第5話 脳内会議

そんな毎日が、自分の心境に変化を与えてたんだ。

頭の中で、なにいってんだか。

僕という人間は、そんな優しい人間ではなかった。

ひねくれてたんだ。

いやいや、元からひねくれてた訳じゃないよ?

あ、でも、逆に純粋すぎてさ

黒い色に染まっちゃたんじゃないかなって

あぁ、何言ってるかわかんないよね。


高校時代に、運転免許を取りに行ったんだ。

真面目すぎたんだろうね。僕。

バックが怖かったんだ。後ろに進むの。

だから、親や友達に、コツを質問したのさ。


そしたら、みんな口揃えて何て言ったと思う?


「感覚」だって言ったんだ。

僕は、ビックリしたんだ。

だってさ、車だよ?

人を轢けば、殺せる。

命を奪えるんだよ?

それを、みんな感覚で運転してるんだよ?


怖さは加速したね。


だからさ、プロフェッショナルに聞いたの。

教習所の先生に。

先生に。


バック駐車の際、後ろの三角窓とポールの位置で判断してますが、

実際の路上では、ポールはない訳です。

何をみて、距離感等を判断したらいいのですか?

って


すると、なんて帰ってきたと思う?

先生だよ?先生。

「テストではそんなの出てこない。

そんなの気にするな。

私は、テストで受からせるために教えてる。

どうでもいいだろ」


少し強めに怒られたんだ。


その時に、高校生ながら僕は、

「社会に妥協した。」


そんなものか、社会って。

自分だけ、良ければいいのか。


人を殺せる道具でも、「感覚」で運転し、

練習とか言いながら「失敗」すれば「責任」が降りかかり、

周りからみれば小さな問題、気になって質問しても、怒られる。

「疑問」には「叱り」


矛盾しすぎて、

「妥協」に陥った。


それでさ、僕も社会に出たんだよね。

出てさ、

「他人を蹴落としてまで、上に上がろう」

って考えで、いたんだよね。


こう考えると純粋故に、黒色に染まったのかもね。

あと真面目すぎた。よく言われてたな。


社会って、優しくはないって分かってはいたけど、

実際に出会ってみると、どす黒かったね。


故に

「大人っぽいね。落ち着いてる」って言われる。

不瀬という人間が、こんな小さなことで、こんなにも悩み、こんなにも影響されていることを知らず。

落ち着いてる?バカらしい。




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