第2話 魔王様の冒険者登録

アンリ共和国 サンディ市


ここは多くのものが飛び交う、陸路の要衝として発展した町だ。

人口は100万人をかぞえ、共和国の内陸都市では最大の町である。

此処の最大の特徴はさまざまの種族が住んでいるということ。

人間や獣人はもちろんエルフましてや魔族もいる。

ここの町でなら魔族も目立たないだろう。


そんな中、我々は冒険者になるべく冒険者ギルドを訪れていた。

ここの冒険者ギルドは世界有数の規模を誇るらしい。

それだけに建物は立派だった。


白塗りの城のような見た目の建物に加えて、

その建物は城塞のごとく高い塀で囲まれさらには、見張り台のようなものがいくつも散見された。


もはや城みたいではなく城である。

実際問題、戦時にはここは城の役目を担うらしいし。


「すごい~天井が高いですね~」


アリシエルはギルドに入ると開口一番にそう言った。


確かに高かった。我の冒険者ギルドのイメージとは全く違かった。

冒険者ギルドと言えば酒場あって、酔っぱらった冒険者が騒いでいて、

少し薄汚れていて、というイメージだったがここは違うな。

大理石の床で掃除はかなり引き届いているし、冒険者が騒いでいる様子もない。


しばらく中に進むと受付が見えた。

受付も受付ごとで役割分担されているようで、「依頼受注」「依頼発注」「冒険者登録」

「その他」と大きく四つに分かれていた。


もちろん我々は冒険者登録の受付へと向かった。


「うむでは早速冒険者になるとするか」


「あ!待ってください魔......ご主人様!」


アルシエルは受付に直行する我の袖をつかんで止めた。

それに危うく魔王と言いかけたたみたいだが、アルシエルは咄嗟に言い換えた。流石である。

後で互いの呼び名を考えておかなくてはな。


「なんだ」


「まず番号札を取ってからです」


「番号札か......」


我はそう言われてたので、受付横の番号札を取って、長椅子に座って順番を待つことにした。

しかし魔王の我が、番号札を握って順番待ちしているとはなかなかシュールではないか?


「番号札16番方窓口までお越しください!」


受付嬢が窓口から声を張って呼んでいる。ちなみに我々は番号札は23番だ。

しばらく待ちそうなので互いの呼び名を考えることにした。


「アリシエルよ、やはり互いの呼び名を考えなくてはな。貴様の呼び名は何がいい」


「アリシエルでいいですよ、私はご主人様と違って知られてませんから」


「うむ、でも万が一ということもある.......簡略化して『シエル』でどうだろうか」


うむ、呼んでみるとアルシエルより呼びやすいな、人目がない時もシエル呼びにするか


「まあ、悪くはありませんねでは、わたくしは昔みたいに『お兄様』と呼びますね」


「やめろ恥ずかしい!!」


確かに幼いころそう呼ばれていたが、兄弟でもなんでもない

人にそう呼ばれると何かのプレイみたいで恥ずかしい。


「では、あ・な・たはいかがですか?」


シエルは顔を赤らめながらそう言った。我も赤くなりそうだ。


「もっと恥ずかしいわ!!違うそうじゃない!!あれだ、名前を考えないと!」


「じゃあ『レクトル』でいいですねお兄様?ちなみに意味は読み手という意味があります」


「ほう、なるほど!・・・・・・・だからお兄様はやめろ!」


「分かりましたア・ナ・タ」


「わかった、お兄様でいい、勝手にしろ」






そうこうしているうちに「番号札23番の方窓口までお越しくださいニャ!」

と呼ばれたので俺たちは受付へと向かった。


「冒険者登録をしたいんだが」


「わかりました少々お待ちください.......にゃ」


受付の人が俺達を見た瞬間、顔をそむけた。


そういえばこの女を見ていると誰かを思い出す。


黒髪の長髪に獣人族特有の顔の横についた獣耳。

宝石みたいな紫色の瞳。そして語尾に『にゃ』


我の部下にいたような気がする。


「『あのお兄様この方行方不明の四天王アイム様では』」


シエルが我にそう耳打ちする。


そう四天王アイムだ。四天王ナンバー2の実力を持つ大剣使い

大剣を自在に操り一撃で敵を葬る姿から『歩く断頭台』とも呼ばれていた。


いや確かに声も見た目も雰囲気も全部アイムなんだが

いやいや、まさかそんなはずあるわけがない。だが一応



「貴様、俺達を知らないか?」


「し、知らないにゃ~魔王様たちのことなんかまったく知らないにゃ~」


相変わらず顔を俯けながら答えるが、知らないと言っているしそうなんだろう。


「シエルよ違うようだ」


「え、でも今、魔王って」


「違うのだ」


「そ、そうですね」


そう受付にいるわけがなかろう。そういない、いない、いないのだ。


「では、冒険者登録をさせてもらう」


「ワ、ワカッタニャー」


そう言うと書類二枚と謎の水晶球を受付に置いた。


「うむこれは」


「え~まずここに登録名と年齢を書いていただくにゃ~」


「うむ、了解した」


指示の通り『卍悪魔神卍』登録名の欄に記入してと


「お兄様?」


卍を書いたところでシエルに腕をつかまれた。


「これでは書けないではないか」


「名前はレクトルですよね」


「いや、しかしだな卍悪魔神卍の方が」


その瞬間、我の腕が一気に締め上げられる。


「いたたたたた!!??」


「『レクトル』ですよね?」


「はいレクトルでございます」


我は渋々登録名をレクトルにした。あとは年齢か

年齢も適当に29歳にしとくか。


「終わりました」


シエルも書き終わったようだ。


「では次にこの水晶玉に手をかざしてくださいにゃ。これでレベルがわかりますニャ」


最強にして帝王の我の実力がわかる時が来た。


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