ村長は顔を真っ赤にしながら。


「なので結婚のどこが問題なのです?」

「お前そういうキャラだったか?」


「こう見えてわたしもすごく恥ずかしいのです。勇者の血を受け継ぐものを見つけたら、それがどんな男性であろうと尽くす。それが亡き父と母に誓った言葉です」


「それは別に僕じゃなくても良いって事?」


「わたしは最初の頃そう誓ったとは思っていましたが、本当に最悪な男性ならこちらから願い下げだと思っていました。でもあなたは違った」


「最悪なほうにかい?」

「最高なほうにです」


 ネンネはほっぺたを赤くしながら、ゆっくりと立ち上がり、まるでゾンビのように歩行している。

 その歩行のスピードはゾンビだが、迷いすら1つもなく、ゆっくりとゆっくりと。


 思わず僕はネンネ村長を抱きしめていた。

 彼女も抱きしめていた。


「僕も君と添い遂げよう」

「はい」


 2人は真剣に見つめ合って、ゆっくりとゆっくりと抱きしめあった。


 僕の心の中では現在パニック状態になっている。

 こんなにも恋愛のスピードは速いものなのか?

 

 確かに一度も恋愛もした事がない、

 しかも最後に好きだと告白したのは幼稚園の時だったし、今ではもうおっさんになって人生を独身で終わらせるつもりだったし。


 その時だった。


 どたどたと騒がしい音が宿屋中に響いた。

 そして扉が開かれるのと同時に僕とネンネは距離を開けた。


「乳繰り合っている所、すまないが、緊急事態じゃ」


 そこにはトンボ団長がいたのだ。


「いいかゆっくり聞けよ、地下街を作るためにもっともっと大きくと掘りまくっていたらな、なんと遺跡が見つかった。しかも魔力を感じるんだ。桁外れの、わしはこんな魔力を感じたことがない、恐らく地下にはモンスターが」


 僕とネンネは顔を見合わせる。

 ネンネが言っていた事は本当だ。


 地下に眠っているダンジョン。


「それは時のダンジョンと申します」

「時のダンジョンとはあの伝説の王国にしかないと言われる」


「そうですこの村が伝説の王国の成れの果てです」


「はいいいいいい」


 トンボ団長がさらに唖然とする。

 

「ちょいまち、話が飛躍しすぎてるぞ」


「だってエクスバン王国が出来る前からあった国ですから、魔王との戦いで、この国は滅びましたから、村の規模になったわたし達は勇者を待ち続けた」


「もう訳が分からないが、それはとてつもなくやばい事って事だよのう?」


「その通りですわ」


 頭をぽりぽりと掻きながら、これからどうしたものかと、考えている。

 すでに地下遺跡であるダンジョンは開かれた。

 時のダンジョンがどのようなものなのかを知り、自らを鍛える為にはいいだろう。


「歩きながらでいいからネンネ、教えてくれ時のダンジョンについて」

「了解したわ」


 僕たちは走り出す。

 隣にはネンネが走っている。その隣にはトンボ団長が走っている。


「まずは時のダンジョンとは最強を目指す修行の場と言われております。時のダンジョンでの1日はこちらの時間での1時間です。よく兵士達を時のダンジョンに行かせ、生き残りをかけて修行させたりします。兵士たちは100人中70人くらいしか生き残る事が出来ないとされています」


「モンスターはどんな感じなんだ? この世界にはレベルとかいうものはないから、どの程度強いかが分からないぞ」


「ドルゴン並にでかい奴等がおります」


「なんか聞きたくなかったよ、つーかドルゴン最近見かけないなぁ」


「ドルゴンも強くなろうとしているのよ」


「そうかもな」


 現在螺旋階段を下っている。

 ドワーフの短い脚でトンボ団長は必至に走っている。

 背中に斧をしょいながらでも、猛スピードで走る事のできるトンボ団長のすごさにビビらされている。


「時のダンジョンとは最下層に何かがあると言われています。ボス説や、宝説、または何か神秘的なものがと」


「とても厨二心を刺激してくれるよ、大きさは大きいと言っていたが、ドラロボとかは入れるのか?」

「無理です」



「やっぱそうでしたか」


 僕の脳裏ではダンジョン攻略の方法で、モデルガンの事が頭の片隅を支配していた。


 モンスター達よハンドガンとマシンガンとバズーカーの餌食になるがよい。


「なにニヤニヤしているんですか」

「エロイ事ならわしが聞いてやる」

「そんなこんなで着いたな」


 螺旋階段を下り、巨大な空間に度肝を抜かれつつも、どれだけ早いスピードで掘っているのだろうかと、恐怖し。

 自らの作ったドラロボの穴掘りのすごさには驚かされる。


 目の前にあるのは、巨大な建物だった。

 その建物の大きさは巨大な煙突のような形で、至る所の突起から煙突が出ている。

 煙突から煙突から煙突へと成り立つ。

 不思議な建造物だった。


 入り口には巨大な扉があり、

 10メートルくらいの扉だ。

 僕とネンネとトンボ団長は大きな口をあけながら、その煙突状態の時のダンジョンをひたすら見ている事しかできない、あちらの世界だと1日がこちらでは1時間しか経たないのだから。不思議な現象というよりかは時のダンジョンと呼ばれている通りのダンジョンの力だと思われた。


「なぁ、今から僕がこのダンジョンに入っていいか?」

「は、はいいいいいい」

「ウ、嘘だろ、ばかものがああ」


 ネンネとトンボ団長が必至で止める。


「僕はこういう事が大好きなんだ。子供の頃からこういう探検が好きで好きでたまらなくて、テレビで流れる探検隊の話に夢中になった」


「そのテレビというのが何かは知らないけど、あなたがここで死ねば何もかも終わりよ」


「そう簡単には死なないし、死ぬつもりもない、なぜなら、僕にはこれがあるから」


 リュックサック、僕はそれを常備する事としていた。

 そしてリュックサックの中には、沢山のBB弾があり、右腕と左腕にはハンドガンとマシンガンを、足にはバズーカを装備しているのだ。


「や、やめてくれええ、この馬鹿をとめろおおお」


 トンボ団長が僕にしがみつき、ネンネは爆笑しながら。


「がんばってきなさいあなた」

「ああ、ネンネも頑張れよ」


 

「後生じゃああああ、この馬鹿をとめろおお」


「ちょっとごめんな」


 僕は思いっきりトンボ団長をひっぺがすと、放り投げそのまま時のダンジョンに入る事となった。

 巨大な扉はフェイクで、そこは何もない道だった。


 中に入った瞬間、虹色のオーラに包まれた。

 次の瞬間、ワクワクが止まらなかった。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る