黄泉郵便局
影神
手紙
あなたはきちんと相手に
想いを伝える事が
出来ているだろうか?
人間の時間は短い。
明日、明日と来るかわからないものにすがって、
そうして毎日を過ごす。
来週こそは、来月こそは、来年こそは、、
そうして思い立った頃には、
相手が死んでしまっているかも知れないし、
同じく自分も死んでしまっているかも知れない。
世の中には伝えなくてもいいことや、
伝えなくちゃいけない事が沢山ある。
それは全て自分のさじ加減にもよるが、
大体は相手の理解力によるのだろうか。
もしも、どうしても、死んでしまった相手に
想いを伝えたかったらどうする?
その筋の者とやらに降ろしてもらうか?
仮にそうできたとして、
自分が寝てる時に相手の都合で起こされたら?
もしくは半強制的に連れていがれたら?
私は勿論嫌だ。
あなたはどうだろう?嬉しいかい?
この世界には手紙と言うものがある。
これはよくも悪くも、
時代として忘れ去られてしまうものである。
文明が発達して、今や文通というものは、
過去の物となってしまった。
手紙というのは自分の字で、心を送るものだ。
だから、気持ちが伝わりやすい。
むしろ、手紙というもの自体に、
そういった能力のようなものがあるのかもしれない。
だが、現代人はそれを忘れてしまった。
伝える事、それらがめんどくさいからだ。
何とも愚かな行為だろうか。
でもまあ、歳だけ無駄にとって、
中身がない大人が増えてしまっている今や
仕方のないことなのかもしれない。
争うよりも、距離を置いて関わらないのが楽だから。
世はいつまでも心が成長出来ない輩が増えてしまった。
一本筋が通った人間というものは絶滅しかけている。
でも本当は話したい相手、伝えたい事が今あるだろう?
それが手紙でしか伝えられなかったら?
手紙で、やり取りが出来たら?
これはそんな話。
手紙は時に黄泉よも届く。
亡くなった人と話が出来るかって?
それが、実は出来るんですよ。
丑三つ時に、自分の想いを書いて郵便ポストに送る。
書き方は自分の名前、想いを書く。
切手はいらない。その代わりに自分の血で指印を押す。
それと、一番大事な相手の名前。それだけ。
そうすれば、強制的に私の所に届く手筈。
亡くなった人はなんて返すかね?
恨んでいるかな?喜んでいるかな?
私の仕事はそういった手紙を受けたり送ったりする事。
ある文通を少しだけ内緒で紹介しよう。
始めに言っておくが、きちんと想いがあって、
伝えようとしなければ無論相手には伝わらない。
普通の手紙で切手を張らなければ返ってくるのと一緒。
手紙だけではなく、言葉等でもそうだがね。
その他の者は、被るのでここでは省く。
これはある少年と親のやり取り。
少年「母さん?これが届くかわからないけれど送ります。
俺はろくに親孝行も出来なかった糞息子です。
あなたが俺のこと、息子だと思ってくれてるか、
それも分かりませんが、本当にごめんなさい。
ろくな、息子になれなくてごめんなさい。
迷惑ばかりかけてごめんなさい。」
親「手紙ありがとう。
私はあなたとは合わなかったけれど、
それは私が大人になりきれなかったから。
母親として、あなたを息子と呼べるか正直分かりません。
あなたが他人に迷惑をかけた事は許される事ではありません。
ですが、きちんとそういったことを教えてあげられなかった
私のせいでもあります。
私は先に行ってしまいましたが、あなたは残りの人生、
生涯それを背負い、きちんと認識しなければなりません。
いくら悪いことをしてもあなたの母親であることは
変わりないし、それと同様、あなたは私の息子です。
しっかりと食べて、沢山人の役に立って。
誰にでも優しくし、沢山の人に好かれなさい。」
少年「母さん、会いたいです。
出来ることならはじめからやり直したい。」
親「あなたの親になれたことを恥じません。
もう、一緒にはいられないけど。
また会えたとしたら、一緒に仲良くご飯を食べましょう。」
まあ、何とも泣ける話ですね。
まるで何かの映画のよう。
私は親と言うものがよく分かりません。
何せ居ないので。
気付けばこの仕事をしていました。
でも、もう少ししたら手紙は無くなり、
私も居なくなるかもしれません。
生きてるうちにしか出来ないこと。
謝罪や、感謝を述べること。
難しいようで、一番大切なこと。
今ある今は当たり前ではないのですよ?
そして時間は永遠ではありません。
あなたは今ちゃんと伝えたいこと、
伝えられていますか。
生きてるうちにできるだけできることを、
黄泉郵便局 影神 @kagegami
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