第35話 エクスバン国家
メイルというドワーフの姫様は姫なのに率先してワイバーンの解体作業を教えてくれた。
髭もじゃのベピィーと髪もじゃのリフィーは新しい敵が来ないかを見張っている。
「ヒロスケ殿、まずは頭を切断するのです。でないと解体作業中に火袋が爆発します。火袋は胃袋の中にあるとされますが。ワイバーンでは顎の部分にあるとされています」
「へぇ、頭から両断かぁ、グロイね」
「それが生きるということです」
それからメイル姫の解体作業は続いた。
僕に解体作業を教えながら、メイル姫は一切嫌な顔をしなかった。
この時代だと王族というイメージでは、
少し鼻が高い状態になっているものかと思っていたのだが。
それは違うようだ。
僕は見様見真似で解体を覚えていった。
「ふぅ、これで解体は終了、ワイバーンの火袋と鱗など、あとは肉の部分とかは買い取ってさしあげますが、どういたしますか?」
「改めてお願いします。それとお金はいりませんので、代わりに交易をしたいのです」
「だからそのような見た事もない乗り物と荷物があるのですね」
「その通りです」
「それはわたくしの一存では決められませんが、心の目で見た限り先程も言いましたが大丈夫でしょうが、父様に会いに行こうと思います。一緒に来ませんか? ヒロスケ殿、ドワーフ王国の道案内ということで、素材が欲しいのですが」
「全然かまわないよ、解体の仕方を教えてもらっただけでも、お金が発生すると思うし」
「かたじけない」
それからメイル姫とベピィーとリフィーはサイノスターに鞭をうって、ドワーフ王国に目指すことに、
その隣には僕のフェイブマックスXが走行する。
スピードはゆっくりと移動しながら。
馬車の窓からメイル姫が顔をだして談笑してくれた。
僕の肩には眠たそうにしているドルゴンがいたのだ。
ドルゴンは大きな欠伸をしながら、口から火を噴いていた。
「ドワーフの王国はエクスバン国家と呼ばれておりますわ、父様はとても聡明な方なのですが、少し天然が入っているのです。多めに見てあげてください、あとエルフ王国のことをセルフィール国家と呼びます。覚えておくといいですわね」
「なるほどな、勉強になるよ、あと気になったのだが、メイル姫の父上である王様は人間が大嫌いと聞きましたが」
「その通りです。ですがわたくしの心の目が反応してあなたなら大丈夫です」
「よければなぜ人間が嫌いか説明してくれないかい」
「それはいいですわね、しばらくの行程は暇ですからね」
僕はフェイブマックスXを上手く操縦しながら、
馬車の窓から顔をだす。小さくて魅力的なドワーフの姫と話をすることとなった。
「ディン王国はドワーフに交易を持ちかけました。そして彼らはドワーフ自体を奴隷にしました。奴隷にしたドワーフたちはディン王国の山で鉱山奴隷として働き続けているのです。今も。なぜ人間は自分たちで自分たちの仕事ができないのか? ドワーフだと奥深くまで掘ることが出来るからと、ならなぜそれを踏まえて交易にしないのかと。すると人間はこう言いました。奴隷のほうがお得だし、ただで働かせることができると、ドワーフたちの気持など考えもしないもの、なぜそう考えられるのかと、そしたら人間たちはドワーフは人間じゃないからだと告げたのです」
僕は頭が痛くなる思いを感じていた。
これでは昔の人類が黒人を奴隷にしていたのと変わらないではないか、
人間のたどる間違った道はいつもいつも同じなのかもしれない。
「僕と交易をしてくれれば、奴隷となっているドワーフたちをなんとかできるかもしれない」
「それも心の目で見ています。あなたなら出来ると」
「なんだか心を覗かれたようでむずむずするけど」
「安心してください、どうやって助けるかまで見えていません」
「それってさ、根拠ない断言じゃん」
「そう思ってくれて構いませんわ」
それから数時間は会話をしていたと思う。
道なりは山道をひたすら突き進む感じだった。
山道には道らしきものはないが、
獣道のようなものが無数にある感じなのだ。
時たまドワーフが造ったのか簡易的な道は見つけることはできた。
「ドワーフの民とは道を作るのが下手なのです。ひたすら穴を掘っているほうが向いている種族ですから」
「僕はドワーフとエルフとその他の種族と繋がる交易の道を作ろうと思っています」
「そのようなことはできると思います」
「やはり」
「そう心の目です」
僕は頭をぽりぽりと掻きながら。
「そのために最初はドワーフたちに協力を求めるかもしれません」
「それもご安心ください」
「つーかどこまで話を予測しているのさ」
「すべてです」
メイル姫はにやりとほくそ笑み、空を見上げている。
窓から見える空はとても気持ちがいいのだろう。
「さぁ付きましたわ」
そこには何もなかった。
「ではようこそドワーフ王国の1つであるエクスバン王国へ」
地面が盛り上がってくる。
まるで魔法のように盛り上がってくる土は、
巨大なゴーレムであった。
ゴーレムとゴーレムが合体しあっている。
亀のような巨大なゴーレムがそこにはいたのだ。
それは山自体が亀ゴーレムなのだと。
「これはタートルゴーレム、エクスバン国家を守る守護神なのですわ、さぁ中に入ってください、タートルゴーレムの体内に作られた国が、ドワーフ王国なのです。そして人々はそれをエクスバン国家と呼ぶのですわ」
僕はびくびくしながらタートルゴーレムの巨大な口の中にと招待された。
サイノスターを操るベピィーとリフィーは何ら抵抗もなくタートルゴーレムの中にと入っていく。
僕とドルゴンはタートルゴーレムの頭を見て、
少し恐怖を感じながら、
その口の中へと入っていく。
しばらく松明の世界となっているが、
フェイブマックスXを走行させながら、
大きな広間に到達した。
そこには無数に光の照明みたいなものがある。
しかしその照明は生き物のように飛翔している。
よーく見たら蛍のような機械であった。
なんと人間の照明より文明が発達しているようだ。
移動型の照明ができていたのだから。
沢山の建物、タートルゴーレムの中だとは思えないその光景に、
圧倒されつつも、
沢山のドワーフたちが背の高い僕を見つけて恐怖に取りつかれたように、逃げていくがサイノスターの馬車からメイル姫が下りると彼女は僕の隣に立って歩いている。
フェイブマックスXも両手で押す感じで、メイル姫と色々な会話しながら巨大な城に到達する。
ここからは王様と話をすることとなるだろう。
そこで僕は人間とはどういう生き物かを再認識してもらいたいのだ。
沢山のドワーフたちが王城に入ってきた僕を見てひそひそと話をする。
衛兵にいたってはこちらに攻撃しようとしてきてドルゴンに威嚇されるも、メイル姫が説教を始めてしまった。
僕たちは説教が終わると、その巨大な扉と向かい合っていた。
あっちにはメイル姫の父親がいる。
「失礼しまーす」
ごく普通に扉をあけたのは、
メイル姫だった。
「ちょ、心の準備があああああ」
僕の断末摩が響いた。
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