嘘でしょ


と、朝のテレビのニュースを見て呟く沙羅。

そこに映し出されたのは、まさかのものであったからだ。



『この度、海軍の厚木基地近くの地面を調査中に、不思議な書物が発見され・・・・・・どうやら学校の教科書のようなものでありますが、その内容は我が国が第二次世界大戦の敗戦国となっていたり・・・・・・』



「あれ、前世の歴史教科書・・・・・・あれを持ったまま転生してきた?でも死んだ時に棺に入ってた物でも転生する時に・・・・・・てか教科書なんか入れんやろし、私や村松さんとは別ルート・・・・・・あの杉下さんのパターンならあるのか・・・・・・」



考えを巡らせつつ、学校へ行く時間になったので慌てて支度して出かける沙羅。

学校へ着くと、みんな今朝のニュースの話題で持ち切りである。



「あれさ、本当なんなんやろな」「それっぽく見せたイタズラだろ」「ばってんイタズラにしちゃ手込みすぎって」「本当に異世界から来とったりして」



そんな会話を沙羅は何か新鮮な気持ちで聞き流す。事情を知る俊弥と実咲ら沙羅と仲が良い者達は、察しがついていてあまり騒がない。



「沙羅、あれ前世の歴史教科書でしょ」



実咲は騒ぎはしないが、興味津々の様子である。



「そうよ、何でこの世界に来たんかは知らんけど」



「でもちょっと見てみたいなあ」



「教科書なんてどこの世界でもつまらんもんよ、ねえ俊弥」



「何でそこで僕に振るかな」



「だってあんた、野球脳は高いくせに勉強はからっきし、歴史は特にでしょ」



「それば言わるっとなあ・・・・・・ばってん、僕も見てみたいな、沙羅の前世の事、話しか聞いとらんし」



実咲もそぎゃんよね!と頷く。



「実際見てみたらこぎゃんもんかてがっぱすって(がっかりするよ)」



「そぎゃんかねえ」



そして、この日もいつもの様に授業を終え、その帰り道・・・・・・やはり、俊弥も実咲も出土した沙羅の元々の前世の教科書の事がずっと気になっていたようである。



「私思ったっちゃけどあれ持ち主と転生してきたんかな、それとも物だけ転生するって事もあっとかな、ねえ沙羅」



「知らんよ、一応携帯に世界研究庁から電話はあったばってん・・・・・・」



世界研究庁は、SI情報のSIことエリザベス元合衆国大統領=沙羅の素性を知った日本帝国政府(当時)が、その転生の際の話を聞いて設立された、世界中の非科学的な事象を研究する為の組織である。

これ迄の研究ではあの世と呼ばれる世界の観測に成功したとか、死者の御魂との通話に成功したとか等と発表はされているが、多くの国民からは眉唾物として捉えられている。

そして、今回の件に関して政府は、沙羅が何か知っているかもとの話になり早速電話が来たのである。その電話の内容は教科書のデータ化したものを送るので、見て欲しいとの事であった。



「データ化とか出来るんだ・・・・・・って速っ、もう画像データ来とるし」



俊弥と実咲が沙羅の携帯画面を覗き込む。



「おお、これが沙羅の言う前世の日本の歴史教科書か」



「平成22年度・・・・・・あ、名前書いてあるね、2年5組3番・・・・・・3番って何?」



俊弥の疑問に沙羅はハッとする。



「そっか、この世界の学校じゃ無いねそういや、これね出席番号って言うて、前世の学校だと五十音順とか誕生日順で番号付いとったったい」



「へー、名前は・・・・・・え?」



俊弥は実咲と目を見合わせる。

その教科書の裏表紙に書かれた名前が、今正に自分達の目の前で携帯電話を開いているその少女の名だったからである。



「あ、これ私の?!確かに前世の中2ん時5組だったけど・・・・・・」



「じゃあこれ本当に物が転生したって事?」



「実咲ちゃんの推測当たっとるやん」



「えー・・・・・・」



何でやと頭がいっぱいになる沙羅だが、世界研究庁に対し、ひとまずこれは前世の自分のもので間違いないが、返してくれなくてもいいし、存分に色々ネタにしてくれと返す沙羅であった。




































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