第2話 過疎
この村の村長をはじめ、村会議員や役場の職員たちが、地場産業と雇用の創出に
だがしかし、である。この村は山里と言っても全体が谷のような地形で、まともな平地はほとんどない。傾斜地ばかりで大きな建物を建てるのに適した場所は皆無と言ってもよい。そこで、村長の提案、と言うより“ツルの一声”と言った方が良いだろうが、「墓地」を移転させて、そこに施設を作ることにしたのである。
議会で決定し、ほどなくして移転先も決まり、寺の
この地方の方言で、ひねくれ者、強情な者を指して「因業(いんごう)なヤツだ‼」などと言うのだが、まさにこの家の
Iの家は、墓地の移転には素直に応じたが、Yさんの墓と骨の移転は嫌だと言って拒否したのだ。このため近隣住民からの熱心な説得を受け、最後はしぶしぶ墓と骨の移転には応じたものの、仏様の魂を移って頂く儀式や
「何で、あんなことしたんだか? Iさんちの主人は因業な人だったからね、Yちゃんは結局、墓は移してもらったけど、和尚さんに
墓の移転工事も無事に終わり、1年ほどたった春先の事だった。
Iの家の天井の
夕方、農協の金融担当のKがやってきてIの妻と話をしていた時に、ふと天井を見上げて見つけてしまったのだ。
「あの白いの何だろ、あそこの梁の所に一つ生えてる白いヤツ。花みてぇだなぁ~?」
「え~ッ、梁に白い花だって? Kさん変な事言わないでよ。まさか、優曇華じゃないだろうねぇ~‼ とうちゃんが帰ってきたら見てもらおう。」 Iの妻は驚きながらそう言った。
しばらくするとIの家の
「とうちゃん、あれ見とくれ。」 と梁を指さしながら言う。
「梁の所に白い花みたいなのが見えるだろ、さっき農協のKちゃんが来て見つけたんだよ。まさか、優曇華の花じゃないだろうね‼」
「優曇華だぁ~? 縁起でもねえこと言うんじゃねえよ。 見てみるから
「何だこりゃ? きのこみてぇだなぁ」
「優曇華かい?」そう尋ねる妻に、少し
「そんなの分んねえよ、優曇華なんて俺だって見たことはねぇんだ。だいたいそんな話は迷信だろ。縁起が悪いからこんなもの燃しちまえ‼」
そう言ってNは新聞紙にくるみ庭に出て燃してしまった。
そんなことがあってから一か月も経たないうちに、この家に少しずつ異変が起き始めたのだ。
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