防人娘の見た夢は

侑李

幼少期編

再転生



 とある世界線の米国史上初の女性大統領エリザベス・ジョンストンとして20年生き、最後はピストルで頭を撃ち抜いた沙羅。しかし彼女はまた完全には消えず、その魂は再び霊魂管理局のとある神の元を訪れる事となった。



「私が死ねないってどういう事?」



「それなんですけどあなたね、世界中のどんな人よりも生への執着が凄まじいんですよ。こうなると流石にこちらとしても、簡単に成仏というか消したり?私達と同じようにさせたりするわけにもいかなくて」



「でも元々の沙羅、私の体はバラバラでお父さんお母さんに会うにも・・・・・・」



「さすがにそれは覚えてましたか、そこですよねえ。元々の世界にそのまま帰す事は絶対無理ですし」



「でしょ?で、今回も転生コースとかあんの?」



「あー、あるにはあるんですが、前回と似たようなのばっかりなので」



「じゃあいいや」



「そうですか。あ、そういえばあなたが今まで居た世界線の2020年代くらいまでを見たら、あなたに似たような子を見つけたのですが」



「え?でも自分には・・・・・・って、あ!」



「そうです、抜け道はあるって言ってたじゃないですか。完全に元の本人じゃなければいいのですよ。それで、どうします?」



「その子に・・・産まれるとこから・・・・・・」



「成長した状態でもいいんですよ?第二次大戦時の米国大統領の記憶を持つ少女とか怖いですし」



「いいから!で、その子の名前は?」



「あなたと同じ、井浦 沙羅ちゃんです」



「!!」



「因果って凄いですね。じゃ、決まったし行ってらっしゃーい。今度は無事に天寿を全う出来るよう祈りますよー!」



 そして、再び暗闇に落ちていく沙羅。



(次に目覚めた時は赤ちゃんか・・・・・・ふふ、まあ今までより断然いいわ)





 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



 平成8年 5月 大日本国 熊本県熊本市 某産婦人科


「産まれましたよ!元気な女の子です!」


「よくやったな!」


「はぁ・・・あなた・・・やったわ・・・・・・」



(ん・・・目もよく見えないけど・・・・・・私、ちゃんと泣いてるよね?・・・・・・)


 沙羅はエリザベスの体を経て、再び沙羅として転生した。

 数年後・・・・・・・・・




 平成11年 4月



「沙羅ちゃんももう幼稚園かぁ」



(二周目・・・三周目か、だけどね。それにしても、本当にお父さんもお母さんも前世とそっくり。やっぱり転生してよかった)



「沙羅ちゃん?どうしたの?」



「あっ、ううん!さらね、よーちえん楽しみ!」



「そうね」



(子供らしい喋り方とか意識した方がいいなあ)



 この世界の、沙羅の、これからの歴史は分からないが、ひとまず回り道したものの、家族の元に帰れた事に安堵する沙羅であった。













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