2-6
「ねえ、颯君、うちに来ない?」
何気ない口調で突然ミイナは言う。
それってどいう意味ですか、紹介的なあれですかと、彼氏でもないのにくだらないことが一瞬で颯の頭の中を駆け巡る。
だが、ミイナがそのような意味で言ったのではないということがその次の言葉で分かった。
「土曜でも大学は昼前までにいけば空いてるからさ、一回部室を見せたいんだけど、今日は厳しそう?」
そっちかと、颯は思った。紛らわしい言い方で勘違いをしてしまった。
颯は少し落胆したが、大学自体は興味がある。颯自身も四月からは通う大学なので、見学しておいて損はないだろう。
また、颯はミイナが部活に入っていることも知らなかった。一体何部であろうか。
今までの様子から陸上か、登山部あたりのような気がすると颯は思った。何よりミイナのバイクの後ろにまた乗れるということが嬉しかった。そう思うのは、もちろんミイナに対する興味もあるが、それ以上に自分でバイクを運転せずに後ろからゆっくりと過ぎ去っていく時間を眺めていくというあの感覚が颯にとっては忘れられないものになったからであった。
そしてミイナのバイクの後ろに再び乗り、リミストシア北大(通称北大)を目指す。
北の方を目指して10分ほど走ったところで目的地についた。バイクを駐輪場に止める。駐輪場にはたくさんの自転車や原付、バイク等が止められていたが、大学の敷地内は人もまばらであまり人が歩いている姿などは見かけなかった。今はテスト期間中ということなので学生たちはテストの準備等で校舎内にいるのだろう。
颯はミイナについていき、何館かあるうちの建物の1つに入った。
ミイナは、建物の地下一階に行き、コートのポケットから鍵を取り出すと考古研(仮)とA4のコピー用紙にマジックで書かれた扉を開けると中に入っていった。颯もそれに続き中に入る。
そして颯が部屋の扉を閉めると、ミイナはくるっと颯の方を振り向き
「ようこそ、考古研へ、歓迎するわ」
いつものように微笑みをたたえながら言った。
「あ、ありがとうございます」
と颯は返しながら、部屋の中を見渡す。部室の中は狭い空間であったが物はあまりないように思えた。
だが、積まれている書籍は目に入る限りではルイミ山に関するものがほとんどであるように思えた。また壁にかかっているホワイトボードをみると地図が貼っておりルイミに行くルートであろう線が何本もマジックで引かれている。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます