白いボール

勝利だギューちゃん

第1話

♪勝負は9回あるんだよ、先はまだ長い~

人生楽しく生きようよ、いつかホームラン~


昔の、プロ野球チームの歌。

たしか、プロの歌手ではなく、選手が唄っていたと聞いたが、当時がいかに、余裕があったかを感じさせる。


今の、どこだ?


人生が野球なら、今の俺は何回くらいだ?

少なくとも、コールド負けだけは、避けたいものだ。


俺も今年で、40を過ぎた。

子供の頃は、おっさんと思っていたが、自分がそうなると、対して変わらない。


そういうものかもしれない・・・


9回裏で、逆転サヨナラ満塁ホームランで優勝というのも、過去にはあった。

ひそかにそれを、もくろんでいる。


「ごめんね。君の人生はもう9回裏だよ」


誰だ?

どこにいる?


「ここだよ。ここ」


ベランダに女の子が経っていた。


「君は誰だ?」

「覚えてない?私の事?」

「ああ、全く・・・」

「つれないな・・・」


何かの詐欺か?


「まさか、天使とか死神とか言うんじゃないよな?」

「あんな下級なものと、一緒にしないで。私は、神様よ」


そうは見えん。


「君がこの世に生を受ける前に、私に言ったよね?」

「何て?」

「太く短く生きたいって」

「記憶にない」

「うん。消してるもん」


なら言うな。


「俺の人生、太くないぞ」

「そう?」

「ああ」

「私には、太く思うけど・・・」

「見てきたみたいだな」

「うん。神様だもん」


女の子は、ふんぞり返る。


「なあ」

「何?」

「本当に神様なら、俺がこんな口のききかたして、怒らないのか?」

「神様は、心が広いんだよ」

「神様は、何人いる?」

「生物の数だけ」


凄い。


「人間の芸能人にもマネージャーとか、作家にも担当っているでしょ?」

「ああ」

「そんな、感じだよ」


アバウトな・・・


「で、俺の人生が9回裏なら、今何アウトだ?

「ツーアウト。フルカウント。最後の一球だよ」

「俺は、どっちだ?」

「君の人生は君のホーム。だから、今が最後の打席」

「で、これを打てなかったらどうなる?」

「0-0で、延長戦」


延長戦?


「君はさっき太くないっていったけど・・・」

「ああ」

「君は、後世に残るものを残しているんだよ」

「それは何だ?俺には家族はいないぞ」

「ウソ」

「本当だ?」


女の子は、まじまじと見る。


「じゃあ、あの子たちは?」


女の子が指差す。

そこには、ぬいぐるみがあった。


「ああ。あれは俺が個人的に創ってもらったものだ」

「君のキャラでしょ?」

「ああ」

「君の死後、あの子たちは世間から、絶賛されるんだよ」

「ゴッホみたいだな」

「YES]


なんなんだ?


「で、試合時間はどのくらいだ?」

「野球だよ。9回までは時間制限はないよ」


女の子は、バットを差し出す。


「私が、投げるから、そのボールをどうするかは君次第」

「俺次第?」

「うって、サヨナラ勝ちをするか?延長戦に持ち込むか・・・」


バットを握る。


「どうする?決まった」

「ああ。決まった」


じゃあ、投げるね。


白球が止まって見えた・・・


俺はそれを・・・

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