第10話 お姉ちゃんのアフターサービス

 いろいろあったけど無事に水着を買い終えた。

 琉未るみは試着室で俺に見せてくれたオレンジ色のビキニ。

 姉ちゃんはどんなのを買ったかかたくなに教えようとしなかった。


「それじゃあ琉未るみちゃん。今日は誘ってくれてありがとう」

「うん。またねきゅーねえ

「おい、俺は」


 俺のツッコミをスルーして琉未るみは玄関へと向かう。


琉未るみちゃん」


 姉ちゃんの声はちゃんと耳に届いたらしく、立ち止まってこちらを振り向いた。


「負けないからね」

「あたしだって」


 夕陽を背にした琉未るみと、夕陽に照らされる姉ちゃん。

 バチバチと電撃が流れているわけではないけど、二人の間には確かな闘志が燃え上がっていた。


「え? なんか勝負してるの?」

「うふふ。秘密」

「誰のせいでこんなことになってると思ってるんだか」

「俺のせいなの!?」


 ログボになったのは勝手に謎の会社に選ばれただけだし、姉ちゃんは俺を好きでも琉未るみは俺を恋愛対象として見てないっぽい。

 第一俺は弐田にったさんが好きなんだ。

 ラブコメみたいな俺にたくさんの好意が集まる相関図にはならないと思うんだけど。


「それで琉未るみちゃん、明日からは一緒に登校するの?」

「……遠慮しとく。ログボ目当てだと思われたくないし」

「じゃあ、私と一緒に学校行こうね」

「行かねーよ! 高校生なんだからそれぞれ勝手に行けばいいだろ」

「うんうん。お姉ちゃんが勝手に付いていくね」


 姉ちゃんの魔の手からは逃れられない。

 それをわかっていて抵抗してみたものの、あっさりと看破かんぱされてしまった。


「それじゃあまた明日」

「おう」

「バイバイ」


 ほんの数分話しているうちに日は落ちてみるみる暗くなった。

 琉未るみが家に入るのを見送って、俺達も家に入る。


「むふふ。琉未るみちゃんと進展はあったかしら?」


 姉ちゃんの言葉が俺の中にあるおっぱいの記憶を呼び起こした。


「顔が赤いってことは……」

「な、なにもねーよ!」


 今日の出来事は墓場まで持って行こう。そう決意している。

 例え姉ちゃんにどんな尋問を受けようとも口外するわけにはいかない。


「今日はパパとママはお出掛けだからお姉ちゃんが夕飯作るわ。先にお風呂入っちゃって」

「そうなんだ。知らなかった」


 昨日は参子まいこのお世話になってたし、今朝は支度してすぐに家を出たので両親の動向を全く把握していなかった。


「それじゃあお言葉に甘えて」


 嬉しいハプニングがあったとは言え、琉未るみの女心に振り回されて疲れてしまった。

 ゆっくりお風呂に入ってリフレッシュしたい。


「ふふふ。ごゆっくり」


 のに、姉ちゃんの笑顔が胡散臭うさんくさくて心がザワついた。

 

***


「ふぅ……」


 シャワーで体を洗い流すとつい息が漏れた。

 ログボになって新学期が始まってから一週間、いろいろあったけどこの土日の濃密さが群を抜いている。

 琉未るみとの関係が少し動き出したことと、おっぱいの感触。


「いかんいかん。忘れろ」


 このままだと幼馴染として見られなくなってしまうのが恐くて必死に忘れようとする。

 だけど、忘れようとすればするほど琉未るみの顔と一緒にフラッシュバックした。

 そんな悶々もんもんとした気持ちを抱えながら体を洗っていると、浴室のドアノブが回る音がした。


「サプラーイズ♪」


 振り返ると、姉ちゃんが嬉しそうに浴室に入って来た。

 胸元に結び目があるセクシーな黒ビキニに身を包んでいる。


「どうれんちゃん。ビックリした?」

「ビックリしたからもう出て行ってくれ!」

 

 姉ちゃんは水着なので一応のガードはできている。

 一方、一人で風呂に入っていたはずの俺は完全に無防備だ。

 大切な部分を隠すタオルなんてない。

 おまけに体は泡まみれで逃げ出そうにも逃げ出せない。


「昨日はお姉ちゃん寂しかったなー」

「仕方ないだろ。もうすぐでキスのログボだったんだから」

琉未るみちゃんはログボ目当てじゃないことを証明するためにデートしたんでしょ? それなら私は」


 姉ちゃんは俺の背後に周り、ボディソープをしゅこしゅこと押して手に取る。

 それを泡立て胸に塗りたくる。


「姉ちゃん、なにを」

「お姉ちゃんもログボ目当てじゃないから、課題にないことをしようかなって」

「しなくていいから! 姉ちゃんが俺を好きなのはわかってるから!」

「きゃっ! 照れちゃう」


 わざとらしくキャハっ☆ みたいな顔をする姉ちゃん。

 絶対に照れてないし、完全にペースに飲み込まれている。


「初めての水着選びで疲れたと思うからお姉ちゃんが洗ってあげる」

「ならなんで姉ちゃんの体が泡まみれになってんの!?」


 裸の自分。泡まみれの姉ちゃん。この状況からあるシチュエーションが脳内に思い浮かぶ。

 いや、さすがに姉ちゃんでもそんなことは……やりかねないな。


「姉ちゃん、気持ちだけで十分だから」

れんちゃんが十分でも、お姉ちゃんが満足してないもん」


 口では全力で断っているのに大事な部分はしっかりと元気になっている。

 これは男の反射だから仕方ないことだよな。うん。


「隅々まで綺麗にしてあげるからね」


 水着一枚分の布を隔てているとは言え、おっぱいの柔らかさが背中に伝わる。

 ちょっとヒヤッとしていて思わず身体がビクッとなった。


「どうれんちゃん。気持ち良い?」

「うん。気持ち良い。もう満足!」


 このままだと理性で自分を抑え付けるのが難しいかもしれない。

 とにかく大きな声を出してムクムクと沸き上がる感情を発散させた。


「ダーメ。まだ前をキレイにしてないでしょ?」


 マズいマズいマズい。

 このままじゃキスどころじゃない一線の超え方をしてしまう。

 何かこの状況を打破する術はないのか。


「姉ちゃん、本当にこれでいいのか?」

「んー?」


 背中におっぱいを当てた状態なので、姉ちゃんが声を発する度に耳に息が掛かる。

 それがまた精神衛生上よくない。


「俺が望まないまま体を洗って、それで姉ちゃんは満足なのか?」

「……」


 よし! ひとまず姉ちゃんの動きを止められた。


「姉ちゃんは毎日ログインできるだろ? まあ、俺は逃げるけど。でも、ちゃんと段階を踏んでいけば俺の気が変わるかもしれないって考えられないか?」

「えー? そんなこと言って、れんちゃんは琉未るみちゃんのところに行くんでしょ?」

「こんな風にぶっ飛んだことをするならな」

「じゃあ、ゆっくり仲良くなったられんちゃからキスしてくれるかもしれないってこと?」


 俺は肯定も否定もせず黙り込んだ。

 姉ちゃんに対して嘘は付きたくない。

 その場しのぎで肯定するのは簡単だけど姉ちゃんの想いを踏みにじる。

 倫理観てきには即否定なんだけど、それも姉ちゃんを傷付けることになる。


れんちゃんは正直だね。そこが好きなところなんだけど」


 スッと背中に乗っていた柔らかい感触がなくなる。


「ごめんね連ちゃん。お姉ちゃん、ちょっと反省」

「わかってくれてよかったよ」

「泡だけ流させてね」

「うん」


 姉ちゃんがシャワーヘッドに手を飛ばすと俺の大事な部分に視線を感じた。


れんちゃん、お姉ちゃんにも反応してくれたのね。嬉しい♪」

「早く出てってくれ!」


 琉未のおっぱいと姉ちゃんのおっぱい。

 結局、二人のおっぱいの感触を忘れることなんてできなかった。

 明日からどんな顔をすればいいんだ。

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