-第一章二十節 妖精の話と依頼条件と妖精からの依頼-



「え~っと……女王様?…」



「…妖精達の女王様と言う事でしょうか?……


だとすると…ティターニア?…」



マサツグの目の前にいる妖精から突然の「女王死んじゃう宣言」にマサツグが


固まっていると、スケッチを終えた様子で話しに参加して来ては妖精達の女王…


ティターニアについてかとその妖精に尋ねるよう質問をし始める。その質問に


妖精は黙って頷くと拳をギュッと握っては辛そうな表情をして見せ、マサツグ達に


詳しい説明をする様に自分が何処から来たのかを話し始める。



「ここから二日位離れた場所の森には私の住んでいる妖精の国があって…


そこには妖精の女王「ティターニア」様がいるのね。


妖精の国はティターニア様のお陰で平和に過ごして来たのだけど…


ここ最近、森の中に瘴気が漂い始めたのね!!」



「ッ!…瘴気!?…そんな!!…


どの森に行った冒険者からはそのような報告は!?…」



「…冒険者は私達の国に来た事なんか一度も無いのね…」



「ッ!…冒険者が一度も来た事無い?…ッ!…」



妖精が自分が何処から来たのかを話し始めると自分たちの住んでいる森(妖精の国)で


異変が起きた事を話し始め、その話に瘴気の名前が出て来ると先輩に受付嬢…


そして他の冒険者達が戸惑った様な反応を見せては妖精の話に衝撃を受ける。


先輩がその話が若干信じられない様子で他の冒険者からの情報を口にするのだが、


妖精曰く一度も冒険者を見た事が無いと話し、それを聞いて先輩がハッ!とした


反応を見せてはカウンターの奥へと移動し始める。しかし妖精はそんな先輩の事など


気にしない様子で説明を続ける。



「……その瘴気も最初は森の入り口だけで実害が無かったのね…


皆も最初はその内消えるってあんまり心配していなかったんだけど…


その瘴気は徐々に森に広がり始めて私達の国にまで迫った来たのね!!…


事態を重く見たティターニア様が妖精の国に結界を張ったのだけど…


その瘴気は薄れるどころか更に濃さを増して!…その瘴気から皆を


守る為にティターニア様が頑張って居るけど…時間の問題なのね!!…


ティターニア様の魔力は凄い!!…凄いけど無尽蔵では無いのね!!…

 

魔力が切れれば恐らく!…


ティターニア様は自らの命を使って結界を維持しようとするのね!…


そうなればティターニア様は死んじゃうし!…


結界も破れて皆も死んじゃう!!…


だから、魔法の花の蜜を集めてティターニア様に飲んで頂けたら…!!!」



「魔力が回復して結界が持つと?…つまりは少しでも延命処置?…」



「……今はそれしか無いのね…」



最初の瘴気の様子から徐々に森に溢れ始める瘴気の様子…その説明をすると同時に


ティターニアが取った行動・何故命が危ないのかの理由をマサツグや他の冒険者達に


話し始め、その時間と対処方法が限られて居る事を更に説明する。それを聞いて


マサツグが悩んだ様子で今回の騒動になった依頼書の内容について簡単にまとめ、


妖精に合っているかどうか尋ねるよう質問をすると、妖精は俯きマサツグの


問い掛けに答える。その話を聞いて周りの冒険者達も何処の森だ?と言った様子で


ざわめき始めるのだが、ここで受付嬢が疑問を感じたのか妖精に質問をし始める。



「……あれ?…それじゃあ何で…


何で瘴気を如何にかしてくれって依頼書に書かなかったのですか?…


その方が女王様の苦労も取れて更に平和になって万々歳なのに?…」



__ッ!!…ウンウン!…



受付嬢は不思議そうな表情を浮かべては妖精の依頼書について、何故大元の解決策を


書かなかったのかと妖精に尋ねると、周りの冒険者達も気が付いた様子で頷いては


受付嬢の質問に賛同する。そしてその答えを求めるよう妖精の方に視線を移して


話しを聞こうと見詰めていると、妖精は受付嬢の質問に対して悲しい表情を浮かべて


俯き、その質問に悲しい答えを口にし始める。



「それは…出来ないのね…」



「え?…」



「まずその大元を叩くにも元凶が何処に居るのか分かっていないと駄目なのね?…


闇雲に瘴気の中を歩けば忽ち私達でも人間さん達でもバタンキューしちゃう…


それだけ今のあの森は恐ろしい事になっているのね…」



妖精が出来ないと悔しそうな表情を浮かべて受付嬢の質問に答えると、その質問に


受付嬢が戸惑って見せては妖精が瘴気の発生源が分からないと困惑した様子で答え、


更に濃度が凄まじいのか誰が行っても倒れてしまうと受付嬢の質問に答える。


瘴気の発生源が分からない限り、瘴気に体を蝕まれてはそのままゲームオーバー


なんて事にもなると森に対して土地勘が無ければ駄目だと妖精は語り、それを聞いて


マサツグを含む冒険者一同が腕を組み悩んだ様子で唸っては何か解決策はないかと


悩み始める。



__うぅ~ん…



「……それに森は人間達を拒む様に魔法で仕掛けをしてあるのね…」



「え?…如何して?…」



「私達が人間さん達どう思われているかと言うのが問題なのね…


そしてそれを説明するには私達妖精が何故普通の人には見えなくしたのかを


説明しないといけないのね…」



「え?…見えなく…した?…」



マサツグ達が腕を組み悩んで居ると、更に条件が悪いとばかりに妖精は自分達が


住んでいる森には人間除けの仕掛けが有ると説明し、その説明を聞いた受付嬢が


軽く疑問を持った様子で説明を求める。すると妖精は更に暗い表情をして見せると、


その説明にはまず特定の人間にしか見えなくしたと言う妖精達の特性について説明を


すると言い、その「見えなくした」と言うまるで自分達がやった様に聞こえた言葉に


受付嬢やその他の冒険者多数が引っ掛かりを覚えると疑問の表情を見せる。そんな


様子に妖精も軽く頷いては如何言う事かを説明し始める。



「…簡単に言うとこの魔法は私達を守る為のものなのね?…


かつて妖精達は人間達と一緒に生活をしていた事が有ったのね!…


そして互いに協力し合い生きて来たって教えて貰ってた…でも…


全員が全員善人と言う訳では無いのね?…」



「ッ!?…」



「妖精族はこの大陸にしかいない希少な種族…


それを利用して私達を誘拐すると何処かへ連れて行くなんて事が


多々起きたらしいのね…仲間が一人…また一人と消えて行く事に悲しんだご先祖の


ティターニア様は人間達と決別…今の森に移り住んでは静かに暮らして来たのね…


でもやっぱり少なからず噂で私達の存在を聞きつけては同じ事をしようとする


人間さんが出て来る…だから森に迷いの魔法を掛けて!…


生まれて来る妖精達に不可視の魔法を掛けて今まで生きて来たのね…」



「そんな!?…」



妖精が語り始めたのは悲しい妖精達の歴史で、最初は人間達と共存の話から始まる


のだが、直ぐに妖精達を誘拐しては外の大陸に売り飛ばしていったと言う良く有る


金儲けの為の下種な話に変わる。その話の中で森に人間除けの魔法が掛けられている


理由…妖精達が普通の者達には見えない様になっている理由が話されると、その話を


聞いて受付嬢がショックを受けて居ると同じ様に妖精の話を聞いた冒険者達が一斉に


憤慨し始める!



「ッ!!!…あああぁぁぁ!!!…何処のどいつだ!!


こんな可愛い妖精を捕まえて売り捌くド畜生は!!??」



「許せん…!!!」



「血祭りに挙げてやる…!!!」



その妖精の話を聞いて誘拐をして行った人間達に対して冒険者達は怒りを覚え、


我慢の限界と言った様子で一気に憤慨すると、行き場のない怒りにギルド内が


物騒な雰囲気になり始める。ある者は剣を抜いては辺りを見渡しまるでキラー


マシーンの様に索敵し始めたり、またある冒険者は見た目はゴスロリの幼女冒険者


なのに何処からその声が出て居ると言った様子で野太い男の声が聞えたりと、


現場はカオス度を更に高めて行った。そんな殺伐としたギルド内であったのだが


先輩が奥から普通より大きめの巻物を片手に姿を現しては妖精の話を聞いて


居たのか、やっぱり…と言った様子で話に参加し始める。



「…さっきの話を聞いて確証が持てました!……なるほどね!…


でも一応の為に場所を教えて貰っていいでしょうか!?…」



__パラッ…



先輩が奥から持って来た巻物を受付カウンターの上に広げると、そこには地図の様に


地形が描かれた図面が出て来ると同時にその図面の中では色々な物が小さく動いては


その動く物に対して名前が表示されていた。さすがに人一人づつとは行かない様だが


まるでリアルタイムで事象を確認する為の地図の様に見え、マサツグがこの地図


みたいな巻物について先輩に質問をする。



「ッ!…これは?…」



「この大陸の全体地図です!…この地図に大陸の事に関して何かが有れば自動で


更新される魔法の地図でして…主に大規模作戦時等に活用される代物です!…


…勿論普通にこう言った場面でも使いますが…」



「それよりも今は瘴気が充満している森の場所を先に把握しましょう!!


こうしている間にも生態系に問題が出て来るかもしれません!!


妖精さん!!…場所は!?…」



「えぇ~っと…今が多分ここに居るからぁ………ここなのね!!」



マサツグの質問に対して先輩は冷静な態度で質問に答え始めるのだが、今は


その説明をしている場合ではないと言った様子で受付嬢が若干慌てては妖精に


その森の場所を尋ね始める。その際ギルドの職員らしく生態系等を気にした様子で


先輩を注意し、その注意を受けた先輩が受付嬢の注意に驚いた反応を見せて居ると


妖精がその地図の上に立っては歩き出し始める。今居るクランベルズから真っ直ぐ


自分達の住む森の方に向かって…自身の記憶を辿る様に歩いて行き、とある森の


前でピタッと止まってここだと妖精が受付嬢に答えると、その森の名前を見て


先輩が完全に納得すると同時に具合が悪いと言った表情を見せていた。



「…やっぱり……」



「…先輩ここって!…」



「え?…何!?…如何かしたの!?…そんなに場所が悪いんですか?」



妖精がとある森を指差したまま立ち尽くし、先輩は如何したものかと言った様子で


ジッとマップを見詰めては悩んだ表情を見せ始め、受付嬢はあちゃ~…とあからさま


に具合が悪い表情をして見せては顔に手を当て天井を見上げる。マサツグもそれに


気が付いてその妖精の示した場所(森)について先輩や受付嬢の表情を交互に見ては


如何言った場所なのかと質問をすると、先輩はマサツグに悩んだ表情を見せたまま


何故その表情を見せるのかを話し始める。



「えぇ…かなり厄介です…大体は把握していましたが…


こうもビタっと位置を特定して具合が悪いと感じたのは久しぶりですね…」



「え?…」



「マサツグさん…ここは…「迷いの森」です!…」



「ッ!!…」



先輩がハッキリと面倒と言った言葉にマサツグが戸惑って居ると、受付嬢も


厄介と言った表情をして見せてその妖精達が住処としている森の名前を


マサツグに教える。その名前はTVゲームをやった事のある者なら一度位は


聞いた事の有る名前でかなり面倒臭い…当然その名前に聞き覚えの有る


マサツグがえ!?…戸惑った表情を見せて受付嬢の方に振り返るとその場所が


如何言った場所なのか…如何厄介なのかを先輩が話し始める。



「迷いの森…その名前の由来は言わなくても分かる通り…


誰がどの様にその森に足を踏み入れても踏破する事は叶わず…


一度森の中に入ればいつの間にか森の外に出されると言う魔法の森…


無理やり入った者の情報だとまるで侵入を拒む様にして霧が突如立ち込め…


周りが見えなくなったと思えば外に…以後何度繰り返しても同じ結果だったとか…」



「あぁ~っと……じゃあ俺じゃあ無理だな!


方向音痴だし!…それじゃあな!…」



先輩がマサツグに分かるよう詳しくこのゲームでの迷いの森の仕様を説明し、


それを聞いた冒険者達の中に経験が有る者が居るのか、何人かが腕を組んでは


不思議な出来事だったと頷き始める。ただでさえ自分が方向音痴で有ると言う事を


理解しているマサツグにとっては到底クリア出来る内容では無い為、自分では


無理と言ってその場を後にしようとするのだが、妖精が逃げようとするマサツグの


服の袖にしがみ付いては引き留めようと躍起になる。



「ま!!…待つのね!!!」



__ガッシ!!…



「ッ!!…は~な~し~て~く~れ~!!


俺は方向音痴なんだ~!!!


道を覚えるのが一番苦手なんだ~!!!」



「だ~め~な~の~ね~!!


道は私が案内するのね!!


だから安心なのね!!!」



妖精に捕まったマサツグが構わず違う依頼を受けようとクエストボードの方へ


移動しようとするのだが、妖精はそんなマサツグの服の袖を全力で引っ張っては


引き留め、道案内を買って出る。それもそうだ…誰が森に入っても道に迷うの


だから絶対にその森に対して土地勘がある者に案内をして貰わないと進めない


のだが、マサツグはそれでも迷う自信が有ると言った様子で妖精の方に振り返っては


文句を言い始める!



「信用出来るか!!!…


それはお前だけが対象外なだけで俺は適応されるやも知れないし!!…


何より中途半端で案内されて逸れたら如何するつもりだ!!!…


自慢じゃないが俺はそのままリビングデッドになる自信が有るぞ!?…


…それに俺よりもっと腕の良い冒険者が居るだろうが!…


ほら、そこの厳つい戦士のオッサンとか!…


もしくはそこの魔法使いのお姉さんとか!!」



__…チラッ……ッ…ッ!…



マサツグが妖精に対して文句を言う際、自分が考えた言い訳…もとい最悪の


パターンを口にしては何とか断ろうとし、更にその場に居た冒険者を


指差してはその冒険者達の方が適任と言い始める。そのマサツグに指名された


冒険者も乗り気なのか、指名された厳つい戦士は妖精に対してマッスルポーズを


取ってアピールをし、更に指名された魔法使いのお姉さんは妖精に対して投げ


キッスをする。しかし妖精はチラッとだけその指名した戦士と魔法使いを見ては


直ぐにマサツグの方に振り向き、何が何でもと言った様子で必死に服の袖を


引っ張る。



__グイィ~~~!!!…



「あの人間さん達じゃダメなのね!?」



__ガァ~~~ン!!!…バタッ!……グッ!…



「ッ!?…何でなんだよ!?…」



妖精がマサツグの服の袖を引っ張って指名した者達では駄目だとマサツグに


文句を言い、その文句に戦士と魔法使いがショックを受けた様子でその場で


項垂れ四つん這いになると、周りの冒険者達がドンマイ!…と言った様子で


優しい笑みを浮かべてはサムズアップを送る。そして妖精の文句に対して


マサツグが拒絶しながらもその理由について尋ねると、妖精はその森を


攻略する為の大前提を話し始める。



「さっき言ったけどあの森自体にティターニア様の魔法が掛かっているのね!…


その魔法は人間さん達を森の中に入らせない為の魔法なのだけど!!…


一つ欠点が有るのね!…」



「ッ!?…欠点?…」



「なのね!!…その欠点て言うのが…その人物が方向音痴である事なのね!!!」



__ピシャアアアァァァァァン!!!…



妖精がマサツグの服の袖を引っ張りながらティターニアの魔法には欠点が有ると


説明し始めると、その欠点にマサツグを含む全冒険者が耳を澄ませる!恐らくは


その条件さえ満たせば迷いの森を突破出来ると考えたのであろうが、その欠点と


言うのがまさかの方向音痴である事で、それを妖精に面と向かって言われた事に


マサツグが雷を撃たれた様な衝撃を覚えて一人ショックを受けていると、


マサツグだけでは無い様子で他の冒険者の数十名がショックを受けた様子で


項垂れる。しかし妖精は更に条件が有ると言った様子でマサツグに話を続ける!



「そして!!…私が魔法を解かなくても姿を見る事が出来たって事は!!…


マサツグは近年稀に見る私達(妖精)に対して妖畜無害の人間さん!!!…


…不可視の魔法にも欠点があるのね!…聞いた事は無いのね?…


子供の時は見る事が出来たけど…大人になったら見えなくなった!!…


それはティターニア様が本当は人間さんの友人を作りたいって言う


お願いから出来た欠点でも有るのね!!…」



「…あれ?…それってつまり…」



「つまり!…この魔法は本当は!!…


不可視にするんじゃなくて信頼出来る人間さんを探す!!…


私達に対して余計な欲を持っている人達には見えない様にする為の魔法!!!


…って事なのね!!!…」



妖精が次に話し始めたのは不可視の魔法について、この魔法にも欠点が有ると言って


話し始めたのがまずマサツグが何故妖精を見る事が出来たのかと言う理由で、


その話に妖精はマサツグは妖畜無害と聞いた事の無い言葉を使っては信頼出来る


人間と話し、不可視の魔法の欠点の説明をする。そしてその説明を聞いて各々が


何となく理解出来た所で受付嬢が改めて妖精にその欠点を簡単に説明して貰うと、


妖精に対して邪な感情…その他欲望の感情が無いかどうかと言う…


それを試す為の魔法にもなっていると妖精が語ると、マサツグ以外の冒険者全員が


一気に崩れ落ちる!



__ピシャアアアァァァァァン!!!…ズザアァァ!!!…



「クソおぉぉ!!!…何で俺は方向音痴じゃないんだ!!!…」



「妖精に会えると思っていたのに!!!…


妖精さん達とキャッキャウフフ♪…が出来ると思ったのに!!!…


チクショォォォ!!!…オオオオオォォォォ!!…」



「その二つを打破したマサツグこそ!!…


この依頼を受けて貰うべき人間さんなのね!!!」



妖精の条件に付いて来れる者はマサツグだけの様で、その他の冒険者はその場に


項垂れ、ショックを受けてはイベントに参加出来ない事に嘆き悲しみ始める。


ある者は自分が方向音痴で無い事を本気で嘆き、またある者は中身は大の大人で


あろう冒険者が本気(ガチ)の号泣をしては欲望を垂れ流す。怒ったり泣いたりと


ギルド内がずっとカオス状態のまま話が進んで行く中、妖精はマサツグに依頼を


受けて欲しいと状況を放置して話を進めていると、先輩がこのカオスな状態に


呆れた様子で話を切り出す。



「……だとしたらほぼほぼ決定ですね?…」



「……え?」



「この状況下で妖精の依頼を受けれるのは…マサツグさんだけですよ?…


他の皆さんは完全に参加出来ない事に落ち込んでリビングデッドに


なりそうな勢いですし…あははは…」



「え?…えぇ!?…」



先輩の一言にマサツグが戸惑った様子で反応し、受付嬢は周りの様子を見て


マサツグしか参加出来ないと死屍累々の冒険者達を目にしては苦笑いをする。


そんな二人の言葉にマサツグが戸惑い本当に自分が行くのかとたじろぎ驚いて


居ると、妖精がマサツグの腕にしがみ付いては今にも泣き出しそうな表情を


しつつ、上目遣いでマサツグに依頼を受けるようお願いをする。



「お願いなの!!…マサツグ!!…


貴方だけが頼りなの!!」



「うぐっ!…」



「うぅ~!……」



__如何する?…マサツグ~?…



妖精が目をウルウルとさせ人情に訴え掛けるようお願いをすると、マサツグも徐々に


断るに断れない様子で飲まれ始め、もはや妖精のお願いする表情が一時期テレビで


流れていた金融会社のCM…某有名な子犬の様に見え始める。その表情にマサツグの


頭の中では誰が歌っているの本家とは違う替え歌が流れ始め、その表情をジッと


見ているとマサツグが折れた様子で大きく溜息を吐いては妖精に名前を尋ね始める。



「…はあぁ~……ったく!…


…お前、名前は?」



「へ?…」



「名前だよ…


依頼主の名前…一緒に行動する奴の名前が分からないと…


何か有った時直ぐに呼べないと色々不便だろ?…」



__……パアァァァァ!…グシグシグシッ!…



マサツグが諦めた様子で自身の頭を掻き毟って妖精に名前を尋ね始め、その質問に


妖精が困惑した表情でマサツグを見詰め尋ね返すと、マサツグは再度妖精に名前を


訪ねては遠回しに依頼を受けると口にする。そのマサツグの言葉を聞いてか妖精は


数秒のタイムラグを置いた後、パァッ!と徐々に明るい表情を見せては涙を拭い、


落ち着いた所でマサツグに笑顔を見せては自分の名前をマサツグに教え始める。



「…えへ…えへへ♪…[カチュア]!!…


[カチュア・ピリア]なの!!」



「カチュア…カチュアな。


改めてマサツグだよろしくな!」



「……ッ!…


よろしくなの!!」



笑顔でマサツグの腕にしがみ付いたまま自己紹介をし始め、マサツグがカチュアの


名前を復唱して確認をするとカチュアは頷き返事をする。そしてマサツグが左手の


人差し指をカチュアに対して突き出しよろしくと声を掛けると、カチュアが戸惑い


ながらも差し出されたマサツグの人差し指へ手を伸ばして掴み、マサツグが


その掴まれた指を縦に振って見せるとカチュアは理解したのかよろしくと返事を


して握手をする。人間と妖精の体格差ならではの握手を腕にしがみ付かれたまま


行い、その様子を微笑ましく笑みを浮かべて先輩と受付嬢が見詰めているのだが、


周りは一緒に着いていけない冒険者達の嘆きの声で溢れ返っていた。それも


本気(ガチ)も本気(ガチ)…大本気(ガチ)で……



__ウオオオオォォォォン!!…オンオンオン!!!…



「…この人達何処まで本気なんだろうか?……」



「リン!…」



__クンクン!…



「……?…あっ!…了解です!…」



嘆き悲しむ冒険者に囲まれながらの契約成立…マサツグがその様子に戸惑いを


隠せない様子で一言呟いては戸惑って居ると、カチュアとの依頼契約及び挨拶が


終わった所で先輩が肘で受付嬢を突っつくと、受付嬢はその先輩の行動の意図を


読んだのか仕事を始める。受付嬢は映写機から妖精の依頼書を取るとカウンターの


上に戻し、マサツグに話し掛ける。



「…マサツグさん!依頼の手続きはこちらでやっておきますのでそのまま依頼に


あった森まで向かって下さい!…確かあの森の近くに一応馬車を走らせる事が


出来ますので…二日どころかその日に辿り着く事が出来ますが…如何します?…」



「ッ!…じゃあ、お願いします!…


話しを聞いている限り時間は無さそうだし…


悠長に歩いている暇は無いだろうから…」



「了解しました!……


では手配して置きますので町の玄関口に!…あっ!…


お土産期待してます!!」



「ッ!!…良いのが有ったらね?…」



受付嬢が妖精からの依頼書を正規の依頼書として受注する様に手続きをし始め、


マサツグにそのままクエストに向かうよう笑顔で声を掛けると、馬車が必要か


どうかの質問を尋ねる。若干うろ覚えの様子で迷いの森までは馬車が通って居た筈と


マサツグに伝え、その言葉にマサツグが是非と言った様子でお願いをすると、


受付嬢はその場に居た先輩に身振りでお願いをし、先輩が頷き馬車の手配も


済ませると思い出した様にマサツグへ迷いの森でのお土産を期待する。その言葉に


マサツグは苦笑いをしながら答えるとギルドの外へと妖精カチュアを連れて歩き出し


始めようとするのだが、マサツグも思い出した様子で足を止めては、


受付カウンターの方に振り返る。



「あっ!…そうだ…」



__クルッ!…



「そういや、二人の名前は?」



「へ?…」



マサツグが振り向き様に受付嬢と先輩の名前を尋ねると突然の質問に受付嬢は


戸惑い…先輩は不思議な表情を浮かべてマサツグを見詰める。何で急に?…と


言った様子で二人が固まりその場が微妙な空気になり始め、カチュアも


急に如何した?…と戸惑った表情を見せてはマサツグを見詰めると、その様子に


マサツグがハッ!とした様子で慌てて違うと答え始める。



「…あぁ!!…ナンパ的な意味ではなく!!…


長い付き合いになりそう…じゃなくて!!…


えぇ~っと……ビジネスパートナーとして!


そう!…ビジネスパートナーとしてだから!!!…」



「…それだと余計にナンパしようと頑張っている様に聞こえるのね?…」



「ッ!?…」



マサツグが必死に誤解を生まないよう言い訳をしようとするのだが焦っているせいか


思う様に言葉がしどろもどろで出て来ず、その様子を見て受付嬢と先輩が静かに


クスクスと笑い始めると、漸く納得行く言葉が出て来たのかそれを強調して


マサツグは違うと否定する。そしてその名前を聞かれた二人もマサツグが


言いたい事を理解しているのか先ほどのマサツグの慌て様を見てはただ笑い、


マサツグの言葉が逆に誘っている様にしか聞こえないとカチュアが呆れてマサツグに


ツッコミを入れると、マサツグは石化しショックを受ける。そんな二人の様子に


受付嬢と先輩は笑い続けるのだが、マサツグの質問に答えるよう自己紹介を始める。



「ふふふふ♪…あっ!…すいません!…


では私から…私は[クラリス]…[クラリス・クラネル]です。


一応職業は、ギルドマスターの秘書をしていて…


後はギルドの依頼の管理・教育・備品の整理をしています。


で、こっちが…」



「はい![リン・ヒリュース]です!!


職業はギルドの受付嬢をやってます!


ちなみに彼氏はいません!!」



「ッ!…コラ!リン!…」



「えへへ♪…すみません!」



先輩が先に自分の名前とギルドで何をしているかをマサツグへ自己紹介し、


バトンタッチするよう受付嬢に話を渡すと受付嬢が自己紹介をする。ギルドで


受付嬢をしている他に彼氏は居ないとマサツグの先程の言葉を弄るよう


自己紹介をすると、マサツグがグッ!…とばつの悪い表情をしてはその様子に


クラリスがリンを怒った様子でツッコミを入れ、リンが意地悪そうにマサツグに


謝って見せるとクラリスは呆れる。そうして二人の名前を改めて聞いた所で


マサツグが溜息を吐いてフフっと笑うと再度ギルドの玄関に向かい歩き出しては


一言呟く。



「…はぁ~…ったく!…とにかくまぁ…行きますか!」



「オォ~~!!…なのね!!」



__コッ…コッ…コッ…コッ…ギイイィィィィ!…



「いってらっしゃ~~い!!!」



マサツグの一言にカチュアが反応して元気よく掛け声を上げるとマサツグの腕から


離れて飛び始め、並走する様にマサツグに付いて行くと二人はギルドの扉を開けて


外へと出て行き、その際二人の後ろではリンとクラリスが手を振り見送っており、


二人はマサツグ達の依頼の成功を祈るよういってらっしゃいと声を掛ける。


そうして二人が外に出ると最初受付嬢が言っていた通り、マサツグ達は


クランベルズの広場に出て来るとカチュアが張り切った様子で声を挙げる。



「さぁ!…迷いの森に!!…」



「その前に道具屋に行くぞ?…」



「あぐッ!…えぇ~!!出鼻を挫かれたなのね~!!」



勢い良く進み出そうとカチュアが張り切るのだがマサツグはまずアイテムの補充と


この町の周辺を確かめたいと考えたのか、簡単に道具屋へ行くとカチュアに言うと


カチュアはガクッと頭と肩を落とし、子供の様に膨れてはマサツグに文句を


言い始める。その様子にマサツグは笑いながら宥めるようカチュアに話し掛け、


まず…地図が欲しいと改めて道具屋に向かい歩き出す。



「そう言うなって…何かお菓子を買ってやるから!…」



「ッ!?…お菓子!?…やったのね!!」



「……まるで子供だな?…」



「……?…何か言ったのね?…」



マサツグはカチュアを完全に子供扱いし始め、お菓子で釣ろうとカチュアにその話を


持ち掛けると何の警戒も無く簡単に釣れてしまう。喜んだ様子でマサツグの周りを


飛び回り、それを見てマサツグが完全に子供だと思わずボソッと独り言を言っては


一人理解を深めていると、カチュアはマサツグの言葉をちゃんとは聞いていない


ものの何か言ったか?と不思議そうな表情で尋ね、その質問にマサツグは無言で首を


横に振ると道具屋に向かうのであった。


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