サラリーマンの話。

じょんぼぬ

第1話 残業

「...ふっ...くくっ.......」


広いオフィスで、椅子にもたれ、背伸びしてる男が一人。

ひとしきり伸びたあと、彼は椅子のロックを解除し、背もたれを倒した。


「だぁ〜〜〜....」


気の抜けた溜息が響くとともに、背もたれが倒れ、椅子がぎしっと軋む。

ぐでっと椅子に体を預けて、目をつむる。



「このまま寝れそう...」


公衆の場にしてしては、いささか行儀が悪いような気もするが、彼以外にオフィスには誰も残っていない。


時刻は21時を回っている。

いつもなら、まだ残業している人がチラホラいるが、今日は金曜日で、みんな飲み会やら何やらで早めに帰ってしまった。


オフィスが貸し切りになってもひとつも嬉しくはない。

ただ、人がいないことによって、仕事はかなり捗った。

勤務時間じゃなければ、だいたい外部から電話がかかってくることもほとんどない。


終わりまでは、まだかかりそうだが、もうちょっと頑張れば、ひと段落つくだろう。


体を少し起こし、デスク上の飲みかけのコーヒーに手を伸ばし、ぐいっと飲み切る。


「......美味しくねぇ」


空になったカップを机に置いて、再び目を閉じる。


あと、もうちょっと頑張れば、土日は出社しなくても済むだろう。

そうしたら、久しぶりに実家に顔を出そう。

実家の猫を可愛がるんだ。

途中までしか見てないあのアニメも全部見よう。

天気が良ければドライブに行くのもいいかもしれない。



「よし...」


彼は椅子を起こして、休日を勝ち取るために再びキーボードに向かうのであった。

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サラリーマンの話。 じょんぼぬ @john_ogui

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