リアルファンタジーはメルヘンなんかじゃねぇよ!

天野

第1話 騒がしい誕生日

最近テッパン王道になってきた異世界転生やら転移チートやら、魔物転生、乙女ゲームの悪役令嬢ざまぁ、過去トリップ歴史改変やら新撰組系と、大人になっても変わらずゲーム同列で好きで(可愛いケモミミっ子とか特に)、よくスマホで暇潰しに読み漁っていたラノベな話が、ここ最近ネットや書店で溢れかえって、もうお腹いっぱいな展開に飽きてきた昨今。


実際に今、自分が体験して置かれてるこの状況に・・・・・戸惑う。


そう、なんと今!俺は赤ちゃんだ!

ビックリ!するよ!(え!?)って!!


ぷにぷにした赤ちゃんの手が、感覚で自分の手だとしっかり理解してからがパニックだ。


どうしてこうなったのか、思い出せない。

記憶がなかなか整理できない。

それに!!


わーわーと、なんか周りは騒いでいるようで五月蠅いし!


視界はぼんやりしていて見えにくいが、大きな人が近くに何人かいるし、虫より大きなのがあちこち激しく飛び回ってるのはわかる。


だがなんて言っているのか、聖徳太子じゃないんだから、みんなの話1人1人、いや、一匹?一匹?の話を聞き取りにくいくらい騒がしいが、みな喜んで騒いでいる、らしい。のがしばらくしてなんとかわかった。


どうやら俺の誕生がうれしい、とか。

聴こえてくる。

だーけーど!


目の前の、飛び交う妖精たち?がうじゃうじゃで!!

顔に貼り付きあちこち(口以外)チュッ、チュッ、っとキスしていくやつまでいる。

それいいから!やめい!

面白がるな!やるな!俺で遊ぶな!!


つーか!逆ギレしそうだわ!!

喧しい!騒ぐなッ!!


あ。静かになった。

心の声が伝わってなりより。え。心読めるのかな?

ん?違う?精神感応?ほー。すごい。

以心伝心ありがたや。


たくさんの小さな小さな声で謝られ、嫌われたのでは、と戸惑いの感情が伝わってくる。


いや、嫌ってないよ。うっとお、いや違う。煩かっただけだよ。

泣かないでねー。だぁー!煩い!大合唱かよ!

あぁほら泣くなー?よしよし。

手がちっさいんだよ、俺のもみじの手。

手首のくびれ。上手く動かん。難しいな。


いやしかしメルヘンだわー。

夢落ちだったら、なんてリアル。


え。現実?やっぱ転生なんだ?


お姉さん、お兄さん?精霊なんだね。顔を近づけてくれるとよくわかる。

人間離れしている目だし、造形がもう、彫刻以上にあり得ないくらいに綺麗で光の金粉まいてんの?くらいにキラキラでマジで美しい。


部屋にいる人たちが普通の人間で外人さんだよね。


妖精て。精霊て。ファンタジーじゃん。と夢だと半ば本気で思ってたのに、これが現実て。


おわ。俺、《異界神イデア様》って神の、《愛し子》?なんだ。

《愛し子》って。ナニソレ。しらんがな。


魂が偶然異界から異界へ渡ってきた貴重な存在なんだ?へー。

この国の初代王が転移してきた日本人だったの!?ほわ!!


そしてなんとなんと!

妖精や精霊の存在にふんふんと話を聞きながら実感していると。

メイドみたいな服装の外人少女が中二病丸出しな呪文を唱えたら、ぼんやりした目でもとらえたよ!

その手から水の玉が出てきて!桶を満たし、俺の身体は洗われて。

もうね、リアル魔法少女だよ!魔法少女!


魔法が使われてビックリ!&周りには絵本に出てくるような可愛いメルヘンな妖精たちや美しすぎる精霊たちが四六時中騒いでるしでリアルだし。


しかも!俺!

みんなの話をまとめると、この国の正妃の待望の!唯一の子で第1王子!

転生王子様キタコレ!ナウ☆である。


あぁ、もうみんな、煩いな。もちっと静かにね!

この耳、よく聴こえ過ぎるんだよ!

感情のコントロールが難しくて、赤ちゃん特有のギャン泣きする。

周りが慌てる慌てる。


騒がしさが耳が痛いし頭が痛いし、胸が、心臓まで苦しくなってきて苦しくて、苦痛しかなかった騒音をなんとかシャットダウンしたくてもがき続け、頭を抱えたい、耳をふさぎたいと、自分の耳に、内側にギュウッ!っと押し込めた感覚がして、ピタッっと騒音は止んだ。



穏やかな声だけがちゃんと言葉として耳に届くようになった。

魔力と神力ともどもいっしょくたに下級の数多いる精霊たちの声を遮断し押さえつけ封印したらしい。

すごいぞ自分。

小さい子にはごめんけどホッとした。


◇◇◇


そうして月日は流れ。

生後4ヶ月も経てばいやでもわかる。

自分の生まれの立場や周囲の状況が、赤ちゃん(俺)以外いない部屋での会話や独り言を聞き集めれば、嫌が応にも理解できた。


記憶の始めを思い返す。

あの長い時は胎児状態で、ずっと人の話し声が途切れることなく騒がしかった声は、精霊や妖精たちの声だったんだと、産まれてから理解し愕然としたものだ。


誕生し、空気が肺に初めて入った時、光の洪水が閉じた瞼越しに溢れ驚く。


文字通り、黄金色の光が室内に溢れたのだ。

そして俺の右手の甲には光の聖霊文字聖印が刻まれてた。


後日耳かじった話では、周りの大人たちは「光の聖霊様の祝福だ!」「聖印が!」「光の聖霊様が殿下のお誕生をお喜びに!」と大騒ぎになり、すぐさま俺は俺を産んだばかりの王妃から抱かれることなく、初乳をもらえぬまま離され別の部屋へ。

急遽宮廷魔法師長である白髭おじいさんが呼ばれた。


本来ならみな、3歳になる日に神殿にて魔力判定は行われるが・・・・。


待望の第1王子だし、初代王妃であった光の聖霊王の祝福を受けたとなれば再び精霊の視認、存在の確定、王国が聖王国たりうると、聖霊の守護はまだ受け継がれていたのだと外国への体面、王宮中希望が溢れ、騒ぎになるのは必然で。


だが結果は。


「・・・・・ダメです。何度お調べしても殿下に微量も魔力を感じられません」

「っ!で、では!《魔力なし》だと言うのか!?

光の聖霊様の祝福があったのだぞ!!」


若き王は唾を飛ばす勢いで、王宮筆頭魔術師長に食らいつくように迫った。



「・・・それをふまえての慈悲による祝福かもしれませぬ・・・。

こればかりは聖霊様に真意を問わねば解りかねます」


「・・・しかし真意を問おうにも、最早初代王と光の聖霊妃様の血は薄れ、今や王族から誰1人として精霊と言葉を交わすものも視認できる力がある者もおらぬ!」


悔しげに歯噛みする王。

この人が父親かぁ。と、ベビーベッドから見上げる。


うん、さすが王様。イケメン!

これが俺の父!


(俺は見えてるよ~。たぶん、魔力あるよ~。

ギュウギュウに自分の内側に抑えちゃっただけだよ~)


「あう!あう!ぶぅ~・・・・!」


『まあ!レイフィル可愛い♪』

『最高神ラウル様に匹敵するくらい魔力があるのに、これがわからないだなんて、無能ね!』

『レイフィルを害するつもりなら、容赦しない』



色々上級中級精霊たちの会話がおっとろしぃデス。


あ、俺の名前ね、《レイフィル・ササモ・ト・ル・アルファルド》。




いやね、俺を産んだお母様(王妃サマ)が小さく呟いたんだ。


「魔力が微量もないだなんて・・・わたくしの子じゃないわ。

精霊にとりかえられたのよ・・だからわたくしの子じゃないわ・・・」


病んだ!?

ひくわ!!


それ確実に聴いた精霊たちが怒ったんだ。

で、部屋の中の温度が急激に冷えていったんだけど、必死に止めたさ!!もうね!

必死に!!


この体はまだ弱くて小さくて、みんなの力ある声を上手く受けとめきれなくて、必死になって思わず力任せに魔力や神力もろとも全部内側に封印しちゃったけど。


おろおろ狼狽えて心配してたら、精霊たちが。

ある程度成長したら自分たちが補佐して解放させてあげるから大丈夫だと説得。

だが周りの大人たちはそんな事情知らないから、しっちゃかめっちゃかで。




4ヶ月経った今の現状。

さてさて。

悲運の王子様の運命やいかに!?



『『『レイフィルに害するなら容赦しないから!』』』


だからやめたげて~!!!

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