第12話 止まったらボコボコにされるぅぁツ!! ひぃ、こんな日常かんべんしてくれよぉッ?!




チャイムが鳴り、先生が教室に入ってきた。こげ茶色でショートヘアの目が綺麗な先生だ。容姿は、スレンダーでスタイル抜群だ。



「さて、ホームルームを始めるぞ! 皆、もう知っているかもしれないが、今日は皆に紹介したい子がいるんだ!」



凛々(りり)しいハスキーな声で、先生は言う。ゆーまがジッと先生を見詰めていた。



「転校生だ! ユニくん、出てきてくれたまえ」



「(やっぱ、里菜先生、超綺麗だよな♡)」



先生が言うと同時に、桃色の髪をした超目立つ女の子が出てきた。



「すげぇ、超可愛い!」



クラスメイトがざわめく。男共から、歓声が上がる。確かに、メッチャかわいいが。



「(ユニのやつ、ほんとに、入学してきたのかよったく。しかも、オレのクラス……)」



ゆーまは、呆れ顔で見遣っていた。



ユニが、ジッと近くの席にいたゆーまを見ている。



「では、簡単な自己紹介、ユニ君、お願いする」



「は~い、ユニ・ローザアマラントです。魔法の国から来ましたぁッ! ちぇんじぃ」



ピカァ!



ユニが、明るい声で、皆に手を振りながらいうと、一瞬にして、魔法服がメイドの服装に変わっていた。



「むぎゅ!」



「こらぁ、ユニ、何、やってんだぁ!」



ゆーまが、席から立ち上がり、両手を握り、慌てて、赤面で大声を上げた。



「あらあら、ユニくん、そのメイド服みたいな格好は、どうしたのかな?」



「は~い、ゆーまが好きな服だよ!」



「何、いってんだぁ、ユニぃ!」



クラスメイトから笑いが起き、血が上り赤面で、ゆーまは大きな悲鳴を上げた。



「ユニくんは、魔法使いなのかな? ハハ、凄く、元気のイイ自己紹介だね。皆、拍手!」



里菜先生が、軽快に教壇で拍手を先にし、煽(あお)った。



クラスメイトからも、同時に拍手が起きた。



「因(ちな)みに、輝里利(きりり)君とは、友達なのかな?」



「は~い、許婚(いいなずけ)です。ゆーまの家で、一緒に住んでます」



軽快に手を挙げ、ユニが、明るい声で言った矢先だった。



「なにぃッ! た、頼む、ユニ、もう、何も言うな、ややこしくなるぅ」



「ははは、威勢のいいことだね。判らないが、ゆーま君は、メイドが好きなのかな? 皆、仲良くしてやってくれたまえ。席はそうだな……」



里菜先生が、腕組をした時、ユニが口を開いた。



「ゆーまの隣。水着っていう服も、ゆーま、好きだよね!」



「こらぁ、んなこというなぁ!」



ゆーまが今にも倒れそうなくらい、赤く恥ずかしそうな顔になり、怒る。



「こんなのね! チェンジ!」



ピカァ!



一瞬にして、ユニの服が、今度はメイド服から水着になった。



「あー、何、水着にまで、チェンジしてんだぁ。もう、制服に戻れ、ユニ。こっちの方が恥ずかしい! 


(これじゃ、俺が家でメイドと水着、楽しんでるみたいじゃネーかよ、ったく)」



ゆーまは、余りの恥ずかしさで、手で、顔を隠す。クラスメイトから笑いが生まれた。



男子生徒は、目がハートだ。ユニのナイスバディで、一瞬にしてイチコロにしてしまった。



「どう、ゆーま? 今度、水着、違うのにしたよ。かわいいでしょ?」



「もういいから、可愛いから、お願い戻って」



ユニの水着が、ゆーまの家で着たものとは替わっていた。ゆーまは、嘆息気味に渋々、言うが、ゆーま自身も、ユニの可愛い姿にノックアウトはされていた。





☆☆ ☆☆






朝の立ち上がりから、凄いホームルームが済んで、休憩時間になった。



ユニの噂(うわさ)は、一瞬にして、男子生徒に伝わっていた。スタイル抜群の超美少女が来たと。



「今日きた、転校生、超可愛いらしいぞ!」



「何でも、輝里利(きりり)と許婚(いいなずけ)らしいよ」



「あのやろぅ、許せネー」



集まってきた数十人の男子生徒が嫉妬(しっと)の念を抱き、拳(こぶし)を握る。この異変に気付き、ゆーまは、ユニと共に、教室を出ていた。



「輝里利、まてぇ! お前、あいちゃんという者がありながら、なんだァッ!」



「んぅ、待てるかぁぁッ(止まって捕まったら、ボコボコニされるぅ)」



追っかけてくる、大勢の男子生徒を一瞥(いちべつ)し、ゆーまは、ユニの手を引っ張って、必死に廊下を走る。



「ゆーま、どうしたの? あたしの手を引っ張って、逃げてばっかり」



「原因は、お前だぁっぁぁぁっぁぁぁ!」



「仕舞った、あっちからもきた。こっちだ、ユニ!」



前方から来た男子軍団を、どうにか躱(かわ)そうと、別のルートにユニの手を引っ張り、走りこんだ。ユニは、自分が原因っていうのが、手を引かれ廊下を走りながら、分かっていないのか、不思議そうな顔をしていた。



「行き止まりだ、マズった!」



「ユニ、どうにかして、魔法でここから瞬間移動してくれ。そうだ、さっき学校に来た時に使ったやつしてくれ!」



「うん、いいよ。『どこでも魔法陣』だね!」



「魔法のタクト、 展開!」



BABABABA!



「どこでも魔法陣! 描けたよ。中に入って、ゆーま!」



目にも止まらぬ速さで、取り出した魔法のタクトで、魔法陣を廊下に描いた。



「こらぁ、輝里利、ゆるさんぞぉ! ぶっ殺す!」



「や、ヤベェ、もう来た!」



ゆーまが、ゾッとして、凄い勢いで、走ってきている男子生徒を見遣る。ゆーまの顔が青褪(あおざ)めている。



「ねぇ、ゆーま。場所は?」



「時間がネー、どこでもいい。任せるぞな!」



ゆーまは、慌てて言う。



「じゃ、行くね。どこでも魔法陣、展開!」



どこでも魔法陣が一瞬で、光り輝いた。



ピカァ!



「あ、あれ、ついさっきまでいたのに消えた?」



男子生徒が猛進し、行き止まりまで来たときには、もう、ユニたちの姿は、見事に消えていた。一体、どこに行ったのだろうか?





☆☆  ☆☆

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