4-2
「さあ、乗って」
ミイナが後ろの席を勧めてくる。当然といえば当然であるが今日の運転もミイナが担当であった。
ヘルメットをかぶり颯はミイナの後ろに座った。その時、突然寒けが襲ってきた。また朝ということもあって冷気が服の隙間から少し入ってきたのだろう。今までは感じたことがなかったが、それだけ今日の寒さが強いということだろう。それにこの程度の寒さには時期に慣れてくる。いや、そうでないといけない。これから二人が目指す場所はここよりもはるかに寒い世界なのだから。
いつものようにミイナの肩に手をかける。ミイナがバイクのキーを回す。静かにエンジンが入り、バイクが振動を始める。
「行くよ」
ミイナのその言葉とともにバイクは走り始める。
しばらく走った後、信号で止まった時にふと横を見ると、太陽が出始めているのが分かった、空の端がほのかに明るい。おかげでルイミの前にある山の姿もかすかにその輪郭が見えるようになってきた。当然その奥にあるルイミの白い壁も見える。まだまだ、遠い存在で実感はわかないが。
さらに一時間ほど走ると、太陽は完全に出ており、ルイミの白い壁もさっきよりはっきりと見える。
颯がルイミの方を見ているとバイクは速度を落として、ガソリンスタンドに入っていく。
ガソリンを満タンまで入れ終えると、
「どう、いよいよルイミよ」
ミイナがいつも通りの笑顔で話しかけてくる。
「そうですね」
と相変わらずこういうときどう返していいのかが分からない颯だったが、それでもルイミに近づいてきているということにワクワクしてきていた。と、同時に緊張もしてきていた。
バイクは再び走り始めた。
少し走ると手前の小さな山に差し掛かった。いつも颯たちが公園や学校から見ている山である。ここはトンネルが通っているので一気に抜けることができる。
遠くから見ると山のすぐ後ろにルイミがあるように見えるが、実際に前の山を越えるとまだまだルイミは遠いということが分かる、だが確実にその白い壁は大きくなってきている。
本当にいよいよルイミに行くのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます