第11話 サンクトペテルブルクの悲しみ

光春くんをロシアまで引き取りに行った。


大男にガッチリ体を掴まれた小男が姿を現した。


今回の拷問はさすがにきつかったらしい。


光春くんのシャツは、乳首だけが丸出しになっている。


ボロ雑巾のように投げ捨てられた光春くん。


ずっと、泣きながら叫んでいた。


「ありがとうございました!ありがとうございました!ありがとうございました!ありがとう……」


それをニヤニヤ笑いながら大男は、ペコリとお辞儀して、大きな声で笑いやがった。


僕はピストルでそいつらを撃ちぬいてから、光春くんを見た。光春くんは静かに口を開いた。


「ミ、ミスターローレンス……。俺、なんかあいつとかぶってない?ほら、亀有にいる警察官のあいつと」


僕はすかさず言った。


「亀有のあいつは笑えるけど、おめぇのは笑えねぇんだよ!」


光春くんは、声を震わせ言った。


「秋元先生にも、謝っといてな……」


……


いえねーよ。


もう、亀有の交番のあいつはいないなんて


いえねーよ。


「ありがとうございました!ありがとうございました!ありがとうございました!ありがとう……」


いつまでも、サンクトペテルブルクの空に響いていた




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