第9話 どこでも〇〇なんてぇッ、ありえねーよぉッ~ゲームじゃん!!
「で、せんぱい、さっきから不思議に思っていたんですけど、その羽の生えたフィギュアみたいなのオモチャですか?」
あいちゃんが、不思議そうな顔で、ラクリを指差す。
「誰が、フィギュアじゃァッ! オモチャじゃあッ!」
ラクリが、あいちゃんの言動に、激怒した! 顔が、怒り顔になっている。
「まぁまぁ、ラクリ、落ち着いて!」
ユニが、割って入り、どうにか、ラクリの興奮を収め、仲介する。
「それと、そこの魔法使いみたいなカッコした子供も、何ですか?」
「えっとなぁ、その、判らないぞナ!」
あいちゃんの問いに、どうにかして、誤魔化そうと、おどけながら、ゆーまは答えを返すが、無理だった。もう、見てしまっていて、手遅れの状態だった。ユニがニコニコしている。
「せ・ん・ぱ・い、漫才やっている時みたいなこと言って、誤魔化さないで下さい」
「あい殿、こう見えても、わしは、れっきとした魔法の国の妖精じゃ。しかも、ユニ姫様の世話役であり、大臣じゃ!」
ラクリは、キッパリという。
「へぇ、そうなんですか」
感心したように、目をパチクリし、あいちゃんは、溜息を付くことなく、明るい声で笑う。
「あ、あいちゃん、驚かないの?」
「だって、ドラゴン桃まで出てきて、ユニさん見てるから、そうなんだろうなって、思うくらいで皆、良(い)い人だし」
ゆーまの問いにも、どうとしたことなく、あいちゃんは、答えた。平然を装っている。
「婿殿と違って、物分りの良い女性じゃ! 本物の妖精じゃ! 覚えておけ!」
納得したように、ラクリは、何故か、上から目線で言う。さすが、大臣クラスと言った所か。
「はーい」
その時だった、ピットが、割って入った。
「我輩が、ユニ様たち皆と食事をしている風景を、魔法画で描きとう御座いますダス! どうダスかな、ユニ姫様?」
「いいよ、描いて!」
明るく、可愛い笑顔でユニは答える。
「じゃ、また手、繋ごう、ゆーまぁっ!」
「えッ、あ、あのさぁ、手はなあ……恥ずかしいよぉッ」
ゆーまが、恥ずかしそうに、顔を赤め、握られていた手を、パッと引っ込め離す!
「……!」
あいちゃんの表情が、その瞬間、一変した。しばらく、沈黙が走った。重苦しい雰囲気だ。
「気にしなくていいですよ。あたしも、先輩とこっちの手で繋ぎますから!」
「お、おい、何でそうなるの?」
ゆーまの、反対側の手をあいちゃんが握った。その反対側は、既に、ギュゥ~と、
ユニに再び握られていた。
「きゃ、せんぱいと手を繋いでしまいました。きゃぁッ!」
あいちゃんが、きゃぁ、きゃぁ、と乙女声を出し、嬉しそうな顔で顔を少し赤らめる。
「……!」
困惑した面持ちで二人に両側で手を繋がれ、ゆーまは無言で嘆息めく。
「ムコ殿、ユニ様とあい殿に繋がれて、両手にはなダスな! では、魔界を創造するダス!」
割って入ったピットが三人に釘を指す。次の瞬間、ピットの目が光った。
「はぁつッ、キターッ! パニクルゥ~」
目が光り、ピットは奇声を上げる。その光景にあいちゃんは驚く。一同も息を呑んだ。
「魔法ペン、魔法タブレット展開ッ!」
魔法ペンと魔法タブレットが展開し、大きくなり光り輝く。ピットの目が、赤く光る。次の瞬間、ピットは動いた!
ZUBABABABABABA!
「ふぅ、描けましたダス!」
一瞬にして、その場の光景を魔法ペンで描いてしまった。物凄い速さの手捌(てさば)きだ。周りは息を呑み、見守った。描き終わると、ピットの目が、元の藍色に戻った。魔力を要する時だけ、赤く光るのだろう。
魔法ペンで、描いた絵が光り輝く! どんどん具現化していく!
「うそ、す、凄い、絵が、あ、あたしが、別人が動いてる?」
DOSUN!
「あちゃぁ~、流石のあいちゃんでも、魔法画は効いたか!」
あいちゃんは、まともにその奇抜で、現実に具現化した魔法画をみて、その場で意識を失い倒れ伏した。ゆーまが慌てて、倒れたあいちゃんをどうにかしようと駆け寄る。ユニたちもこれには驚いた。自分たちの国ではこれが当たり前だったからだ。口に指を咥(くわ)え、首を傾けた!
「ん、やべぇ! 時間がネー。学校に遅れる!」
唐突にゆーまは、壁にかけられていた時計を瞻(み)、顔色を変える。また、ジタバタと手足を動かし、慌てふためく。心配そうにあいちゃんを、見遣る。
「あ、ど、あ、ど、どうしよう、やべぇこんな短時間じゃ、学校まで駆け込むのは無理だぁあぁあぁぁッ~」
手足をバタつかせ、その場を慌てて右往左往、駆け巡る!
「ゆーま、どうしたの?」
ユニが、不思議そうな顔で問う。ラクリも黙って、その様子を見ていた。
「あぁ~学校に遅れるんだ! でも、あいちゃんほっとけない!」
大声を張り上げ、舞台声でゆーまは、必死に方法を探し、あいちゃんの前で止まり、
手をかくかく動かし、てんぱっていた。
「学校? 学校って、何?」
ユニが、不思議そうな顔で訊(き)き返す。何か、秘策があるかのような面持ちで。
「皆が勉強する所だぁあァッ! あいちゃん、あいちゃん起きて、起きてってば!」
急いで、あいちゃんに駆け寄り、ゆーまは、あいちゃんの身体を揺さぶる。
「あぁ、あたしの国の魔法アカデミーみたいな所ね。学校はここから遠いの?」
「遠いよ。何か、方法があるのか? まさか、何とかクエストみたいに魔法でびゅーっとか?」
「ううん、よく似てるけど、あたしの、魔法のタクトで、魔方陣を描けば、どんなとこでも簡単にいけるよ」
ユニは、可愛い声で、左手首の魔法の球のようなものが付いている、アクセサリーの光球に手を突っ込み、魔法のタクトを光球の中から既に、引っ張り出そうとしていた。
「(球ん中に手を突っ込んだ? もう、何でもありだな)そうなのかッ、じゃ、頼む、ユニ、それやってくれ!」
ゆーまが、必死の思いで頼み込んだ。
「いいよ、描いてあげる! えっと、どこかな? あったわ。出でよ、魔法のタクト」
PON!
ユニの左手のアクセサリーから、瞬時に魔法のタクトが、ユニ自身の右手に握られ出てきた。
「そおれぇ、魔法タクト、展開!」
ユニが言った瞬間、魔法のタクトが光り輝き、ユニは魔法のタクトで、何やら複雑な魔法陣のようなものを描き出した。
「そぉれ、そぉれぇッ!」
どんどん、台所のフロアの床に、光の線が描かれ、展開していく。
「出来たよ『どこでも魔方陣!』」
えっへんと、胸を張り、可愛い声でユニは言う。
「どこでも魔方陣? 何それ、ユニ?」
はぁあ? とマジかと言った面持ちでゆーまは訊き返す。これが当たり前なのか、他の面々は驚いたような顔色を一つもしない。
「姫様の魔法アイテムによる、魔法術じゃ!」
ラクリが簡潔に言った。
「魔法術? 要するに魔法ってわけね」
そうかと、納得したような顔を、ゆーまは見せ、半分、呆れた顔で、魔法陣を見遣った。
「あたし、学校の場所、知らないから、どこでも魔方陣の中であたしの魔法のタクト握って、ゆーま、学校の場所、念じてよ。そしたら、あたしが、魔法をかけるよ」
「うん、判った。そうすりゃ、学校に行けるんだな!」
ゆーまが、そう答えた矢先だった。ユニが口を開いた。
「皆、どこでも魔法陣の中に入って!」
「ラジャーダス!」
ピットとラクリが、ユニたちがいる『どこでも魔法陣』が布石された中に入っていく。
「ようしぃ! 学校、学校とぞな!」
ユニが、右手に持っている魔法のタクトを握り、ゆーまは、軽く目を閉じて、学校のイメージを頭の中で考える。
すると、どこでも魔法陣が急に光り出した。
「ひ、光ったァッ!」
ゆーまは、頓狂(とんきょう)な声を上げ、生唾(なまつば)を飲む。
「じゃぁッ、いくよ、どこでも魔法陣、展開!」
ピカァ!
ユニがそういうと、どこでも魔法陣が強烈な光を出し、その魔法陣の中に入っていた全ての人たちが一瞬にして、消えた。一体、どこに行ったのだろう。
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