第126話 性格出るんだな

残った五人の大人達は、今までが嘘だったかのように、素晴らしい動きを見せた。


『さすがは、夫婦や! 連携も悪ないっ。ええぞ!』

「夫人、カッコいいっ」

「あんな女性になりたいわっ」


夫人二人と令嬢一人。その動きは機敏で、しなやかだった。


「貴族の女なんて、ドレス着て笑ってるだけしか能がないとか言ってたの聞いたけどな」

「あれだろ。男の方が見栄張るのにそう言ってたんじゃね?」

「だなあ。男の方が情け無ねえし……」


退場になって、未だに息を乱している男たちを見て、多くの者が幻滅していた。逆に、女性達の株は上がったようだ。


「うちの領主なんて、奥様を盾にしてたし……」

「女を盾にするの多かったな……」

「こういうの、性格出るんだな」


そう。自分の妻を盾にしたり、無視して逃げ回っている男は多かったのだ。


『ここで、残っとる大人らを紹介しよか。この二人がウィザント男爵夫妻や』

「あ、やっぱり。隣りの男爵夫妻かっ」

「評判悪くねえもんなっ」


二人だけを映像に映して紹介すれば、うんうんと頷く人々。


『そんで、この二人がセントラ伯爵夫妻や!』

「奥様ぁ〜」

「旦那様ぁ〜、頑張ってくださぁいっ」

『おっ、家臣が元気やな! ええことや! 人柄が分かるってもんやでっ』

「だよなっ。伯爵頑張れー!」

「奥様! お気を付けて!」


セントラ伯爵夫妻は、領民達にも人気があるようだ。


『そして! 残るは勇敢なご令嬢や! ミリュート・ハルマン伯爵令嬢!』

「なんか、婚約者が浮気したとか聞いた」

「マジか! あんな強カワなお嬢さんと婚約しておいて浮気!? どこのどいつだ!」

「「「「「クルート侯爵家の三男」」」」」


それがリンディエールの耳にも入ると、すかさず隣に突然現れたグランギリアが、紙を差し出す。


『ん? なっ、なんとっ……ミリュート令嬢に朗報や! あんさんの婚約者、イグラ・クルートが浮気した証拠は上がったで! 思う存分、今日を楽しんでや! 後で舞台を用意したるさかい! ボッコボコにしてやりい! 望めば、婚約破棄も可能にしたるわ! みんな、令嬢の味方やで!』

「っ!!」


ミリュート令嬢は、涙目になって壁を背にリンディエールを見上げた。


そんな彼女に、リンディエールは親指を立てる。


『浮気男は逃さへん! 公開処刑してやりい! 張り切っていき!』

「っ、はい!!」


そして、ミリュート令嬢に火がついた。


素晴らしい動きで、一気に生徒達を五人、沈めたのだ。


『ええ勝負や! おっとっ、生徒達は不利と見て、作戦を変えるようや!』

「Bグループは守りに!」

「Aグループ! 集中砲火!」

「魔力切れに気を付けろ!」


そんな子ども達に対し、大人達は冷静だ。確実に各個撃破していく。


『これはっ、時間との戦いになってきた! 残り三十秒や!』


ミリュート令嬢の勢いは凄く、一気に生徒達の数が減っていく。それを援護する夫妻達の連携も良かった。


そして、終了の笛が鳴った。



ビビィィィ!!



『終〜了〜!! 結果は!』

『五対四! 大人の勝利!』

「「「「「おおっ!!」」」」」

「すげえっ、ミリュート様ぁ〜!」

「ミリュート令嬢っ」

「旦那様っ!!」

「奥様やりました!」

「領主様ぁぁぁっ」

「奥様ぁぁぁっ」


まさかの逆転に、会場中、国中が湧いたのだった。


因みにこの大会の後、国王も認めて婚約破棄をしたミリュート令嬢の下へ、貴族の令息だけでなく、実績のある冒険者なども含め、多くの求婚者が詰めかけるのだが、それを今、彼女は知る由もない。


もちろん、ボコボコにされることになる侯爵家の三男は、家族からだけでなく、領民や他の町の人々からも白い目で見られるようになり、長く苦しむことになる。


これ以降、お付き合いは誠実にというのが、国内外でしっかりと根付くことになり、色んな意味で勉強になる大会となるのだ。










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