第12話

 ある時、聖者がどんな魚でも、ワニでも、スッポンでも泳げない急流を見に行った。しかし、そこを泳いでいる猫があるではないか。聖者は、こう尋ねた。

「こんな激流、よく泳ぎ切ったにゃあ。鬼神ひとなさざるものとあやしんでしまったにゃ。なんか秘訣はあるにゃ?」

 猫は笑ってこう答えた。

「ないですにゃ。しいていえばに逆らわないことですにゃ」

「そこを詳しく教えてほしいにゃ」

「わたしはこの土地に慣れ親しんでいますにゃ。つまりは環境に慣れて、天性ににゃったのですにゃ。今はただ運命に従ってるだけですにゃ」

と、そう言うと、また急流に飛びこんでいった。




「なに、どういうことよ?」

 今回はオセロで挑んできた少女は、このたとえ話に、こう訊いた。

 夏緒はこう返す。

「流れを読めば、おのずと答えはでるってこと。こんな風にね」

「ああ、そこに置いたら黒ばっかになるの?」

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