第23話
輝く午後の日光が、メトロポリティ―ヌ王国にある宮殿を照らしていた。
その
大きいな旗は風になびいてその雄大さを伝え、扉や窓はキラキラと輝き、広い庭には花で彩られた庭園と数々の彫像がある。
しかし、その豪華さもさることながら、この宮殿は今でも強固な城塞であることは変わってはいなかった。
それは今は亡きルイの父親――先代の王が優雅さだけではなく、しっかりと国を守るれるようにと指示し、建物を補修した職人たちに頼んでいたからだった。
まるで楽園のような宮殿でいながら難攻不落の城塞でもある。
王に召し出された者であれば、それは誰もが知っていることだった。
その入り口では、ルイ女王に呼び出されたオリヴィア、イザベラ、ルネ三銃士とシャルルが、宮殿に上がるために馬を繋いでいた。
「うわぁ―すごい大きいなぁ。ねえロシナンテ」
シャルルは愛馬ロシナンテの手綱を結びながら、両目を大きくしてそう言った。
無理もない。
彼女が生まれた村に、ここまでの大きさと広さを持った建物など、本の中でさえなかったのだ。
それからシャルルは、ここでしばらく待っているようにとロシナンテへ言うと、正面の門の前で立ち尽くしていた。
やはり衝撃を受けているのだろう、その様子は彼女が田舎者であることを意味していた。
門の前に立っている衛兵が、そんなシャルルを見て静かに笑っている。
「こんなところでぼうっとするな」
そんなシャルルの腕をオリヴィアが乱暴に引いた。
だが、腕を引かれながらもシャルルは、まだ宮殿に目を奪われていた。
「いい加減にしろ。これから女王と会うんだぞ」
「でも、宮殿だよっ! おっきいんだよっ! ひっろいんだよっ!」
オリヴィアは、声を弾ませてはしゃぐシャルルに「わかった、わかった」と、諦めて宮殿へと進んでいった。
そんな二人の後ろに、イザベラとルネが笑いながらついて来ていた。
「まるで子どもだなぁ」
「ええ、でもかわいい」
そして、二人は笑顔でそう言い合った。
それから宮殿内へと足を踏み入れると、一階から玉座の間へと続く階段の側で数十人の兵士たちが立っており、シャルルたちのことを迎えた。
その腰には剣、さらに肩にはマスケット銃を担いでいる。
「あの人たちは銃士隊じゃないの?」
「ちがう、あれはアタシたちのパクリだ」
シャルルが三銃士に訊ねると、イザベラが不機嫌そうに返事をした。
だが、シャルルは初めて見たマスケット銃に目を奪われていて、そのことに気が回っていなかった。
「初めて見たな。マスケット銃を見て喜ぶ奴……」
「普通この宮殿に入ったら、天井や壁に掛けられている肖像画や絵画に目を奪われるものなんですけどねぇ……でも、そんなシャルルもかわいい!」
「ルネ……私は今お前にも呆れているよ……」
そんなシャルルを見て興奮しているルネに、オリヴィアは大きくため息をつくのだった。
それからシャルルたちは階段を上がって、ルイ女王がいる玉座へ行くようにと兵士に言われた。
シャルルたちは長い階段を進んでいると、上からある人物が降りてきた。
リシュリュー
リシュリューは、近衛騎士団と従者や側近を従え、シャルルたちの前でその足を止めた。
「お前たち、リシュリュー枢機卿の前だ。
そして、その傍にいた近衛騎士団の団長である顔に傷のある女性――ロシュフォールが静かにそう言った。
シャルルはそんな彼女を睨みつけたが、すぐにその頭をオリヴィアによって下げさせられた。
三銃士とシャルルは階段でひざまづき、リシュリューに拝謁する。
「これは失礼した、リシュリュー枢機卿。実は宮殿は久しぶりで目が参ってしまっていたのです。何せ我々元銃士隊はどこぞの誰かの提案で解散させられてしまいましたからな」
オリヴィアが皮肉っぽく言うと、イザベラとルネは下げた顔の下で笑う。
シャルルは頭を押さえつけられながらも、この目の前にいる老人が銃士隊を解散させたリシュリューかと思っていた。
そんなオリヴィアの態度に、フンッと鼻を鳴らしたリシュリューはすぐに階段を上がり始めた。
「お前たちにはルイ女王からしかるべき対応があるだろう。今から楽しみにしておけ」
そしてリシュリューは、背を向けたままシャルルと三銃士へそう冷たく言い放った。
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