第2話

二人はさぞ当然かのようにギルドの一角に現れ、驚く周囲には目もくれずカウンターに戦利品を提出する。

「はい、鬼牙犬討伐依頼、達成です。お疲れ様でした。こちらが報酬の500Gとなります。」

慣れた手つきで受けた依頼内容の確認、報酬の用意、受け渡し等を済ませ一分もかからずに報酬の受け取りが完了した。

「さ、次はどうする?」

「んー......」

掲示板の前に二人で立ち、高ランク向けの依頼を眺めていたその時だった。

「あのー」

後ろから声をかけられる。少し小柄な華奢な男だ。冒険者には見えない。とにかく何かあったのかと思い、どうしました、と返答する。

「ちょっと、死んでください。」

それを聞き、背中にある剣にディアが手をかける前に男はディアの心臓の位置にナイフを突き刺した。

「......」

二人とも無言になる。そう、刺されたディアも。呻き声をあげる訳でもなく、苦しむわけでもなく、ただ黙った。そして笑いだした。それをみて男は動揺しだす。

「な、なんで死なない...?!まず、どうして血が......確かに心臓に刺したはず......」

「確かに心臓には刺さっとるなぁ。でもよく考えてもみぃ?俺はこのギルドで近接戦1位を誇る人間や。こんなんで死ぬタマじゃないわ。」

「突然の奇襲はよくありますからね。ほら、これでも私は魔法での戦闘、治癒等に関して右に出るものはいませんから。常に不可視防壁インビジブルシールドくらいははってますよ。」

「てか、アンタどっから来たんや?こんなことも知らんなんて遠くから来たヤツか最近冒険者になったヤツだけやろ。」

「私達のことを知らない人は久しぶりに見ましたね。」

「......嘘、だろ......そんな事、アイツらからは一言も......」

「「アイツら?」」

二人の質問に答えることなくブツブツと呟きながらその場で崩れ落ちる男。その内容に疑問に思った二人が聞いた瞬間に男は消え去った。そこでアルスだけが気づいた。これは上位の空間転移魔法、監視転移ビジョンテレポートだ。その名の通り遠くから対象を監視し、好きなタイミングで好きなところに転移(転送)できる。それを使用している間は常に魔力が減っていくのに加え防御がガラ空きなので中々使うものはいなかった。勿論アルスも習得はしているものの使ってはいない。

あの男は何者かに唆されたのだろうか。

二人はよくわからないまま次の依頼を選んでおき、今日は休むことにした。

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