呪いの剣 〜ギュスタヴ・サーガ〜
山野陽平
第1話 報告書
報告書
ナーランド公領主
エスティアン・ナーランド様
近衛兵長 ガジ・ステファン
ご機嫌麗しく存じ上げます。この度の報告書は複数の兵士、民衆に聞き取りを行い、先日の騒動、領主相談役呪術師マシモ様の心臓発作による死去についての事実確認を致して参る次第でございます。
時系列でご説明させていただきますと、まず早朝、公領内、恐らくは南西の谷間の方から何か爆発音が轟きました。これはかなり多くの民衆が聞いておりまして、我が城、市街でも皆の話題となっておりました。恐らくは発掘現場の火薬事故でもあったか、皆はそのように話していたということです。
その半日後、森で兎狩りをしていた夫婦、彼らには私が直接聞き取りを致しました、灌木の合間に何やら大きな棺桶の様な、立派な装飾が施された箱を見つけたというのです。色は紺色で、装飾というのが黄色の浮かして掘られた、何やら見ると不快になる見たこともない模様をしていたそうなのであります。夫婦は集落に帰り、住民たちと手分けして、これを市街に運ぶことにしたそうです。何故そうしたかと聞くと、何やら不気味で気になってそこに置いておけなかったとの事でした。その大きな棺桶に縄をつけ、農夫の男4人がかりで市街の近衛兵詰所まで運び、そこに居合わせた近衛兵たちにことの次第を説明したとの事です。
その日私は暇を頂いておりまして、近衛兵たちは城に案件を持ち帰り、話し合いをしておったそうです。そこに、相談役のマシモ様がおいでになり、近衛兵達はことの次第を説明しました。
その時です。おん年74のあの温和なマシモ様が目をまん丸に見開き、顔を雄鶏の鶏冠の様に紅色され、絞り出す様な、喉のどこから出ているかも分からない声で、案内するよう命じたとの事でした。詰所は正門の近くでしたので、城と距離がありました。馬車を走らせマシモ様をご案内し、棺桶を置いた場所へお連れすると、白目を剥いてその場に転倒されたそうです。急いで抱き起こすと、近衛兵の腕で
南西、行かずが岳、たもとの地中へ、洞穴の奥の聖域へ戻せ
そう呟かれたと思うと、舌を飲んで事切れていた、との事でした。私が事実確認を致した事柄は以上でございます。
行かずが岳と申せば魍魎の跋扈する地帯。市街からも20キロは離れております。私の案といたしましては特別チームを編成し、ことにあたる準備は直ちに行える次第です。
それに当たり、地下牢に幽閉している罪人を先頭に洞穴を探索させ、次第によっては背後の術兵が罪人を処分できる陣形で挑む特別作戦を考えております。よっては罪人の出獄許可を願い申し上げる次第であります。
ただ今この報告書をしたためている最中、兵士たちにその洞穴の有無確認をさせております。追ってご報告させていただきます。
了
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます