第20話

 夏緒がボクにこんな話をした。

 昔、偉い人が病んで、仕えていた夏緒の祖父を呼び寄せ、自分が亡くなったら兄である先代の子どもに継がせるようにということを頼んで

「先代が、自分の子どもより先にわたしをたてた恩は忘れることができません。もしあなたのおかげで無事にあの世に行けても、兄の子どもをたてないと、あの世で兄にどう言ったらよいでしょう。どうか兄の子どもにわたしの後を継がせてください。

そうしてくれるなら、思い残すことはありません」

と、言った。

 夏緒の祖父は

「ほかの連中かたがたは、あなたの子どもをたてようと言ってます」

と、返すと偉い人は

「それはダメです。兄の恩を捨ててしまうことになる。あなたはどうかそれをなされますように」

と、答えた。結局偉い人の後は兄の子どもが継いだ。




「まあ、本人は良かったろうけど、後々エライことになっちゃったんだよね」

「ふうん」

「さて、どうすればよかったのかな?」

 夏緒は小首をかしげながら、そう言う。

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