2-8
ミイナの時も緊張したがこの先輩の時も颯は緊張して、
「よろしくお願いします」
と、しか言えなかった。
その様子を黙ってみていたミイナはなぜか少し不満げな表情を浮かべていた。
「で、ミイナは新入生をだまして連れてきてどうするつもりなんだ?」
少し呆れた口調でサンがミイナに言う。
「だましてなんかないわ、彼もルイミに行きたいのよ。ねえ?」
颯は突然振られて短い返事しかできない。
「ええ、はい」
実はまだあまり実感がわいてはいないのがここは話を合わせておくのが適切だろう。
「俺が言っているのはそこではない、何故ここが考古研だと嘘を言っているのかということだ」
サンは厳しい表情をしながらミイナを見つめている。その死戦にひるむことなく、ミイナも同じような視線をサンに向けている。
「嘘じゃないし、ここはルイミに行くための考古研よ、第一、扉の前に(仮)って勝手につけないでよ」
どうやらあの(仮)は自分から書いたものではないらしい。まあ当然といえば当然であるが。
「(仮)にしてやっているだけでもありがたいと思え、本来ならこの場所もないんだぞ」
「いいじゃない、誰も使ってなかったんだから」
ミイナとサンの口論はこのまま止めないといつまでも続きそうなので颯は口をはさむことにした。
「あの、ここってどういう部活なんですか?」
「ここはルイミに行く部活よ」
ミイナがすぐに返す
「だからそんなものは趣味で行けばいいだろう、人を巻き込むな」
「一つのことに一生懸命になるのも部活の醍醐味じゃない」
その屁理屈とも思える言葉にサンは取り合わず、颯の方に話題をふる。
「颯君といったね、考古学に興味があるのかい」
「ルイミに興味があるのよね?」
同時に2人から話しかけられる。2人の美形から顔をのぞき込まれるようにして見られ、颯はまた恥ずかしくなった。
「一応ルイミにです」
というよりミイナに興味があるという不純な動機ではあるが。
ミイナが嬉しそうに言う。
「ほらね」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます