第137話 そりゃ残念やわ

リンディエールが遊び場としている離宮。


そこに、ケフェラルの王達を連れて再びやって来た。


ケフェラルの方も隣国とはいえ、安全のためにかなり迂回してやって来るため、それなりに移動時間、日数がかかる。平均では王都からここまで約七日といったところだ。


よって、数少ないとはいえ、護衛達や侍女達も疲れているだろうということで、シーシェと同じように王と王子、それと側近一人だけを連れて集まった。


「こうなると、うちが居るんが妙やなあ。こっちも王子出すか?」


二国共が王と王子のセットを出して来ているのだ。ここにこの国の王子だけ居ないのは妙な気がした。


「いやあ……もうこの場に集まってる時点でちょいおかしいからな?」


そうブラムレース王が今更だろうと、少し声を抑えて切り返してくる。


これに、王達は笑った。


「それもそうだっ」

「この場に連れて来るのが酷であろう」


異常なのはあちらも分かっているということだ。


「ん〜、まあ、そうか。なら、話を始めよかっ。まず自己紹介やなっ。こっちがブラムレース王や。そんでこっちが、宰相の……」

「クイント・フレッツリーです」


次にシーシェ。


「で、この超絶美人な姉ちゃんが、シーシェの女王様やっ」

「ふふっ。アーネストだ。これが息子のアリスレア」

「シーシェはなんや、女の方がカッコええ名前になるなあ」


これはこの場の誰もが思ったらしい。名前が逆ではないかと。


しかし、これはシーシェのお国柄だ。


「寒さが厳しいのでな。女児は勇ましく男にも負けないよう育つように。男児は無茶をしないよう、少しお淑やかになるようにという願いを込めて、他国とは男女逆の名になる事が多いのだ」

「は〜、なるほど」

「まあ、私は勇ましくなり過ぎだと、子どもの頃から言われ続けておるがなっ」

「なんでやっ。カッコええやんっ」

「うむ」


本人は大変気に入っているようだ。


「これを知らず、我が名だけで男と判断してやって来た者共が、戴冠当初は面白くてなあ」

「それっ。それ最高の遊びやんっ。見たかったっ」


名前だけで、普通に王様が出て来るかと思いきや、キラキラの超絶美人が王として現れるのだ。理解した時、献上品の選択はどうだったかとか、色々頭を駆け巡るだろう。その反応も面白そうだ。


「そうであろう。だが、最近はさすがに女王の国としても知られてしまったのでな。面白い反応が見えず残念だ」


『シーシェの女王』として広く周知されてしまったため、ほぼもう間違える者は居ない。


「そりゃ残念やわ……こんな美人さん隠せんし……っ、せや! 逆に男装したらどや! 大混乱させられそうやん?」

「む……それは……っ、楽しそうではないかっ。是非ともやってみようっ」

「付き合うでっ」

「うむっ」


そんな様子を面白そうに見るアリスレア王子。多分、彼もこの女王と中身はあまり変わらないのだろうというのが、見ていて明らかだ。


そして、苦労するのがクロウというわけだ。


「……なんで……なんで私は一人で来てしまったのでしょう……一人で二人……いや、三人を止めるなんて……ムリ……」


どこまでも苦労性な人だ。


「わははっ。なんと。最北の地の王族が、これほど愉快な人種だったとはなあっ。冒険者時代でも、あの国に行っても、王族とまでは関わらんかったから知らなんだわ」

「あ、せやった。まだ自己紹介が終わっとらんかったなあ。こっちはこの隣のケフェラルの王や」


ようやくケフェラルの番だ。ニカっと笑ってケフェラルの王が名乗る。


「バーグナーだ。これは王太子のログナー。よろしく頼む」


こうして、和やかな雰囲気で会談前のお茶会が始まった。









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