第10話 どら〇もん姫ッ?! まさか、起きたらキ〇現場なんて?! まじかよぉッ~!!



「えっ?」



ゆーまの家から、一瞬にして消えて、気がつくと、何と馬鹿デッカイ木の下にユニたち全員がいた。



木々の間から、差す光がとても眩しい。学生らしき若い男女の声も、どこからか響いてくる。しかし、あいちゃんは、気絶したままだった。



「え、ここは、どこだ? 学校? ん、木? このデカイ木って確か、学校の裏庭にある千年樹じゃぁッ?」



ゆーまが慌てて、辺りの変化に気付き、辺りを、キョロキョロと首を振り、見渡す。



ユニたちも、四方八方を可愛い笑顔で興味深そうに見ている。



「と、いうことは、学校だな、恐らく。あッ、そうだぁっ、あいちゃんッ、あいちゃん、大丈夫、起きてってば!」



ゆーまがそうだと思い出し、急いで下を瞻(み)、あいちゃんが、地面に横たわっているのにハッと気付いた。顔を近付け、抱き上げて、手を握って、あいちゃんの身体(からだ)を、必死に揺さぶった。



その時だった、変化が起きた。



「んぅ、せ、せんぱい?」



あいちゃんが、目をパチクリし、気絶していた状態から、何の不具合もなくやっと目覚めた!



「良かったぁ。大丈夫そうで」



嬉しくて、安堵(あんど)したのか、ゆーまは、顔をあいちゃんに近付けた。



「きゃ、せんぱい、顔近づけて、手、思いっきり握らないで下さいですぅ! 恥ずかしいですぅ」



「わぁっ!」



あいちゃんは照れて、ゆーまを後ろに突き飛ばした。ゆーまは反動で後ろめりに、尻餅をついた。



「うぅ、いてて、あ、その、あ、ゴメンゴメン。つい、安心しちゃってさ。あはは」



地面に尻餅をついた尻を、少し痛そうに手で押さえ、無意識に手を心配で握っていたのか、ゆーまは、ああそうだというような面持ちだ。ユニ達は周辺を歩いていた。デッカイ木を見上げて、眩しそうに目に射す光を、手で隠しながら、見遣っている。



「……べ、別にいいですけど。千年樹? 何で、先輩、学校なんですか? 確か、先輩の家にいたのに」



横たわっていた体勢から、あいちゃんは起き上がり、急遽(きゅうきょ)、疑問津々の顔でゆーまに言う。



「……あのさぁ、それはその、わかんないぞナ!」



訳わかんないと言った面持ちで、ゆーまは手でジェスチャーしいう。



「また、漫才してる時みたいに、誤魔化さないで下さい」



あいちゃんが少し、誤魔化す様子を見て、ムッとし、少し怒り気味でいう。



その時だった。その会話を聞いていたのか、ユニが、近付いてきて口を開いた。



「あいちゃん、それは、ユニの魔法だよ。この魔法のタクトで、どこでも魔法陣、描いて、瞬間移動したんだよ」



ユニが、左手の魔法のアクセサリーから、魔法のタクトを引っ張り出して、魔法のタクトを左指で指差し、淡々と明るい無邪気な声で説明していく。傍にラクリと、ピットもいた。皆これが当たり前なのか驚くような素振りは一つも見えない。



「へぇ~、ユニさん、そんなことも出来るんですね。まるで、漫画みたいですぅ」



一瞬、唖然となり、あいちゃんは、驚嘆するが、すぐに持ち前の明るさで物分りの良い表情に戻った。



「ふぅ……(って、大方、あることあること、具現化漫画だけどな)」



あいちゃんの後方にいたゆーまは、後ろから嘆息気味に、ジト目で見遣る。



「どこでも魔法陣は、その中に入っている者が、行きたい場所を知っていて、魔法のタクトを握り、念じないと、そこには行くことが出来ない魔法術なのじゃ! 我が魔法の国の魔法使いの間では、日常茶飯事じゃ!」



ラクリが啖呵(たんか)を切り、淡々とあいちゃんとゆーまに説明していく。



「へぇ、そうなのか」



ゆーまがいうと、二人とも納得したような面持ちを見せた。胸の前で、ゆーまは腕を組み、首を下げ、頷(うなず)く。そのとき、何を思い出したのか、急に顔色を変え、ゆーまは腕時計を引っ張り出して、見遣った。



「って、やべぇ、話ししてたら、後、五分でホームルームじゃネーかぁッ!」



頓狂(とんきょう)な顔をし、急いで走ろうとする。



「ラクリ、ピット、いくぞぉ!」



「ムコ殿、我輩達は、学校に入学してないダスよ」



「あっ、そうか、じゃ、あいちゃん、行こう! 行くとこないなら皆、一緒に来いよ」




駆け足の体勢から、ゆーまは後ろを振り返り、ギギギと、待ったの足踏みをして、一瞬、躊躇(ためら)う。



「うん、いいよ。ラクリ、ピット、一緒に行きましょ!」



ゆーまの問いに、素早く、にこやかな笑顔でユニは答えた。急いで、皆、一様に教室に走っていく。ラクリは妖精の羽をパタパタ羽ばたかせ、ピットは、魔法靴のコミカルな足音を立たせながら歩いて行く。

ユニは明るく、笑顔で一変した面持ちも見せなかった。



千年樹の木々の葉っぱから、差し込む明かりだけが、きらりと見守っていた。









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