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「そう言う訳じゃ、お主には悪いが……」


 おじいさんは狸を仕留めようと、持っていた火縄銃を構えます。流石にこの状況で冷静でいられる動物はいません。命の危機を察した狸はすぐに逃げ出しました。


「バ、バカヤロー! 食われてたまるかよっ!」

「あ……っ」


 すぐに射程距離の範囲から離れてしまったので、おじいさんは銃を降ろします。仕方がないとばかりにおじいさんが困り顔で女の子の顔を見ると、その顔はカンカンに怒っていました。


「何やってんだよ! 早く追いかけて捕まえてこい!」

「ええ~っ?!」


 おじいさんはこの無理難題に対して動くのを渋っていると、すぐに女の子から蹴りが飛んできました。


「早く行けってんだ!」

「はいはい、分かりましたよも~」


 じいっとしていると更に攻撃が追加されそうだったので、おじいさんは焦って逃げた狸を追いかけます。メタボな体型とは言え、そこは野生動物。おじいさんがちょっと走ったくらいでは狸には追いつけませんでした。

 それでも頑張って走っている内に、おじいさんは狸を見失ってしまいます。それはもしかしたら狸お得意の幻術だったのかも知れません。


「あれ? ここはどこじゃ?」


 いつの間にか道に迷ってしまったおじいさんは、その後も当てずっぽうで歩きます。やがて辿り着いたのは、人の往来も賑やかなどこかの街でした。



https://kakuyomu.jp/works/1177354054894124932/episodes/1177354054894205436

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